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春夏藍秋冬 with KAPITAL
WEAR
2024.12.06
2 min read
古くから藍や綿花の生産地として知られる岡山県の児島の地に根をおろし、デニムや藍染めを軸とした服づくりをする〈KAPITAL〉が、日本の伝統や昔ながらの精神を受け継ぎながらも、新しい試みにも挑む「Japan Working Hero」を訪ねて、季節ごとに旅をする連載。
「墨と内山紙伝統工芸士編」では、内山紙伝統工芸士である阿部拓也さんに会うために、長野県にある、内山紙を製造する阿部製紙の工房へ向かった。
Photo : Yayoi Arimoto
氷点下近くまで気温が下がり、水分を多く含んだ小雪が舞い始めた1月下旬。内山紙を製造する阿部製紙の工房には、ちゃぷちゃぷと小刻みに揺れる水の音が響いていた。
内山紙は、長野・飯山地方に江戸時代から伝わる伝統工芸。原料となる替の木の皮が、太陽光のもと雪にさらされることで白くなる効果を利用して、雪深いこの地に根づいた産業だ。その伝統工芸士である阿部拓也さんは、寒さを感じさせない素振りで、手際よく作業をつづける。
「以前はほぼ障子用でしたが、内山紙の需要も変わってきました」。そう言って拓也さんが一心に漉いていたのは、表彰状用の紙。伝統的に使われてきた障子、提灯や大凧合戦用といったロットの多い紙は時代とともに機械漉きにとって代わった。しかし、葉書や賞状などの紙は今でも手漉きにこだわっているという。その理由を尋ねると、「地元の伝統工芸の素晴らしさを伝えていきたいんです」とまっすぐな答えが返ってきた。
工房内の壁や天井には、子どもたちからの感謝状がパッチワークのように貼られていた。聞けば、父の代から30年以上にわたり、飯山市を含む近郊の小学校計8校の卒業証書用の紙を、卒業生たちとともに手漉きで作っているのだという。しかも、たんなる手漉き体験で終わらせないために、地元の小学校では楮を育て、収穫し、和紙が出来るまでの工程を一つひとつ体験してもらっているというから驚きだ。
今では内山紙を専業とする家は阿部製紙のみだそうだが、拓也さんは内山紙に可能性を感じている。楮100%の手漉き紙は、風合いのよさに加えて強度もある。名刺入れやブックカバーなどの製品を自ら製作し、販売も行っているのだ。「こちらは新作です」と見せてくれた試作品は、柿渋と藍で内山紙を染めた前かけだった。
北竜湖畔の雪原へと歩を進め、〈KAPITAL〉の”BORO”コートと刺し子デニムに身を包んだ拓也さんは、異国の旅人のような佇まい。内山紙をめぐる冒険はまだまだつづいていく。
内山紙伝統工芸士
阿部拓也(あべ・たくや)
20歳から職人の道を目指しはじめ、2010年には内山紙の伝統工芸士に認定される。三代続く(有)阿部製紙で、古来から日本の和紙作りの原料となってきた楮(コウゾ)を使い、最高級の和紙を作成している。
20歳から職人の道を目指しはじめ、2010年には内山紙の伝統工芸士に認定される。三代続く(有)阿部製紙で、古来から日本の和紙作りの原料となってきた楮(コウゾ)を使い、最高級の和紙を作成している。
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HP:www.kapital.jp
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