世界で7番目にサステナブル!
フランスにおける環境意識と
取り組んでいること

世界で7番目にサステナブル!
フランスにおける環境意識と
取り組んでいること

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2024.11.06

12 min read

ヨーロッパのなかでももっとも豊かな生態系を保有している国の一つであるフランス。人びとの日常には、美しい自然環境を守るためのいくつものユニークな習慣やルールが当たり前に存在している。

text=TRANSIT  illustration=NATSUMI TSUCHIDA

フランスの環境意識はどこから?

類まれな自然を有するフランス。国土の北部や北西部はセーヌ川やロワール川といった大河が流れる緩やかな丘陵地や盆地が広がり、南部から東部にかけては、ピレネー山脈、中央高地、西アルプス山脈など、標高の高いエリアがつづく。そして本土の北に臨むは北大西洋、南には地中海。そこに構築された生態系はとても豊かで、両生類や鳥類、哺乳類の多様さはヨーロッパ一といわれている。海外領土に目を向けると、フランス領ギアナは地球上に残る最後の大森林地帯の一つであるアマゾン川流域に、ほかにもニューカレドニアやフランス領ポリネシアなど複数の地域が「生物多様性のホットスポット(多様な生物が生息しているが、保全の優先度が高い場所)」の中と、数多くが手つかずの豊かな自然と生態系を有するエリアに位置している。また、地球上のサンゴ礁の10%がフランス海外領土に属するフランス管轄下の水域に存在するという。
 
必然的にフランスが担う自然界の役割は大きく、環境分野において国際レベルでもっとも活動的な国の一つになっている。それは、2015年にパリで開かれた国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)の成功と、温室効果ガス削減に関する取り決めが示されたパリ協定の実現によって証明されている。
 
こうした環境問題は、市民の間でもかなり関心が高い。2021年には、市民で構成された4つの環境団体が、国が気候変動対策を十分に行わず人びとの健康や未来を守れていないとして訴訟を起こした。それに対してパリ行政裁判所は、国の過失を認める判決を下し、政府に気候変動の悪化を防止するように義務づけたのだった。この出来事は「l’Affaire du Siècle(世紀の訴訟)」とも呼ばれ、大きな注目を集めた。
 
このように法律から人びとの意識まで、どの観点でも日本より遥かに環境意識が高いフランス。では、それはどこからきているのだろうか。
 
「持続可能な開発(Sustainable Development)」という考え方は、14世紀フランスで生まれたといわれている。森の木は家具を作るのに使われるが、すべての木を切ると薪がなくなって生活に困るため、計画的に使い、また増やしていかなくてはならない。「林業規定」という法律に、こうして「自然をコントロールしていく考え」が書かれ、その精神が現代にも受け継がれているのだ。
 
加えて、フランスがさまざまな環境被害に悩まされてきたという歴史も影響している。20世紀に入り産業の工業化が進んだことで酸性雨が増え、21世紀になると世界中の環境悪化も波及してか、国内各地で異常気象や洪水、森林火災や水不足などが起き、主に一次産業が打撃を受けてきた。地形的要因もあり、国内では今でもこうした災害は悩みの種になっている。その被害をできる限り小さくするため、環境保全を考えることは市民にとって不可避なのだ。
 
また、経済的な側面もある。国内産業においては、廃棄物から使用エネルギーの量や種類までさまざまな観点で環境保全に関する法律があり、今やフランスはクリーンなものづくりの世界のお手本となった(前述の通り訴訟が起きるなど問題はあるが)。そして、厳しいルールは輸入品に対してもほぼ同様に課されており、国内に流通する製品の環境レベルは総じて高い。つまり裏を返せば、環境規制は輸入品を規制する”真っ当な理由”としても機能しているということだ。フランスが環境大国として確固たる姿勢を見せることは、文字通り環境を守るだけでなく、国内産業を守ることにもつながっている。

▶︎世界のサステナブルな国ランキング

出典:持続可能な開発レポート2022(SDGs 17の目標の達成率をもとに算出)

▶︎国別二酸化炭素排出量シェア(%)

出典:Union of Concerned Scientists

フランスが規制したもの・取り組んでいること 7選

<p>ゴミが出るペットボトル飲料は買わず、日常的にマイボトルを持ち歩く人が増えているフランス。公共の建物には水飲み場の設置が義務付けられていて、パリにはすでに1000以上の公共の水飲み場がある。炭酸水が出てくる場所もあり、好きなだけ水分補給ができる。</p>

1. いたるところに無料の水飲み場

ゴミが出るペットボトル飲料は買わず、日常的にマイボトルを持ち歩く人が増えているフランス。公共の建物には水飲み場の設置が義務付けられていて、パリにはすでに1000以上の公共の水飲み場がある。炭酸水が出てくる場所もあり、好きなだけ水分補給ができる。

<p>2020年にプレート、カップ、綿棒といった使い捨てプラスチック製品の使用が禁止となり、2021年にはカトラリーやストローなど、多くの使い捨て製品の使用が禁止となった。また、果物と野菜のプラスチック包装も、2026年までに段階的に廃止される。</p>

2. 使い捨てカトラリーの禁止

2020年にプレート、カップ、綿棒といった使い捨てプラスチック製品の使用が禁止となり、2021年にはカトラリーやストローなど、多くの使い捨て製品の使用が禁止となった。また、果物と野菜のプラスチック包装も、2026年までに段階的に廃止される。

<p>衣料品の売れ残りの廃棄や焼却処分を禁止する『衣類廃棄禁止令』が2022年に施行。売れ残り品は、再利用やリサイクル団体などに寄付する義務がある。街中には衣料品のリサイクルポストが設置され、市民も積極的にリサイクルに参加している。</p>

3. 衣料品の再利用を義務化

衣料品の売れ残りの廃棄や焼却処分を禁止する『衣類廃棄禁止令』が2022年に施行。売れ残り品は、再利用やリサイクル団体などに寄付する義務がある。街中には衣料品のリサイクルポストが設置され、市民も積極的にリサイクルに参加している。

<p>2023年に初めて発売され話題となった、国内の自然を守るスクラッチくじ「ミッション・ネイチャー」。1枚3ユーロで購入でき、そのうち0.43ユーロはフランス政府生物多様性事務局(OFB)が指定した生物多様性プロジェクトに使われた。2024年版も発売の予定。</p>

4. 自然を守る「スクラッチくじ」

2023年に初めて発売され話題となった、国内の自然を守るスクラッチくじ「ミッション・ネイチャー」。1枚3ユーロで購入でき、そのうち0.43ユーロはフランス政府生物多様性事務局(OFB)が指定した生物多様性プロジェクトに使われた。2024年版も発売の予定。

<p>世界的に人気で台数が増えているSUV車だが、普通車に比べエネルギー消費量が15%程度多いため、パリでは2024年9月から駐車場料金を普通車の3倍に設定。そして、2035年からは新車販売はEV車のみとなり、ガソリン車・ディーゼル車は終了する。</p>

5. SUV車からEV車へ

世界的に人気で台数が増えているSUV車だが、普通車に比べエネルギー消費量が15%程度多いため、パリでは2024年9月から駐車場料金を普通車の3倍に設定。そして、2035年からは新車販売はEV車のみとなり、ガソリン車・ディーゼル車は終了する。

<p>列車やバスなどを使って2時間半以内で移動できる範囲において、飛行機を飛ばすことを禁止する法律が2023年に施行された。パリからナント、リヨン、ボルドーといった地方都市を結ぶ航空路線のうち、長距離路線との接続を除く便が廃止された。</p>

6. 近場なら飛行機より電車推奨

列車やバスなどを使って2時間半以内で移動できる範囲において、飛行機を飛ばすことを禁止する法律が2023年に施行された。パリからナント、リヨン、ボルドーといった地方都市を結ぶ航空路線のうち、長距離路線との接続を除く便が廃止された。

<p>原子力発電に代わり太陽光発電や風力発電、地熱発電などの再生可能エネルギーが普及しつつある。なかでも政府は風力発電に力を入れ、その中心として洋上のウィンドファームが建設された。フランスの海岸線の長さと風のポテンシャルが期待されている。</p>

7. クリーンな海上での風力発電

原子力発電に代わり太陽光発電や風力発電、地熱発電などの再生可能エネルギーが普及しつつある。なかでも政府は風力発電に力を入れ、その中心として洋上のウィンドファームが建設された。フランスの海岸線の長さと風のポテンシャルが期待されている。

この記事は『TRANSIT64号フランス特集』の転載及び再掲載です。

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