北は北海道から、南は沖縄まで、ひとくちに日本といっても、食べ物、お祭、習慣、自然が織りなす景色まで個性はさまざま。その土地ならではの愉しみ方は、その土地の人に訊くのが一番!そんな日本各地の地元ネタを集めたのが、この「47都道府県ローカルのすゝめ」です。
今回の愛媛県は気になるあの果物、かんきつ(ミカン)について。教えてくれたのは、東京で愛媛の観光・物産の魅力の発信に取り組んでいる愛媛県東京事務所の大西佑宜さん!
Text:Yuuki Onishi Photo:えひめ愛フード推進機構、愛南町
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日本有数のミカン産地である愛媛県では、県外からの玄関口である松山空港には、かんきつをモチーフにした愛媛県イメージアップキャラクター「みきゃん」やミカンジュースのオブジェがお出迎えし、松山市内でも、市民の足である路面電車の車体はオレンジに染まっています。ブランドカラーやキャラクターもかんきつをイメージしたものが多く、県民には日ごろから親しみをもって受け入れられている食べ物です。
愛媛県イメージアップキャラクター「みきゃん」。みかんの「み」と子犬の鳴き声「キャン」をあわせて命名。ちなみに、ライバルの「ダークみきゃん」、元気っ子な「こみきゃん」もいる。
今回は、「愛媛とかんきつ」をテーマに、少しだけ愛媛のかんきつの魅力をご紹介します。
そもそも、愛媛県はなぜかんきつ(ミカン)の栽培が盛んなのでしょうか。
愛媛県は一年を通して温暖で晴れの日が多く、畑の土は水はけが良いうえに、栄養分を多く含んでいることなど、おいしいミカンをつくる環境に恵まれていました。
このため、1900年ごろから温州みかんを栽培する農家が増え始め、1968年には温州みかん(みなさんがイメージするミカンは「温州みかん」という種類です)の年間の生産量で日本一になりました。その後、温州みかん以外のかんきつの栽培も進み、現在愛媛県内では50種類以上のかんきつがつくられています。そして、かんきつの生産量が日本一であることから、愛媛県は「かんきつ王国・愛媛」と呼ばれるようになっています。
かんきつといえば冬に食べるイメージですが、かんきつの生産に携わる方々の努力の結果、愛媛で生産されるかんきつは1年中食べられるようになりました。そのため、愛媛県では「かんきつカレンダー」を作成し、旬のものをわかりやすく案内しています。
いよかんやデコポンなどは食べたことがある方も多いのではないかと思いますが、あまり馴染みがない・聞いたことがない品種もいくつかあるのではないでしょうか。ここでは、そのなかでも特徴的な品種をご紹介します。
1. 河内晩柑(かわちばんかん)
冬が旬のかんきつが多いなか、河内晩柑は春から夏にかけて旬を迎える珍しい品種です。香り豊かな金色の果皮や、ほどよい甘さと爽やかな酸味が特徴で、その味わいから「和製グレープフルーツ」と称されることも。はじめの時期は果汁が多くジューシーですが、時期が経つにつれ酸味と果汁が抜けてさっぱりとした味わいになります。また、認知機能の改善や脂質代謝促進の作用がある機能性成分「オーラプテン」がほかのかんきつより多く含まれていることが判明し、注目を集めています。
そんな河内晩柑ですが、近年は生産が盛んな“御荘”地区をなぞらえた「misho」というブランドネームにて欧州での展開をスタートさせており、今後は欧州の飲食店や小売店で「misho」が見られるかもしれません。
2. 紅プリンセス
「紅プリンセス」は、愛媛が誇るオリジナル品種「紅まどんな」と「紅かんぺい」(甘平)を掛け合わせてできた期待の新品種です。
「紅まどんな」のゼリーのような食感と、「紅かんぺい」の濃厚な甘みを兼ね備えているのが特徴で、糖度や酸度、外観などの基準をクリアしたものだけが「紅プリンセス」として販売されます。出荷の時期は3月上旬ころを予定しています。
愛媛県では、11月中旬からの「紅まどんな」、1月中旬からの「甘平」、3月からの「紅プリンセス」と、時期をずらしながら連続してシーズンを迎えることから、これらの3品種を「紅コレクション」と命名し、品種同士のつながりはもちろんのこと、愛媛県産かんきつを通じて、多くの人がご縁を感じてもらえるような取組みに発展させたいと考えています。ぜひご注目ください!
上記以外にも、イタリア原産で真っ赤な果肉が特徴的な「タロッコ(ブラッドオレンジ)」や、かんきつの大トロと呼ばれるほどとろけるような果肉で話題の「せとか」など、ユニークなかんきつが数多くあります。県のホームページにてご紹介しておりますので、気になる方は是非チェックしてみてください。
愛媛県公式HP「かんきつの種類」
https://www.pref.ehime.jp/page/11417.html
生果は旬の時期しか食べられませんが、いくつかの品種はジュースやゼリーなどに加工され、旬以外の時期でも楽しめるようになっています。なかにはかんきつの皮を活用したお菓子になっているものも!生果の入手が難しい場合は、まずは加工品からお試しいただくのもお勧めです。
ここまで、かんきつ王国・愛媛の歴史や品種についてご紹介しましたが、そんな愛媛に対し、巷ではさまざまなウワサが飛び交っているようです。少しだけ、その真偽について確認してみましょう。
ウワサ1:愛媛ではかんきつは貰うもの?
⇒親戚や知人にかんきつを生産されている方がいる家庭では、シーズンになるとお裾分けをいただくことがよくあります。筆者も祖父母が農家を営み、小規模ながらみかん栽培をしていたので、みかんは買ったことがなく、祖父母の育てたものを食べていました。
ウワサ2:蛇口からミカンジュースが出るって本当!?
⇒残念ながら一般家庭では蛇口をひねっても水しか出ませんが、そんなウワサを逆手に取り、観光地やホテルなどでは、蛇口をひねってミカンジュースを楽しむサービスを提供しています。松山空港では、到着ゲートのすぐ目の前にあるので、到着早々に試してみた方も多いのではないでしょうか。蛇口からミカンジュースが流れるのは愛媛ならではの体験ですので、ぜひ一度体験してみてください。
ウワサ3:学校給食で「ミカンジュース」が出るって聞いたけど…?
⇒多くの県内自治体では、紙パックのミカンジュースが給食の献立に採用されていたようです。採用される頻度はそう多くはありませんでしたので、献立に出てきたときには、休んだ子のジュースを誰が飲むかをみんなでジャンケンして決めていたことを思い出します。今でも、献立にミカンジュースや果物としてミカンを取り入れるエリアもあり、子どものころから愛媛のミカンに親しめるようになっています。
また、ミカン果汁を加え炊き込んだ「みかんごはん」も、松山市を中心とした一部地域で給食といて提供されていたようですが、愛媛出身者の集う我々の職場で食べたことがある人はいないようです。半ば都市伝説と化しているみかんごはんは、レトルトで手軽に食べられるようになっていますので、味が気になる方はぜひチェックしてみてください。
愛媛のかんきつに興味をもたれた方は、ぜひ愛媛のかんきつをご賞味いただくほか、県内でもかんきつの生産がさかんな南予エリアを旅してみてください。瀬戸内と段々畑の美しい風景は、必ずや皆さんの心に残る光景となるでしょう。
愛媛県がもっと知りたくなったら!