北は北海道から、南は沖縄まで、ひとくちに日本といっても、食べ物、お祭、習慣、自然が織りなす景色まで個性はさまざま。その土地ならではの愉しみ方は、その土地の人に訊くのが一番!そんな日本各地の地元ネタを集めたのが、この連載「47都道府県ローカルのすゝめ」です。
山形県のvol.2では、米どころ&フルーツどころな山形ならではのお酒にまつわる話をピックアップ。教えてくれたのは、山形県観光交流拡大課の真田恭輔さん!
Text:Kyosuke Sanada
Index
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山形×日本酒のこと!
2024年12月、日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。日本屈指の酒どころ・山形県は、清らかな水、冬の厳寒、夏の炎暑、昼と夜の激しい寒暖差に育まれた銘酒が勢揃い。49の酒蔵がある山形ではお酒の味のバリエーションも豊富で個性的。地酒造りの背景にある歴史や文化への理解を深めるほど、その味わいもまた深まります。見学・試飲ができる酒蔵や、資料館併設の酒造を巡り、山形の日本酒の奥深さに酔いしれましょう。
●山形の最高の酒米と酒蔵がつくる日本酒「山形讃香」
最高品質の日本酒を目指して、県と県酒造組合が技術の粋を尽くして開発したオリジナルブランドの純米大吟醸酒があります。それが「山形讃香」。山形の最上の米、水、酒蔵でつくったお酒なのです。
原材料のお米は、山形県で開発した酒造好適米「雪女神」を使用。そのなかでもコンテストで選ばれたとくに優良な酒米を使います。水は、豊かな自然が育む清らかな山形の水を原料にしています。酒蔵は都度選出されていて、その年の品評会において上位の成績を獲得した酒蔵が醸造します。酒米チャンピオンと酒蔵チャンピオンがタッグを組んで酒を醸す、山形の至極の一本です。
その年ごとにいい酒米を山形県の中で選ぶ。
© 山形県酒造組合
蒸した酒米。
© 山形県酒造組合
山形讃香 しずく取り 税抜き10,000円(令和5酒造年度…千代寿虎屋、加藤嘉八郎酒造、月山酒造)
© 山形県酒造組合
山形讃香 税抜き7,000円(令和5酒造年度…千代寿虎屋、加藤嘉八郎酒造、月山酒造)
© 山形県酒造組合
●2度の世界一に輝いた、天童市〈出羽桜酒造〉のお酒
古くより吟醸造りを行っている〈出羽桜酒造〉は、真摯な酒造りが評価され、史上初の2度のインターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)の日本酒部門の最高賞“チャンピオン・サケ”を受賞しています。IWCはロンドンで開催されている世界最大級のワインコンテストです。世界各地から出品されたお酒のなかからチャンピオン・サケになった、世界一のお酒をご賞味ください。
© 出羽桜酒造株式会社
●手造りにこだわった大蔵村〈小屋酒造〉の日本酒
文禄2年(1593年)創業といわれている〈小屋酒造〉は、山形県内最古の酒蔵です。本酒蔵が位置する大蔵村には、古くから月山登山の宿場として栄える肘折(ひじおり)温泉郷があり、訪れる方々に小屋酒造のお酒が愛されてきました。機械を使わず人の手による酒造りを継承しています。
大吟醸「絹」は、厳選された酒米の糠部分を取り除いて醸す高度な伝統技術による完全手造り品です。フルーティーな香りと絹のようにやわらかい味が特徴です。
© 小屋酒造
●米沢市〈小嶋総本店〉の酒蔵で明治時代にタイムトリップ!
「東光(とうこう)」の名で知られる〈小嶋総本店〉は、慶長2年(1597年)創業の米沢藩上杉家御用酒屋として営まれてきました。江戸時代に飢饉で米不足となり禁酒令が出されたなかでも、酒造りを許されていた数少ない酒蔵の一つといわれています。酒かすを活用してバイオガス発電をするなど、再生可能エネルギーによる持続可能な酒造りにも取り組んでいます。
小嶋総本店から徒歩数分の酒造資料館「東光の酒蔵」は、まるで明治時代の酒蔵にタイムスリップしたかのような趣き深い空間が広がります。併設の酒販売処では東光の試飲とお買い物を楽しむことができます。
© 小嶋総本店
© 酒造資料館東光の酒蔵
●酒蔵まつりもある酒造りの町、鶴岡市・大山地区
豊富な伏流水が湧き出し、米どころでもある大山地区は、酒造りのまちとして歴史を重ねてきました。江戸時代から幕末・明治にかけて発展してきた酒造業は、全国有数の「酒どころ」と呼ばれるまでに成長しました。2024年には「山形讃香」を醸造する酒蔵の一つに、大山地区に蔵を構える〈加藤嘉八郎酒造〉も選ばれています。
毎年2月には、大山地区にある酒蔵の新酒を楽しむイベント「大山新酒・酒蔵まつり」も開催されます。イベントの一つ「酒蔵めぐり」では、大山のまちを歩きながら〈渡會(わたらい)本店〉、〈冨士酒造〉、〈羽根田酒造〉、〈加藤嘉八郎酒造〉の4酒蔵を巡りながら、各蔵で搾りたての新酒試飲や酒蔵見学などを楽しむことができます。
>>大山エリアのことをもっと詳しく知りたい方はこちらへ!
大山観光協会HP
© 大山観光協会
山形×ワインのこと!
山形新幹線の車窓から山肌に広がるブドウ畑を望むことができるほど、山形はブドウ栽培が盛んな地。日本のワイン4大生産地(山梨・長野・北海道・山形)のひとつです。ワイナリーが多くある山形県内陸部は、日あたりが十分にあり、水はけがよく、昼夜の寒暖差が大きく、成熟期に雨が少ないなど、ワイン用ぶどうの栽培に恵まれた条件が揃っています。
さらに、2025年は山形県でサクランボや西洋ナシなどの果樹栽培が始まってから150周年の記念すべき節目の年。いちずに果樹栽培に打ち込んだ先人たちに思いを馳せながら、個性豊かなフルーツを使ったお酒を味わってみませんか。
>>ちなみに山形がフルーツ王国になるまでの歴史がわかるこちらのサイトもおもしろいので、ぜひ覗いてみてください!
いちずに、かじつ。やまがたフルーツ 150周年記念サイト
●自然とともに生きる、南陽市〈酒井ワイナリー〉
明治25年(1892年)創業、東北最古のワイナリーが山形にある。それが〈酒井ワイナリー〉。無ろ過・無清澄の昔ながらの造りを大事にしています。羊の放牧による草刈りなど、ブドウ栽培も循環型農業を実践することで地元の自然を守りつつワイン造りをつづけています。
© 酒井ワイナリー
●健康にもよいお酒を目指した、東根市の〈東根フルーツワイン〉
ワインといったらブドウのお酒を思い浮かべるかもしれませんが、フルーツ王国山形には豊富にある各種の果物から造られたフルーツワインが味わえるワイナリーがあります。山形県産果物を100%使用してワイン造りをしているのが〈東根フルーツワイン〉。サクランボの佐藤錦、紅さやかであったり、西洋梨のラ・フランス、林檎のふじなどのワインが楽しめます。サクランボのワインは見た目も鮮やかで、優雅な甘味やさわやかな酸味を味わえます。ちなみにブドウのワインも種類が豊富。メルロー、ピノ・ノワール、マスカットベーリーA、ナイアガラ、デラウェアといったワインでお馴染みの品種だけでなく、ヤマブドウ、シャインマスカットなどのワインもあります。また、おいしいだけでなく健康にもよいワインの製造をモットーに、それぞれのワインについて栄養価を分析、ホームページで公開しています。
© 東根フルーツワイン
山形県内のお酒が集まるスポットがある?
そんな銘酒が勢揃いする山形で、県内各地の日本酒やワインを試飲できる場所があります。それが有料試飲コーナー〈やまがた酒巡り Chetto(ちぇっと)〉。山形弁で「気軽に、ちょっとだけ」という意味で、ちょっとずつ気軽に山形のお酒とワインを楽しんでほしいという想いが込められています。常時42種類を取り揃えたラインナップ。JR山形駅から徒歩1分の場所にあるので、車の運転も気にせずに試飲できます。ぜひお気に入りを見つけてみてください。
山形県には多種多様な日本酒やワインのほか、「つや姫」「雪若丸」といったおいしいお米や、「サクランボ」「総称山形牛」「庄内北前ガニ」に代表される豊富な農林水産物、「ラーメン県そば王国」として地域ごとに特徴のあるラーメン、県内13のそば街道などがあり、美食の宝庫でもあります。山形のおいしいものと一緒に、“日本一美酒県やまがた”でおいしいお酒を堪能してみてはいかがでしょうか。
やまがた酒巡り Chetto
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