どうしてこんな進化をした!?
不思議な海の生き物たち

どうしてこんな進化をした!?
不思議な海の生き物たち

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2024.09.19

未来永劫にわたって、その種を絶やさぬよう行なわれる生物の進化。どんな生物も長いときをかけて変貌していくが、海の中にもまさかの進化を遂げた種が! 突飛な力を手に入れた生き物を見ていこう。

TAKAMASA KUJIRAI

進化とは「世代を超えて伝わる変化」と言ったのは、「進化論」で有名なチャールズ・ダーウィンだ。ごく稀に起きる遺伝的変異が、自然選択によって何世代もかけて受け継がれ、増加・固定化した結果。特別な目的があるわけでもなく、子孫を残しつづけることに有利だったというわけだ。

そのため似たような環境に生息する生物には、別の種であっても同じような変化が起きることが多い(収斂進化)。光のない深海に視力を失った生き物が多いことや、哺乳類であるイルカと魚類のサメが似た体形をしていることは、いい例だ。

しかし、生物そのものが多様であるように、進化もさまざま。結果的に環境適応できればいいのであって、独自の進化をする生物も少なくない。

オスに胎盤や陣痛があるジェンダーレス生物

<p>オスが受精卵や稚魚を預かり、子育てする生き物はいるが、タツノオトシゴもその一種。しかも、メスから卵を預かる育児囊は、それを通じて酸素や栄養を受精卵に送り込む、いわば胎盤の役割まで果たしている。さらに”出産”の際には、陣痛もあるそう。</p>
<p>©︎Bevis Chin</p>

1.タツノオトシゴ

オスが受精卵や稚魚を預かり、子育てする生き物はいるが、タツノオトシゴもその一種。しかも、メスから卵を預かる育児囊は、それを通じて酸素や栄養を受精卵に送り込む、いわば胎盤の役割まで果たしている。さらに”出産”の際には、陣痛もあるそう。

©︎Bevis Chin

死の概念に抗う不思議な究極生物

<p>クラゲは通常、受精卵から「プラヌラ」や「ポリプ」といった幼生期をへて、成長し死ぬ。しかし、ベニクラゲは死にかけるとポリプの状態に戻り、再び成長するため”不老不死”といわれている。何度も繰り返すとその力はなくなるが、個体によっては10回以上の”若返り”が可能とされる。</p>
<p>©︎Tony Wills</p>

2.ベニクラゲ

クラゲは通常、受精卵から「プラヌラ」や「ポリプ」といった幼生期をへて、成長し死ぬ。しかし、ベニクラゲは死にかけるとポリプの状態に戻り、再び成長するため”不老不死”といわれている。何度も繰り返すとその力はなくなるが、個体によっては10回以上の”若返り”が可能とされる。

©︎Tony Wills

ディズニーも納得の愛らしい見た目

<p>ディズニーキャラクターの象・ダンボにちなんで名付けられた、深海に棲むジュウモンジダコ属。マダコなどは漏斗から水を吹き出して後ろに進むが、こちらは目の上についた耳のようなヒレを動かし泳ぐ。ヒレの形状やサイズは種類によって変わるが、どれも体と比較して大きめ。</p>
<p>©︎NOAA Ocean Exploraion</p>

3.ダンボ・オクトパス

ディズニーキャラクターの象・ダンボにちなんで名付けられた、深海に棲むジュウモンジダコ属。マダコなどは漏斗から水を吹き出して後ろに進むが、こちらは目の上についた耳のようなヒレを動かし泳ぐ。ヒレの形状やサイズは種類によって変わるが、どれも体と比較して大きめ。

©︎NOAA Ocean Exploraion

透明な頭に緑の目......謎すぎる深海魚

<p>透明な生き物は稀に存在するが、デメニギスは頭部だけが透明で、内部には真上を見上げる緑の眼球が存在。その眼球はチューブ状になっていて望遠鏡のように伸びるだけでなく、特殊なフィルターの役目を果たし、光に紛れて身を隠す魚を発見できる能力も備わっている。</p>
<p>©︎3dsam79</p>
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4.デメニギス

透明な生き物は稀に存在するが、デメニギスは頭部だけが透明で、内部には真上を見上げる緑の眼球が存在。その眼球はチューブ状になっていて望遠鏡のように伸びるだけでなく、特殊なフィルターの役目を果たし、光に紛れて身を隠す魚を発見できる能力も備わっている。

©︎3dsam79

 

その習性は必要? 逆立ち泳ぎが得意な魚

<p>ストローのような口や、鱗がなく、甲板(こうはん)という硬い板状の組織で覆われた体も特徴的だが、何よりも不思議なのは逆立ちして泳いでいること。エサのプランクトンを探すのに効率的だったり、ウニのトゲに紛れて隠れたりするらしいが、危険が迫るとふつうに横になって逃げる。</p>
<p>©︎Bernard DUPONT</p>

5.ヘコアユ

ストローのような口や、鱗がなく、甲板(こうはん)という硬い板状の組織で覆われた体も特徴的だが、何よりも不思議なのは逆立ちして泳いでいること。エサのプランクトンを探すのに効率的だったり、ウニのトゲに紛れて隠れたりするらしいが、危険が迫るとふつうに横になって逃げる。

©︎Bernard DUPONT

海のグルメを楽しむ唯一のトカゲ

<p>通常のイグアナは陸で生活を送るが、ガラパゴス諸島の固有種であるウミイグアナは海が食卓。トカゲ類で唯一、木の実や草ではなく海藻を求め、海へ潜水して採食する。海藻によって溜まっていく塩分も、鼻孔の塩類腺から排出できる仕組みになっている。</p>
<p>©︎Richard Droker</p>

6.ウミイグアナ

通常のイグアナは陸で生活を送るが、ガラパゴス諸島の固有種であるウミイグアナは海が食卓。トカゲ類で唯一、木の実や草ではなく海藻を求め、海へ潜水して採食する。海藻によって溜まっていく塩分も、鼻孔の塩類腺から排出できる仕組みになっている。

©︎Richard Droker

長く伸びた歯が自慢、極北に生きる珍獣

<p>イッカクといえば長い角が特徴だが、実はこれは犬歯。オスの2本の犬歯のうち、1本は上アゴを突き破り、最大3mにまで成長するが、稀にどちらも伸びることも。多数の神経が集まり、センサー機能を有しているといわれているが、この歯で魚を叩いて捕食することもある。</p>
<p>©︎Dotted Yeti</p>

7.イッカク

イッカクといえば長い角が特徴だが、実はこれは犬歯。オスの2本の犬歯のうち、1本は上アゴを突き破り、最大3mにまで成長するが、稀にどちらも伸びることも。多数の神経が集まり、センサー機能を有しているといわれているが、この歯で魚を叩いて捕食することもある。

©︎Dotted Yeti

回避は不可能? 電気で攻撃する怪魚

<p>体内に発電器官をもち、およそ60Vほどの電気を生み出すエイ。ふだんは砂泥の中に潜み、エサとなる魚を見つけると電気ショックを与え、麻痺させて捕食。危険が及んだ際には逃避用にもなる。近年は、その機能を利用した発電システムも研究されている。</p>
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<p>©︎Philippe Guillaume</p>

8.シビレエイ

体内に発電器官をもち、およそ60Vほどの電気を生み出すエイ。ふだんは砂泥の中に潜み、エサとなる魚を見つけると電気ショックを与え、麻痺させて捕食。危険が及んだ際には逃避用にもなる。近年は、その機能を利用した発電システムも研究されている。

 

©︎Philippe Guillaume

ここまで挙げた生物の他にも、粘膜の”寝袋”によって就寝中に寄生虫から身を守るハゲブダイや、その毒を威嚇に利用するため常にイソギンチャクを両手にもつキンチャクガニなど、「違う方法もあっただろ!」と非効率に思える例も数なくない。しかし、それは人間目線で感じること。あくまで、その環境に適応できていれば問題ないのだ。

近年の線虫の研究では、学習行動も子孫に遺伝することが判明した。今も未知に溢れる海の世界。人間からすれば想像もできない進化を遂げる生物がまだまだ発見されるかもしれない。

TRANSIT55号「未来に残したい海の楽園へ」 古今東西、海を舞台にさまざまな文化が育まれ、豊かな自然環境はもちろんのこと、長い歴史で秘めてきたロマンなど、さまざまな海からのギフトに、人びとは精神的にも肉体的にも恩恵を受けてきました。一方で、多様な生物が支えあって暮らしている海では、気候変動や人間の活動による海洋汚染をはじめ海をめぐる環境も変化し、問題が顕在化しています。世界各地の海への旅を想像しながら、未来へ残したい海に思いをはせる、新リゾート案内です。

TRANSIT55号「未来に残したい海の楽園へ」

特集内容:オーストラリア、マレーシア、ハワイ、西表島、スペイン、アメリカ、北極・南極、高知、海の楽園ガイド、海の生き物図鑑ポスター......etc. 定価:1,800円 + tax

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Kei Taniguchi

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