連載:星のやとめぐる日本
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連載:星のやとめぐる日本
TRAVEL & EAT & THINK EARTH
2025.02.27
10 min read
日本には数多くの観光地が存在する。そういった場所は、ともすれば紋切り型にめぐりがちだ。「星のや」というフィルターを通して、観光地の知られざる一面を探る。
今回は楽園感ただよう〈星のや沖縄〉で、琉球の長寿の秘訣を探る旅へ。
Photo : Omori Katsumi
Text:Takashi Sakurai
「ずっとここに居たい」。
〈星のや沖縄〉での滞在中、なんど思ったことか。実はこの滞在の前、海外取材でうかつにも果物にあたってしまい、体調は最悪だった。そんなタイミングで体験したのが〈星のや沖縄〉の「沖縄ブルーゾーン滞在」。ブルーゾーンとは、健康で長寿の人が数多く住む地域を指す言葉で、世界でわずか5カ所しかない。アジアで唯一のブルーゾーンである沖縄に暮らす人びとの食事や習慣などを取り入れることで、健康の秘訣を手に入れるというのがこの宿泊体験の特徴だ。いまの自分にぴったりではないか。
敷地内に足を踏み入れた瞬間に大げさでなく世界が変わる。アセロラ、シークヮサー、グアバなどがすくすく育つ美しい庭園。部屋に入った瞬間、窓越しに目に飛び込んでくるエメラルドブルー。まるで海とひとつながりになったようなプール。扉を抜けるたびに次々と楽園があらわれる。
地形をうまく利用して造られたプールはまるで海とひとつながりになっているかのよう。一年中適温で24時間好きなときに楽しむことができる。
敷地を守るように囲むグスクウォール。琉球時代の城跡である「グスク」にある壁を現代風にアレンジしている。壁の穴は読谷山花織の柄。
この楽園をぐるりと囲んでいるのがグスクウォールだ。外との隔絶感はありつつ、閉塞感はまったく感じない。中からだと庭園の木々がうまくブラインドになっているのだ。グスクウォールに意匠されているのはこの地域の伝統的な織物、読谷山花織の柄だ。宿泊者は近くにある工房を訪れて、実際に織物の体験をすることもできる。読谷山花織は、一度途絶えてしまった時期もあるというが、地元の人の努力によって復活したという経緯がある。フクギやガジュマルなどを染料に使った優しい色合いも魅力的だ。ほかにもやちむん(沖縄の焼き物)や、沖縄独自の染めである琉球紅型(びんがた)など知らず知らずのうちに沖縄の名品に触れ合っている。
到着後には沖縄流のおもてなしも待っていた。琉球空手などの体験もできる道場ですっと差し出されたぶくぶく茶。古くから賓客をもてなす際に振る舞われたものだという。まるでお碗に盛られたご飯のような見た目が可愛らしい。
到着後に振る舞われるぶくぶく茶。煎り米湯と茶湯をあわせて、大きな茶筅で泡立てる。
〈星のや沖縄〉から車で10分ほどの場所にある〈読谷村伝統工芸センター〉では歴史を学びつつ、織機を使って、コースターを制作することもできる。
読谷山花織には、大切な人を想って織るティーサージ(手巾)や反物などの伝統的なものだけでなく、ランチョンマット、名刺ケース、コースターなど現代風のものも。
〈星のや沖縄〉の目の前に広がる、沖縄では珍しくなってしまった自然海岸をのんびりと散歩する。とにかくどこに目線を送っても、目の保養になる。リラックスするというのも長寿の秘訣。美しいだけでなく、どこか景色に沖縄らしい緩さがあるのも心を解きほぐすのに一役買っている。まだ到着してわずか1時間ほどだが、もっと長く滞在している気がする。居心地のよさは時間を引き延ばしてくれるのだ。毎日こんな風景を眺めている沖縄の人が長寿なのも頷ける。
そして弱った胃腸がなにより喜んだのが海中をイメージしたダイニングでのディナータイムだ。「琉球ガストロノミア~ Bellezza~」は沖縄に古くから伝わる医食同源の教え「クスイムン」から着想を得ていて、栄養たっぷりの沖縄の食材をイタリアンの手法で仕上げている。やちむんをはじめとしたこだわりの器に盛り付けられた料理が出てくるたびに驚きがある。心も体も喜ぶ食事だ。メニューに含まれる栄養素が書かれているのもおもしろい。メインディッシュは「牛フィレ肉と山羊肉のインボルティーニ」。ショウガやニンニクがたっぷり効いた山羊肉のミンチで牛フィレ肉を包んでいる。山羊肉の滋養効果が体に染み渡る。
ディナーは沖縄に古くから伝わる「医食同源」の教えから健やかな美へと導く。前菜は沖縄で畑仕事の際に使われているバーキを器として採用している。
静かな波音と、少し物悲しい三線の響きが溶けあう。食事の後は、三線の生演奏を独占しながら、浜辺での晩酌タイム。演奏してくれる琉球古典音楽安冨祖流の師範、小波津先生から話を聞きながら、泡盛をベースにハイビスカスシロップを使ったカクテルをいただく。こうした地元の人との触れ合いというものも、旅人にとってとても貴重な時間だ。見上げれば満天の星。三線の音に歌声が加わる。人柄の良さが反映されたような穏やかでいい声だ。心がゆっくりと解かれていく。
沖縄ブルーゾーン滞在にはプライベートビーチで三線を聴くプログラムも。演奏してくれる小波津直也先生は沖縄伝統音楽の伝承者。
早朝から起き出して、残波岬灯台まで軽くランニングしてから、そのままプールへと向かう。もちろん、ふだんはそんな習慣なんてない。どうやら担当編集は早朝に道場で行われる呼吸法のエクササイズ「朝の鍛錬深呼吸」に参加したようだ。リラックスして心をのんびりさせつつ、体を動かしてフィジカルにも刺激を与えたくなる。ここではそういう健康的なルーティンが自然と生まれる。
朝食は部屋で摂ることにする。大きなテーブルが置かれた土間ダイニングのプライベート感がいいのだ。午前の光に輝く海を見ながら、植物性タンパク質をメインにしたヘルシーな料理を堪能する。夜もギャザリングサービスという、シェフが手がけた料理を自分の部屋で食べられるサービスがある。ダイニングももちろん素敵なんだけれど、気を使わないプライベートな時間をしっかりと確保できるということも、リラックスにつながる。今夜は仲間うちだけで、気兼ねなく料理を堪能することにしよう。
朝食は沖縄野菜と島豆腐がたっぷりの全粒粉ガレット。黒糖バナナスムージーも美味。
隣接する〈バンタカフェ by 星野リゾート〉の周辺には、自然海岸の中に、まるで隠れ家のように寛げる空間がいたるところに用意されている飲み物を片手に、読みかけだった本を開く。〈星のや沖縄〉に着いてから、まったく追われる感覚がない。仕事が詰まっている? こんな楽園でパソコンを開くなんてナンセンスだ。
夕食を終え、大きなソファが設置されたテラスリビングで波音に包まれながら少し微睡む。ここの居心地のよさのひとつは揺らぎなのではないだろうか。繰り返す波の音、潮の満ち引き、夕陽、星空、秋の虫。そういった自然界の揺らぎを特別に意識せずとも感じ取ることができる。
「ずっとここに居たい」。
竜宮城に誘われた浦島太郎もきっとこんな心地だったのではないだろうか。
部屋はすべてオーシャンフロント。土間ダイニングは、寛ぐ空間として優秀。
健康、というと良質な食事や睡眠、適度な運動はもちろん大切だけれど、読谷山花織の手仕事による繊細さや三線が奏でる美しい響きなど、ここでは五感にも栄養がめぐるのだなと気づく。
ここは現代の竜宮城。ただし玉手箱で歳をとるのではなく、滞在すればするほど心身ともに健やかになっていく。
星のや沖縄
「グスク(琉球の城跡)の居館」をテーマに、8つ目の〈星のや〉 として2020年に誕生。約1㎞の海岸沿いに100室ある客室 はすべて低層かつオーシャンフロント。また全室に土間ダイ ニングを備え、まるで暮らすような滞在ができる。4室のみの 最上級のスイートルーム「ティーダ」にはプライベートプール も完備。
今回の「沖縄ブルーゾーン滞在」の他に、プライベー トクルーズが楽しめる「海風クルーズチェックイン」や海辺で 乗馬ができる「朝凪よんなー乗馬」。沖縄発祥である空手の 精神を体感できる「琉球唐手滞在」など、多彩なプログラム が用意されている。
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