西オーストラリア州の街パースは、近代的で美しい街並みと、息を呑むような大自然のバランスが絶妙だ。オシャレな街歩きとおいしいフードカルチャー、地球を感じる絶景の冒険にミステリアスな動植物などなど、旅で欲しいものを贅沢にいいとこ取りできる。
活気あふれる港町シドニーやグレートバリアリーフが見られるケアンズもいいけれど、年々注目が高まるオーストラリア大陸西海岸のパースへ飛んだ。見どころたっぷりのパースのなかでもマストでやりたいことを、10個挙げてみよう!
text & illustration & photography=AYAHA YAGUCH
cooperation=オーストラリア政府観光局, 西オーストラリア州政府観光局
イギリスの経済誌『エコノミスト』の「世界の住みやすい都市ランキング」ではつねに上位にランクインしていて、”世界一美しい”といわれる街、パース(Perth)。西オーストラリア州の州都であり、地中海性気候で一年を通して13〜25℃と温かく、カラッとして過ごしやすい。パースは晴天率が高く、まとまった雨が降る6〜7月(冬)を外せば、おおむね晴れている。ちなみに、2023年秋からは直行便も飛ぶので、旅先としてこれからますます注目が集まる都市なのだ。
なによりドキドキするのは、この”世界一美しい街”には、ほかにも世界No.1として推したくなるポイントがたくさんあること。まずはパースの街角から、この街でしたいことを見ていこう。
オーストラリアのコーヒー事情はおもしろい。独自のコーヒーカルチャーがすでに根を張っていて、アメリカ発の大手コーヒーチェーンが見向きもされずに、すごすごと撤退した。そんな国だから、コーヒーにはちょっとうるさい。これはぜひ、オーストラリアのコーヒーを飲んでみたい。というわけで、「パースでおいしいのはココ!」と、地元の人たちに口々に教えられた〈コモ・ザ・トレジャリー(COMO The Treasury)〉というホテルの中にある〈テレグラム・コーヒー(TELEGRAM COFFEEE)〉へ早速行ってみることに。
現地では、日本でお馴染みのブラックコーヒーは「ロングブラック」と頼もう。そのミルク入りは「フラットホワイト」。うん、たしかに濃厚でウマイ。コーヒー片手に”コモブラ”して、街へ繰り出そう。
パースがすばらしいのは、歩くだけで満たされること。風が光っているようにさえ見える。初訪問なら、小さなお店がひしめく〈ヘイストリートモール(Hay Street Mall)〉と、パースでもっとも賑やかな〈マレーストリートモール(Murray Street Mall)〉は必見だ。
にぎやかな〈ヘイストリートモール〉を歩いていくと、立ち止まって上の方を見ている人びとの姿があった。ちょうどからくり時計が動くところだったようだ。その時計の下から、秘密めいた石畳の小道が伸びていく。異次元のアーケード、ロンドンコート(London Court)だ。
足を踏み入れると、書店、両替ショップ、ギフトショップ、アイスクリーム店など、かわいい路面店が左右に立ち並ぶ。かつてイギリスからの多くの移民が開拓にあたったオーストラリア。彼らが懐かしい祖国を思い、ロンドンを模してつくりはじめたのが始まりだとか。ロンドンの雰囲気を感じるせいか、ミステリアスなものが買いたくなる。老夫婦が並んで食べているミント色のアイスにもたぶん魔法がかかっている。
すぐそこに大自然が広がっているのもパースの魅力だ。パース市内から電車で15分で海に出る。1kmにわたって純白の砂が広がる極上のコテスロービーチ(Cottesloe Beach)だ。地元民に溺愛されている理由は、砂を踏んだだけでわかる。シルクみたい。足がとけそう。
ちなみに、私が訪れた3月はちょうど世界最大の彫刻展「スカルプチャー・バイ・ザ・シー(Sculpture by the Sea)」の真っ最中だった! 毎年、日本やアメリカなど最大15カ国から70人以上のアーティストを招聘し、約20万人が訪れる無料イベント。大自然の中に点在するダイナミックな美術品のまわりにはガラスケースや垣根はなく、実態のあるアート作品に触れたり潜りこんだりして体感できる。そこがすごくいい。
動物好きな人にとって、オーストラリアはこの世のパラダイスだ。珍しい固有種の魅力を全身で浴びるように堪能したい、そんな願いを120%叶えてくれる動物園が、パース市内からバスで30分の〈カバシャム・ワイルドライフ・パーク(Caversham Wildlife Park)〉だ。
200種以上のオーストラリア在住の動物が大集合していて、コアラやウォンバットと記念撮影や、カンガルーのいる敷地の中に入るといったユニークな体験ができ、牧羊犬がお手伝いする羊の毛刈りショーなどもあっておもしろい。
生き物は動くからかわいいのであって、動かないものはどうだろうと思ったら、植物分野でもヤバすぎた。オーストラリアは油断がならない。パースは多彩なワイルドフラワーでも有名な”花の都”で、とくに8〜11月の春は3000種もの鮮やかな花で大地が埋めつくされるという。そんなパースで、一年中、花を存分に楽しめるのが〈キングスパーク(Kings Park)〉のボタニックガーデン(植物園)だ。
歩き出すと、日本のおしゃれなフラワーショップで見たことのある高級植物があちこちに自生していて感動する。なかでもおもしろかったのは、コアラの好物としても知られる「ユーカリ」。なんと数百万年も前からこの地に生えていて、600種類もあるらしい! そのアロマだろうか、ユーカリが生えている森を歩くと空気がたまらなくいい香りがするのだ。
カンガルーの前足にそっくりな「カンガルーポー」(珍妙なかたちだ)や、山火事に遭遇してはじめて花を咲かせる「グラスツリー」(焦げてる!)など、ミステリアスな植物にもたくさん出会えた。まさしく知の遊園地です。
パースから電車かバスで30分ほどの港町、フリーマントル(Fremantle)は、ローカルが「ここは”映え”の街! 結婚式の写真を撮る人も多いの」と胸を張るとおり、昔ながらのライムストーン(石灰岩)でできた白亜の歴史的な建物が立ち並ぶ。地元民いわく”世界一、19世紀っぽい港町”なんだそう。
そんなフリーマントルの目玉は、金・土・日曜に開催される「フリーマントルマーケット」。個人店も多く、一期一会の宝物をハンティングするのにピッタリの場所だ。大きく「雑貨」と「食料品」のジャンルに分かれて150ものお店がひしめく。
鉱石や雑貨、ブーメラン、洋服、パン、ハニーケーキ、アイスクリーム、ナッツにワインにビールなど、その場で食べたり飲んだりしながら練り歩こう。驚いたのは、1豪ドルのような少額でもクレジットカードで決済できたこと(とってもラク)。1円も両替せずにVISAカード1枚で入国してしまったが、全然困らなかった。このときばかりは財布のヒモを緩めて、お買い物の迷宮を満喫して!
西オーストラリア州に来たら絶対に詣でるべき島、それがロットネスト島(Rottnest Island)。フェリーで行くのが一般的で、パース市内からは約1時間半、フリーマントルからは約30分で到着だ。世界中の人がここを目指す理由、それは……キュートな珍獣「クオッカ」に会える唯一の島だから!
美しい宝石のような島でたっぷりと自然のごはんを食べ、のびのびと暮らしている様子から、”世界一幸せな動物”と呼ばれている有袋類だ。笑っているような顔が印象的で、あのピカチュウのモデルになったとか、ならなかったとか、そんな噂もあるほどのかわいさ。小さめのネコくらいのサイズ感だ。よく見るとみんな顔が違う!
天敵のいない島で保護されているクオッカは警戒心が薄く、人懐っこい。カメラを向けると近づいてきて、一緒にセルフィーも撮ってくれる。自撮り棒を持参して、下のアングルから撮るのがオススメだ。
クオッカたちは夜行性で、日中はちょっと眠そうにしている。せっかく島を訪れるなら、思いきって1泊して、夕方から元気いっぱいになるクオッカたちと心ゆくまでランデブーしたい。島には高級ホテルからドミトリーまで幅広い4つのホテルがあって、オススメはグランピングタイプの〈ディスカバリー・ロットネスト・アイランド(Discovery Rottnest Island)〉だ。
夕方になると、お目めぱっちりの元気なクオッカが目の前にも、足元にも、ヒョコヒョコと顔を出し始める。翌朝はレンタル自転車で島を駆け抜けるのも最高だし、冬でも水温が高いからビーチで泳ぐのもあり。1泊するだけで日帰りの10倍の充実感がある。
ちなみに、ここは世界的なエコリゾートの成功例として知られる島でもある。風力発電で島内電力の約40%を賄っていたり、本格的なリサイクルを実施していたりと、環境保護と観光業を両立させる工夫があって学べる点も多いのだ。
パースでの夜遊びは、オーストラリアの大手カジノ企業、クラウン(Crown)系列の3つのホテルが集まった複合商業施設〈クラウンパース(Crown Perth)〉が楽しい。ここにはホテル棟のほか、レストランやショッピングゾーン、24時間営業のカジノがある。
カジノに入店してみると、明るいムードで活気があり、定番のルーレットではわずか2.5豪ドルから遊べるテーブルが大人気だった。20豪ドルで挑戦して1時間ほど熱中し、(全額すっちゃったけど)大満足。ちなみにこのカジノではドレスコードがあって、男性はシャツと長ズボン、女性はワンピースがベター(Tシャツ、ジーンズ、サンダルなどはNG)。ぜひドレスアップして繰り出そう。
駆け足でお伝えした「パースでしたい10のこと」。ほかにもたくさん見どころがあるので、あなたの好きなパースを見つけにいってみてください!
気候:南半球に位置するパースは、2月が真夏、6〜7月が冬にあたる。ただ、地中海性気候で冬でも最低気温は7℃程度と過ごしやすい。晴天をのぞむなら12~3月頃の観光がオススメ。
服装:日差しが強いため、サングラスと日焼け止め、帽子をお忘れなく。夜は冷えるのでカーディガンがあると便利。
時差:日本の−1時間。
アクセス:日本・パース間のを直行便は運休中だが、2023年秋から復旧する。その場合、東京からの平均飛行時間は10時間ほど。
通貨:オーストラリアドル(1豪ドル=90円:2023年5月現在)。クレジットカードでの決済が盛んで現地通貨への両替の必要がないほど。
その他:入国時はオンラインでETAS(電子入国認可システム)に登録する必要がある。
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