朝早く起きた日は気持ちがいい。 実際に"early bird catches the worm"なんてことわざがあるように、朝の時間を有意義に使うと、1日が満ち足りたものになる。 そとからはなかなか見えない、自分だけの時間。 〈Rab〉のウェアとともに朝を頑張る人を訪ね、彼らの思考や、仕事における信念などを聞いた。
Photo & Text:Jeremy Benkemoun(TRANSIT)
日本を代表する名峰が連なる北アルプス。標高3,000m級の山岳を舞台に、登山文化と豊かな自然を守り、未来へとつなぐべく奮闘する人がいる。
伊藤圭さんは、黒部川の源流域を開拓し山荘を営んだ父・伊藤正一さんの跡を継ぎ、〈三俣山荘〉と〈水晶小屋〉を約20年にわたって運営してきた「山の人」だ。荒廃していた登山道・伊藤新道の復興に尽力するほか、長野県大町市にブックカフェ〈三俣山荘図書室〉をオープンするなど、山を起点としたプロジェクトをいくつも手がけてきた。
「山小屋オーナーとして登山者を迎えるうちに気づいたのは、登山道の整備や物資の補給コスト、麓の街との交通の不便さといった多くの課題でした。このままでは山小屋は経営難に陥り、山は荒廃してしまう。自分には何ができるかを考えました」
山小屋の運営サポートや環境保全活動を担う「山と人と街プロジェクト」を企画、登山の拠点となる大町市の活性化にも力を入れるなど、多岐にわたる活動を展開。2024年9月には、春先に起こった落石による通行止めで影響を受けた山荘の救済と道路整備を目的に、チャリティーイベント「URAGIN」を開催。物販やトークイベントを通じて登山者が地域に貢献できる仕組みをつくった。「山小屋だけでは小さな力しか生み出せません。アウトドア用品メーカー、地域や国立公園を管轄する行政、そして登山者を巻き込んで、経済と文化を盛り上げていきたいんです」
伊藤さんにとって、山荘で過ごす朝は忘れられない日常のワンシーンだ。
「朝4時に起きて朝食の準備を始めます。お客さんを見送った8時頃にやっと落ち着き、槍ヶ岳を眺めながらコーヒーを飲む時間が好きでしたね」
ささやかだけどかけがえのない時間のために、今日も伊藤さんは山と街のあいだを奔走する。
肌寒い朝に。〈Rab〉のおすすめアイテム
起毛素材を裏地に使用したソフトシェルジャケット。保温力と通気性の高い生地で、常に快適な着用感を提供する。「着た瞬間に暖かさを感じます。冷え込む山小屋の朝にはぴったりな防寒着です」
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