1988年11月16日、パキスタンで10数年ぶりに開かれた公開選挙にて、近代史上イスラーム国家初の女性指導者が誕生しました。
2期にわたりパキスタンの首相を務めたベナジール・ブット。シンド人とクルド人のルーツをもち、パキスタンに民主化をもたらしたズルフィカール・アリ・ブット氏のもとに生まれた彼女は、イスラーム圏における女性の権利を訴え民主主義に身を捧げたのち、2007年に暗殺されこの世を去ります。
世界経済フォーラムが発表した「世界ジェンダーギャップ報告書 2024」において、パキスタンのジェンダーギャップ指数は146カ国中145位。とくに経済活動の分野における格差が非常に大きく、女性を取り巻く社会環境はいまだ課題が山積みとなっています。
一方で、近年は国家レベルで女性のエンパワーメントに取り組んでいるそう。2017年には女性たちの貧困格差を是正するために「ベナジル所得支援プログラム(BISP)」を政府が導入。ほかにも、女性専用バスの車両の導入や、女性も遺産相続できるよう特例を設けるなど州ごとの取り組みも増えているようです。
さらに、2017年10月に可決された選挙法の改正案では、「各政党は立候補者の5%を女性枠とすること」「各選挙区における投票数の少なくとも 10%を女性の票が占めていなければ、その選挙区または投票所の開票結果は保留すること」の2点を明記。これらの取り組みの結果、2018年の総選挙では 国民議会と州議会に464人もの女性候補が出馬し、国会における女性議員の割合は20.10%(2024年時点)まで増加することとなりました。(日本の衆議院における女性議員割合は20.27%、2024年10月29日時点)
同じくパキスタンに生まれ、2014年にノーベル平和賞を受賞したマララ・ユサフザイは、ベナジール・ブットに刺激を受けたと語ります。建国の母であるファティマ・ジンナーをはじめ、これまでパキスタンは数多くの偉大な女性リーダーやロールモデルを輩出してきました。堂々と、鮮やかにフェミニストとして生きた彼女たちの精神は、次世代の心の中に脈々と受け継がれていくことでしょう。
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