web特集|月刊TRANSIT「スウェーデンが描く北欧型社会」

web特集|月刊TRANSIT「スウェーデンが描く北欧型社会」

2026.02.08

20 min read

毎月一つの主題で旅をする、webの特集『月刊TRANSIT』。
今月のテーマは、「スウェーデンが描く北欧型社会」。


「北欧型社会」と聞いて、私たちは何を思い浮かべるだろう。
高福祉、ジェンダーの平等、手厚い教育制度、次世代を見越したサステナビリティ、日常生活に溶け込んだデザイン——。
その理想像を、「暮らし」から描き出しているようにみえるスウェーデン。
彼の国の、ライフスタイルや制度に光をあてて、理想の社会の在り方を探る。

What's スウェーデン人? 
国民性、社会制度、ワークライフバランス…
気になるスウェーデン人のことを大解剖!

web特集|月刊TRANSIT「スウェーデンが描く北欧型社会」

What's スウェーデン人?
国民性、社会制度、ワークライフバランス…
気になるスウェーデン人のことを大解剖!

LEARN&LIVE

2026.02.08

5 min read

シャイ? 家庭第一? 日本人っぽい? 国民性、仕事のスタイル、対人関係、社会制度まで...... シーン別にスウェーデン人の国民性を大解剖してみた!

Illlustration:Yurikov Kawahiro Text:Takumi Okazaki

スウェーデン人ってどんな人?

何事もちょうどよく、 “ラーゴム” なスウェーデン人。

スウェーデン人の国民性を語るとき、欠かせない言葉が「ラーゴム」だ。直訳すれば「ほどほどに」だが、その本質はもっと深い。彼らの先祖であるバイキング時代の“laget om”(仲間と分け合う) が語源とされるように、「個人の利益」よりも「共同体の調和」を重んじる考え方なのだ。
 
寒冷で資源の乏しいスウェーデンでは、生き延びるために富や食料を分け合うしかなかった。そうして「過剰を慎み、他者を思いやる」ことを美徳とする意識が根づいたという。たとえば仕事では過剰な残業を避け、「フィーカ」と呼ばれるコーヒーブレイクを大切にする。高級車を買えば「見せびらかしている」と思われ、安すぎる服を着れば「ケチ」と見られる。ちょうどいいーーーその絶妙なラインを見極めるのがスウェーデン流だ。
 
しかし、このラーゴムな精神は現代社会では逆にプレッシャーになることもある。みんなが「ほどほど」に生きようとするなかで、目立つことや失敗を恐れ、息苦しさを感じる若者もいる。また近年はグローバル資本主義の波が押し寄せ、「ほどほどじゃ物足りない」という欲望が生まれつつある。
 
それでも、世界トップクラスの幸福度を支えているのは、この精神に通じているようにもみえる。富の再分配、ワークライフバランス、環境に配慮した政策などすべてが「過ぎたるは及ばざるがごとし」で貫かれている。効率と成長を追う現代社会に、「ラーゴム」は一つの解を示しているかもしれない。

基本DATA

言語

スウェーデン語が公用語。英語力も高く、字幕なしでNetflixを観る人が大半。

宗教

キリスト教が多数だが、教会に通うのはクリスマスくらい。世界有数の世俗化社会だ。

平均寿命

83.3歳と、世界14位の長寿国。手厚い福祉と、働きすぎない文化が秘訣か。

民族構成

スウェーデン系が約8割を占め、2010年代以降は主に中東の移民が急増した。

主食

ジャガイモ、ライ麦パンが食卓の定番。ニシンやサーモンを使った魚介料理も。

平均身長

男性約180cm、女性約167cmと世界的にみても高身長。モデルを多数輩出。

ワークライフバランス編

残業よりも暮らしファースト

残業していれば「どうした? 何か大変なことが起きてる?」と本気で心配される。残業が必要なほど仕事を振る上司が悪いーーーそれがスウェーデンの常識だ。短時間で成果を出す意識が真の生産性を育み、IKEAやSpotifyなどの世界的企業を生んできた。

仕事の活力はフィーカ!

会社には必ずコーヒーメーカーが置かれていて、午前と午後に一度ずつ、マイカップを持って“フィーカルーム”へ。異なる部署の人が集まってゆるく情報交換する、いわば“タバコ部屋”のような場所。単なる休憩ではなく、「人間らしく立ち止まる」文化的習慣なのだ。

育児は男女平等に

男性の育休取得率は9割を超え、平日にベビーカーを押すパパの姿は珍しくない。育児休業は480日を両親で分け合い、そのうち90日は父親専用。育休手当は給料の8割だが、多くの企業が残り2割も負担する。復帰後も、子どものお迎えで早退するのは当然の権利。

公共・社会編

政治も生活の一部

投票率は常に80%を超え、カフェで友人と「今度の環境政策どう思う?」なんて語るのは日常茶飯事。小学校の教科書には「ルールが間違っていれば主張するのが国民の責任」と書いてある。国民による監視の目も厳しく、経費でチョコを購入した副首相がクビになった事例も。

高い税金にも不満ナシ

費税は25%、所得税も高い。しかし日本に比べて不満の声は少ない。なぜなら、税金の使い道が透明で、確実に自分たちに還ってくる実感があるからだ。大学は無料、医療費もほぼ無料、育児支援も手厚く、高齢者施設も充実。人生のあらゆる場面で税金の恩恵を実感できるのだ。

日々エコマインド

家庭ゴミのリサイクル率は驚異の99%。飲み終えたペットボトルをスーパーに返せば容器代が返金される。ゴミを燃やして発電する「ゴミ発電」が普及しすぎて、他国のゴミまで輸入しているほどだ。国土の7割が森林であるスウェーデンにおいて、エコは当たり前の「生き方」なのだ。

人間関係編

ほどよく自立した夫婦関係

スウェーデンは離婚率が極めて高いが、別に問題視されていない。共働きが当たり前で、家事も育児も完全に折半。経済的に自立しているからこそ、「合わなくなったら別れればいい」という考え方なのだ。離婚は決して「失敗」ではなく、別れた夫婦がパーティに同席するのも普通のこと。

「お試し婚」で出生率アップ

結婚せずに同居するカップルを「サムボ( sambo )」という。1987年成立の「サムボ法」によって法律婚と同等の保護が与えられ、出生率が上がった一因とみられる。ただし、互いの遺産相続権は認められない。離別の際は、同居中に購入した住居などの共有財産は公平に分けられ、子どもがいる場合は別居親に養育費の支払い義務が生じる。

子どもをもつことも可能

1995年から同性カップル向けのパートナーシップ登録制度はあったが、2009年には性別に関係なく結婚できる法律が施行され、すべての成人が平等に婚姻の権利を分けるものとされた。これにより同性カップルでも養子縁組や代理出産、養育権(親権)の取得など、婚姻に関するすべての権利・義務が従来の異性カップルと同等に保障されている。

個を尊重する教育

授業ではディスカッションやグループワークが中心。先生が一方的に教えるのではなく、「君はどう思う?」と問いかける。家で子どもが悪いことをしても、頭ごなしに叱らない。「なんでそうしたの?」と聞き、「なぜダメなのか」を説明する。子どもを子どもとして扱わないのだ。

Sweden

雑誌|永久保存版

Magazine|TRANSIT70号
光の国、スウェーデンへ

2025

WINTER

スウェーデンの充実の
社会保障を可能にする鍵は
納税意識、自立心、透明性にあり?

web特集|月刊TRANSIT「スウェーデンが描く北欧型社会」

スウェーデンの充実の
社会保障を可能にする鍵は
納税意識、自立心、透明性にあり?

LEARN&LIVE

2026.02.08

5 min read

理想の社会制度として光があてられることの多い、高負担・高サービスなスウェーデンの社会保障。具体的にどのような制度が整っているのか。そしてその充実した保障を支える仕組みとは何だろうか。

Text:TRANSIT Illustration:Miki Kitamura Supervision:Yoshihiro Sato

高福祉の土台にある高い納税意識

ライフステージごとの社会保障支援が税金によって手厚く賄われているスウェーデン。大学や大学院までの教育費は基本的に無償で、医療費の自己負担は総額の約13%にとどまる。さらに育児では両親で合わせて480日間の有償休業が取得できるなど、支援が充実している。
 
高福祉が実現しているその背景には、国民一人ひとりの高い納税意識と強い自立心がある。2023年の15~64歳の就業率は77.4%と、EU平均を大きく上回っている。障害者や介護の支援でも自立を前提とした制度が整っており、稼げば稼ぐほど老後に多くのお金が返ってくる年金システムが、国民の働く意欲を促進している。そして手厚いサービスの円滑な運用を可能にしているものの一つに、情報の透明性が挙げられる。全住民に「パーソナルナンバー」を付与して税金・医療・社会保障の情報を一元的に管理し、公的に誰でも参照できるようにしているのだ。制度の透明性と信頼性を高め、不正の抑止にもつながっている。
 
さらに平均月収はヨーロッパ平均を上回り、2024年時点で政府債務残高はEU平均を大きく下回る。財政運営の健全性もまた、スウェーデン社会の特徴だ。福祉の充実と個人の自立。その両立が、スウェーデンが持続可能な社会を実現する基盤となっている。

スウェーデン人の一生

7歳〜 学校

大学院まで学費無料! 就業訓練も。

7歳から義務教育がスタート。基礎学校9年、高等学校3年、大学3年の課程で構成されている。義務教育から大学院までは基本的に無料で、パーソナルナンバーを持っていれば外国人でも対象となることも。高校までは給食も提供される。大学のほかに専門学校や企業の人材供給を目的とした実習型教育機関が充実しており、就職に直結した学びも得やすい環境になっている。

名門ルンド大学。スウェーデンおよびEU・EEA圏内出身者は学費が無料になる。

© ©annenormark

18歳〜 就労

個人でも、働けば働くほど老後が楽に!

会社員や公務員、個人事業主にかかわらず、給与から天引きされるのは所得税のみ。年金は「所得比例年金」と自分の拠出を運用する「プレミアム年金」の二層で成り立っており、所得比例年金では所得税の納税額が多いほど老後もらえる年金の額も大きくなる。基本的に働くほど多くお金が還ってくる仕組みで、国民の労働意欲を支えている。

所得比例年金および保証年金の概念図

所得比例年金および保証年金の概念図

平均月収は欧州諸国の平均を上回っており、国民の生活水準の高さを支えている。アルバイトなどの非正規雇用は珍しく、パートタイマーであっても雇用形態は正社員である場合が多い。高い税金でも皆が納税できているのは、それだけ安定した収入を得ている人が多いということなのだ。(厚生労働省『スウェーデンの年金制度概要』を基に編集部で作成)

スウェーデンのお仕事を支える仕組み

①勤務時間
スウェーデンの労働法では現在、労働時間の上限は一週間40時間、残業は月50時間までと定められている。さらに、職種ごとに労使交渉で調整できる余地が残されているため、より短い週37時間程度の就労時間に設定したり、季節によって労働時間を変えるなど、フレキシブルに対応している職場も多い。
 
②求職者支援
手厚い失業保険に加え、教育訓練や就職紹介で失業者の再就職を積極的に支援している。多くの業界や職種では、再就職や職業訓練を紹介する組織を労使が共同で設立しており、解雇された人は気軽にサポートを受けられる。とくにIT、医療、バイオなど国の成長戦略に組みこまれた分野のプログラムが充実している。
 
③税務手続き
スウェーデン国税庁(Skatteverket)のサイトにはあらゆる個人情報が紐づけられており、簡単なオンライン手続きをすれば連携した口座から税金が引き落とされ、還付金もそこに振り込まれる。さらに負担を減らしたい人のために、最近はフリーランスの人の経理業務を有料で請け負う民間企業も登場している。
 
④休暇制度
年次休暇法で定められた最低限の年次有給休暇は25日。家族の介護、自身の病欠などは別の扱いとなっている。育児休業については、育児休業法によって両親に合計480日の有給休暇が与えられる。このうちの90日は父親が取得しなければ失効する制度を導入し、双方の育児参加を促している。
 
⑤起業支援
スウェーデンで起業する人の多くが利用しているサービスが「almi(アルミ)」だ。政府が100%出資している機関で、民間の金融機関よりも返済しやすいプランでの融資はもちろん、起業者向けのセミナーや無料の事業分析、ビジネス向けの各種テンプレートなども提供。オンラインで簡単に申請や相談ができる。
 
⑥フリーランス労組
スウェーデンでは労働組合への加入率が70%超と非常に高く、フリーランスでもその業界の労組に加入している人が多い。たとえばフリーのジャーナリストやライターを対象とした組合では、メディア企業の社員と比べて大幅に報酬が少なくならないよう、企業側と交渉して定めた最低金額を公表している。

29.7歳〜 子育て

助成金と休業制度で手厚く支援。

両親で合計480日間の育児休業が取得でき、そのうち390日間は所得に応じた給付が最大80%支給されるため、家計の負担を抑えながら育児に専念できる。さらに子ども手当や低所得世帯向けの支援が整備され、住宅改修や支援も自治体が提供する。1〜12歳の保育を必要とする子どもには就学前保育や学童保育の場を自治体が提供する義務があり、原則として待機児童は存在しない。

65歳〜 医療

手頃な医療費、代償は塩対応!?

患者負担の医療費は総額の約13%。また外来診療の年間自己負担額の上限が1,450SEK(約23,000円)に定められており、高額治療が必要になっても安心だ。一方、地域によって入院や診療の待機時間に差があったり、効率化のため入院期間を短く抑える傾向がある。高齢化が進むなか、適切な医療をいかにスピーディーに届けるかが課題となっている。

65~74歳の医療サービスの利用頻度

65~74歳の医療サービスの利用頻度

内閣府『高齢者の日常生活―スウェーデンと日本の比較から―』(2021)

75歳〜 介護

自宅での最期を尊重。

介護では高齢者の自立を尊重する在宅中心の仕組みが特徴的だ。ほかにもデイケア、ショートステイ、ナイトパトロールなど多様なサービスが整備され、必要に応じて住宅改修や支援も自治体が提供する。多くの高齢者は自宅での余生を希望し、ホームヘルパーや家族の支援を受けながら最期まで自分らしく過ごせることを重視している。

身体機能が低下した場合に希望する住まい (65~74歳)

身体機能が低下した場合に希望する住まい (65~74歳)

内閣府『高齢者の日常生活―スウェーデンと日本の比較から―』(2021)

Profile

佐藤吉宗(さとう・よしひろ)

ストックホルム在住。現地の大手銀行でデータサイエンティストとしてAI開発・活用に従事しながら、共働きで2人の子どもを育てている。著書に『子育ても仕事もうまくいく無理しすぎないスウェーデン人』(日経BP)。

ストックホルム在住。現地の大手銀行でデータサイエンティストとしてAI開発・活用に従事しながら、共働きで2人の子どもを育てている。著書に『子育ても仕事もうまくいく無理しすぎないスウェーデン人』(日経BP)。

Sweden

雑誌|永久保存版

Magazine|TRANSIT70号
光の国、スウェーデンへ

2025

WINTER

犬にもやさしいスウェーデン。
アニマル・ウェルフェア先進国で
犬と暮らしてみれば

web特集|月刊TRANSIT「スウェーデンが描く北欧型社会」

犬にもやさしいスウェーデン。
アニマル・ウェルフェア先進国で
犬と暮らしてみれば

LEARN&LIVE

2026.02.08

4 min read

「アニマル・ウェルフェア」とは?

「自分らしく生きる」ーーースウェーデンの人びとの幸福感の多くはここにあると思うのだが、その考え方は動物にも自然に当てはめられている。
 
たとえば犬との暮らしを見れば一目瞭然だ。
まず散歩の頻度が多い。ガイドラインでは、1日に3〜4回の散歩が必要とされている。また「ワーキングドッグクラブ」と呼ばれる団体が各地にあり、子犬のしつけから多様なドッグスポーツまで幅広く活動している。たとえば嗅覚を使って特定のターゲットを探す「ノーズワーク」は、家庭犬の飼い主にも人気で、競技会だけで年間1500回も開かれているという。犬はぬいぐるみではなく、運動や刺激を必要とする生き物だ。だからといって放し飼いにすればよいわけではない。人間社会に共生する以上、飼い主が管理しつつ、犬本来の欲求を満たすことが求められる。そこをスウェーデンの多くの飼い主はよく理解しているように思う。
 
スウェーデンの動物保護法には、犬が人との接触を必要とする「社会的動物」であることが明記され、長時間の放置や係留、ケージ飼いは禁止されている。これは犬に限らず馬にもおよび、群れで過ごす時間が保障されている。孤立は深刻なストレスとなるからだ。背景にあるのはアニマル・ウェルフェアの考え方である。「飢えや渇きからの自由」「病気や不快からの自由」に加え、「自然な行動をする自由」がとくに重視される。日本の動物愛護法が「終生飼養」を掲げるのに対し、スウェーデンは「どう生きるか」に価値を置く。生きるか死ぬかではなく、いかに生きるか。その根底には人びとの幸福感と同じものが流れている。
 
スウェーデンで実際に犬が飼いたくなったらどうしたらよいのか? ここからはそのステップを追いながら、人と動物がともに暮らすためのスウェーデン的心構えをみていこう。

STEP1
自分のライフスタイルで犬を飼うことができるのか考える。

はたして今の自分の状況で犬に十分な運動と刺激を与えられるのか、自分の性格やライフスタイルに合う犬種は何かを考える。犬種クラブやケネルクラブ※で相談することもできる。
※犬種クラブやケネルクラブは、犬の血統登録や犬種の保存・改良、ブリーダーや愛犬家の交流を目的とした全国規模の団体。

STEP2
ペットショップでは犬猫の販売は禁止。 ブリーダーから購入する。

犬種を絞ったら、ブリーダーを探す。ケネルクラブの規則に従う“シリアス”なブリーダーのリストは、犬種クラブなどから入手できる。実際にブリーダーを訪れ、今後どのように犬を飼っていくべきかについて話をする。

STEP3
すべての犬にマイクロチップが埋め込まれ、 飼い主は個人情報を登録する。

子犬が8週齢になると、飼い主はブリーダーから子犬を引き取る。ブリーダーはすでに獣医師による健康診断を済ませ、同時にマイクロチップを挿入している。引き渡しが完了した後も、ブリーダーは子犬の購入者を継続的にサポートする。

STEP4
犬のしつけは信頼関係を構築するため、 飼い主も一緒にトレーニング教室に通う。

多くの飼い主は子犬教室に通い、犬との暮らし方やしつけの方法を学ぶ。子犬教室は、どちらかといえば飼い主に知識を与えるための場であり、しつけを行うためのノウハウをここで得る。

STEP5
長時間の係留飼いやケージに入れての飼育は認められていない。

犬のウェルフェアを守るため、スウェーデンには犬の飼い方に関するさまざまな規則がある。係留飼いやケージ飼いは禁止されており、6時間以上犬をひとりにしないこと、1日に1回は必ず犬舎の外を散歩させることなどが求められている。

STEP6
仕事が忙しいなどの理由で家を長時間離れるときは、デイケアセンターに預ける。

犬を長時間ひとりにしてはいけないという規則のため、多くのデイケアセンターがある。職場に犬を連れて行ったり、家族や近所の人に交代で世話を頼むなど、さまざまな工夫が行われている。

STEP7
電車やバスなどの公共交通機関は、ペットと同乗できるエリアがある。

人と犬がともに生活できるよう、公共交通機関で犬を連れて行くことが認められている。ケージに入れる必要はない。ただし犬たちにはマナーのトレーニングが施されていることが前提。

GOAL!
犬との幸せな共生のために。

人間社会で犬と共生するためには、飼い主には犬の管理だけでなく、犬のニーズを満たすことを含め、多くの責任が求められる。かわいいから飼うという人間側の都合だけではなく、生き物同士、パートナーとして幸せに生きることを目指したい。

猫の場合|自由に室内外を行き来する生活。

ここまで犬についてみてきたが、猫を飼う場合はどうか。基本的に、猫は自由に室内外を行き来する生活を送る。室内飼いをする人もいるが、郊外に住む多くの人は外と家を自由に出入りできるように飼っている。猫にとって外を徘徊することは習性であり、同時にニーズでもあるためだ。

家畜や狩猟対象への動物倫理

スウェーデンにおけるアニマル・ウェルフェアは、愛玩動物だけでなく、家畜や狩猟の対象となる野生動物にまで広く浸透している。その象徴が狩猟法第27条で「獲物に不要な苦しみを与えない」と明記されていることだ。そのため日本で一般的なくくりわな猟はなく、銃などで手負いにした獲物を犬で探し出し仕留めることが義務となっている。家畜も例外ではない。日本では依然として広く利用されている豚の妊娠ストール(妊娠した母豚を体がほとんど動かせないほど狭い檻に閉じ込めて飼う方法)は禁止されている。スウェーデンでは母豚は自由に動き回り、自然な姿勢で子に授乳できるのだ。

Profile

藤田りか子

スウェーデン在住のライターかつドッグスポーツ愛好家。スウェーデン農業科学大学・野生動物管理学修士課程卒業。犬の読み物サイト「犬曰く」を運営。著書は『最新世界の犬種大図鑑』(誠文堂新光社)など。

スウェーデン在住のライターかつドッグスポーツ愛好家。スウェーデン農業科学大学・野生動物管理学修士課程卒業。犬の読み物サイト「犬曰く」を運営。著書は『最新世界の犬種大図鑑』(誠文堂新光社)など。

Sweden

雑誌|永久保存版

Magazine|TRANSIT70号
光の国、スウェーデンへ

2025

WINTER

アスプルンド、レヴェレンツ…
スウェーデンの建築家たちが描く
光のある空間

web特集|月刊TRANSIT「スウェーデンが描く北欧型社会」

アスプルンド、レヴェレンツ…
スウェーデンの建築家たちが描く
光のある空間

TRAVEL&WATCH

2026.02.08

6 min read

厳しい自然を受け入れ、冬は限られた陽のもとで生活するスウェーデン。高緯度の土地特有の光への思いは、建築やデザインにも刻み込まれている。エリック・グンナール・アスプルンド、シーグルド・レヴェレンツをはじめ、スウェーデンの巨匠建築家の作品を軸に、北の光を体感できる空間やデザインをみていく。

Text:Yuka Uchida Supervision:Takashi Koizumi

スウェーデンの近代建築を確立させた巨匠。

エリック・グンナール・アスプルンド(1885-1940)

エリック・グンナール・アスプルンドは北欧モダニズムの確立における中心的な建築家。1930年のストックホルム博覧会で会場設計を担い、当時ヨーロッパを席巻していた機能主義を北欧に広めた。
 
だが、その作風はモダニズムともいい切れない。建築様式が次々と移り変わる時代に生きたことも影響しているだろう。様式より確かなのは、北欧らしい価値観が根底にあること。自然の厳しさを受け入れ、人びとが手を取り合って生きる大切さや、光の扱いでいえば、明るい夏と暗い冬を考慮し、とくに冬の乏しい太陽光を的確に取り入れること。その光によって、暮らしや人の心を温かく包むこと。アスプルンドの仕事にはこうした意識が見てとれる。
 
闇から光へのドラマチックな転換も魅力で、たとえば「ストックホルム市立図書館」では調光を抑えたエントランスの先に明るい中央閲覧室が、「森の礼拝堂」では深い庇の奥に自然光が満ちる白いドーム天井が現れる。アスプルンドの生涯は55年とやや短いが、集大成である「森の墓地」では長年、生と死に向き合いつづけた。アルヴァ・アアルトなど、後につづく北欧諸国の建築家にも影響を与えた大きな存在だ。

森の墓地

Place:Stockholm Since:1915-1940
ストックホルム南部に位置する広大な公営墓地。学生時代からの友人であったアスプルンドとレヴェレンツが共同でコンペティションに応募し、一等を受賞。アスプルンドは、天窓から自然光が降り注ぐ「森の礼拝堂」(写真左)を、レヴェレンツは南向きの窓からドラマチックな斜光が射す「復活礼拝堂」を仕上げた。1935年以降はアスプルンドが単独で計画を進め、坂道の先に大きな十字架を立てた印象的なアプローチや中心施設となる「森の火葬場」を完成させた。1994年、ユネスコ世界遺産に登録。

© TAKASHI KOIZUMI

© TAKASHI KOIZUMI

ストックホルム市立図書館

Place:Stockholm Since:1928
黒漆喰の壁に挟まれたエントランスを抜け、階段を登ると、光溢れる中央閲覧室に導かれる。書棚上部は凹凸のある白壁で、ペンダントライトの光や高窓からの自然光を拡散し、大空間を柔らかな反射光で包む。館内の照明計画や照明器具もアスプルンドが自ら手がけている。

© Fredrik Rubensson

イェーテボリ裁判所増築

Place:Göteborg Since:1937
1672年築の裁判所の増築計画。中庭を囲む3階建てで、中央に吹き抜けの大ホールがある。中庭に面した壁はガラス張り。天井には空間を横断するように大きな天窓を配し、トップとサイドからたっぷりと外光を取り入れた。裁判所を訪れる人の心情を慮った、明るく軽やかな空間。

© Blondinrikard Fröberg

緻密で静謐な空間を生む、もうひとりの巨人。

シーグルド・レヴェレンツ(1885-1975)

スウェーデン建築界においてアスプルンドと同じく重要な人物なのが、静謐な空間美で知られるシーグルド・レヴェレンツだ。アスプルンドとは同い年。共同で設計した「森の墓地」は、発注者側の要望で途中からアスプルンドの単独計画となり、2人は袂を分かつこととなるが、以降もレヴェレンツは独自の美学に基づいた厳格な建築を生み出していった。
 
レヴェレンツの真骨頂は宗教建築にあるといっていいだろう。レンガやコンクリート、木や鉄といった素材を巧みに使い分け、どの建築においても、開口部からの光がそれぞれの質感を美しく浮かび上がらせている。暗闇に一筋の光を導くような演出も多く、目が慣れるまで何も見えないといった空間もある。照明から取っ手まで自ら設計し、金物製造のファクトリー「イデスタ」を経営するほど、細部にもこだわりがあった。
 
晩年まで仕事に熱中したレヴェレンツだが、彼は自作を語ることを極端に嫌う人物だった。生前には一冊の研究書も出版されず、その思想は今も謎に包まれている。彼の建築理念は、緻密に考え抜かれた空間そのものに宿っており、作品に身を置くことが唯一の理解となる。

聖マーク教会

Place:Stockholm Suburbs Since:1960
白樺の森に溶け込むように建つ教会。積み上げられた茶色の焼き煉瓦に白い太めの目地が入り、素朴な印象を与える。礼拝堂の天井は波打つようなユニークな形状。船底からインスピレーションを広げたとも伝わる。薄暗い空間にシリンダー状の吊り照明が浮遊する幻想的な空間。

© Anders Bobert

聖ペーター教会

Place:Klippan Since:1966
質素な黒い煉瓦を床や壁、天井やテーブルにまで多用した禁欲的な空間。そこに決して大きくない窓から限られた光が射し、煉瓦の粗々しい質感を強調する。足を踏み入れてすぐは暗さに慄くが、やがて目が慣れ、深い闇と計算された調光が心地よさに変わる。レヴェレンツ最高傑作の声も。

© seier+seier

聖ゲアトルド・聖クヌット礼拝堂

Place:Klippan Since:1966
端正に積まれた横長の煉瓦と艶やかな人造石の床が特徴。高窓から射す光が床に反射し、空間に輝きを生んでいる。一帯はマルメ東部墓地と呼ばれ、1919年にコンペを勝ち取ってから、53年の歳月をかけて竣工した。ほかに2つの小礼拝堂と最晩年に手がけたフラワーショップもある。

© TAKASHI KOIZUMI

ほかにも訪れたい、北の光を感じる建築

スウェーデンの光のデザインを体感できる建築はまだ数多くある。手がけた建築家も錚々たる顔ぶれだ。

ペーター・セルシング(1920-1974)

ハーランダ教会

Place:Göteborg Since:1958
あえて小さく設計した入口や窓に格子戸を設置。ここを通過した外光が床や壁に美しい影を落とす。夕刻に光が祭壇まで到達することも。セルシングはディティールを考え抜いた硬派な名建築を多く残した。

© TAKASHI KOIZUMI

ヨハン・セルシング (1955-)

ミレスガーデンギャラリー

Place:Stockholm Suburbs Since:1999
ストックホルムのリディンゲー島にあるミレスガーデン内の現代アートギャラリー。少し傾きのある筒状の天窓が、明るくクリーンな空間を生む。父はペーター・セルシングで、ヨハンも光の扱いに長けている。

© pineapplebun

ラグナール・エストベリ(1866-1945)

ストックホルム市庁舎

Place:Stockholm Since:1923
大広間「青の間」はノーベル賞の晩餐会会場。天井高が22メートルあり、高窓からの自然光が煉瓦壁に光のグラデーションを描く。アスプルンドらが学生時代に私塾にて指導を受けた巨匠エストベリの作。

© Jorge Láscar

エ・エルー・エルー・テー (1954-1978)

イェヴレの火葬場

Place:Gävle Since:1960
木目を写したコンクリート壁と松の羽目板を張った天井。その間のスリット状の窓は外光を導くほか、森の風景を室内に取り入れる役目もある。建築事務所・ELLTはこの建築で名を知られ、70年代まで活躍。

© Andy Liffner

ハンス・ボルグストロム(1922-2008) & ベングト・リンドロース (1918-2010)

ファースタ・フォサムリン・ソーダレツ教会

Place:Stockholm Suburbs Since:1960
祭壇のトップライトと、左右の壁のステンドグラスを透過した鮮やかな光が印象的。ボルグストロムとリンドロースは戦後に活躍した建築ユニット。ストックホルムにそびえるテレビ塔「カクネス塔」も彼らの作。

© Anders Bobert

Sweden

雑誌|永久保存版

Magazine|TRANSIT70号
光の国、スウェーデンへ

2025

WINTER

TRaNSIT STORE 購入する?

ABOUT
Photo by

Yayoi Arimoto

NEWSLETTERS 編集後記やイベント情報を定期的にお届け!