青い海あり、高い山あり、荒涼たる砂漠あり......。地形も気候も地域によってさまざまな表情を見せるメキシコ。ここではそんなカラフルなメキシコの基礎情報をお伝えします。
text=TRANSIT / illustration=YUKI MAEDA
東西を山脈に挟まれ、雄大な砂漠が広がる。
西シエラ・マドレ山脈&東シエラ・マドレ山脈という2つの大山脈に挟まれるようにして、チワワ砂漠が存在する北部。銀や銅など、メキシコ経済を支える鉱山も多い。乾燥し暑い日が多いが、バハ・カルフォルニア半島周辺のソノラ砂漠に比べると、標高が高いことなどから比較的気温は涼しめで過ごしやすい。ただしアメリカ国境が近いことからマフィアの抗争や麻薬密売、不法移民なども多く、治安の面で懸念が残る。
優雅なリゾート観光&テキーラ生産が盛ん。
古くから交易の拠点として栄えた歴史をもつ太平洋沿岸地域。サバナ気候に属するため、年間を通じて気候は温暖で、メキシコのリゾート地の草分けでもあるアカプルコなどの人気リゾートが点在。今でもメキシコ国内はもちろん各国から多くの観光客が訪れる。海沿いに位置し、第二の都市グアラダハラを擁するハリスコ州は、テキーラの名前の由来にもなったテキーラ村があり、原料となるアガベアスルの生産が盛ん。
文明の面影残る、過ごしやすい気候の大都市圏。
首都メキシコシティがあるのは、高原地帯が広がる中央部。緯度こそ低いが標高が高いため(メキシコシティ周辺は約2300m)、年間を通して気温の変化が少なめ。夏季は平均気温22℃前後、冬季でも平均気温は11~13℃とかなり過ごしやすい。高原地帯の南部にはメキシコ最高峰オリサバ山など5000m級の山々が連なり、豊かな水をもたらしている。また古くからアステカ帝国やテオティワカン文明などが栄え、古代遺跡群も豊富に残る。
山地に根づく先住民の暮らし。
自然豊かな山間に、数々の先住民が暮らしている地域。とくにオアハカ州は人口の4割近くがサポテカ、ミステカなど16の先住民といわれ、週末市場では伝統工芸品などが並ぶ。オアハカ周辺は渓谷地帯(バジェス・セントラレス)に位置し、年間を通して乾燥しているが温暖。ただし寒暖差が大きいので、朝晩は冷え込むことも。渓谷を越え東へ向かうと、次第にジャングルに覆われ、チアパス州などコーヒー生産が盛んなエリアが見られる。グアテマラ国境もすぐ近くだ。
北部は砂漠、南部は休暇にぴったりなビーチ。
南北に約1700㎞におよぶ細長い半島であるバハ・カリフォルニア。北部は乾燥したソノラ砂漠が広がる一方、南部は豪奢なリゾート地として開発が進む。とくに南端部のロス・カボスは、年間平均気温が26℃、かつ1年のうち350日以上が晴天という気候のよさ、そして最大の都市ティファナまでロサンゼルスから車で3時間というアクセスのよさから、アメリカ人観光客がひっきりなしに訪れる。また、半島近くのコルテス海は、クジラやイルカなど希少な海の生き物たちのすみかとなっている。
神秘的なジャングルに遺跡、美しいカリブ海まで。
南部に突き出るような形のユカタン半島は、広大な平野を密林に覆われ、チチェン・イツァをはじめとするマヤ遺跡が数多く存在する。また、セノーテと呼ばれる石灰岩層が侵食されてできた地底の泉には、固有種を含むユニークな熱帯生物が生息しており、神秘的な光景も。一方、メキシコ湾とカリブ海に面した地域は白い砂浜のビーチに囲まれ、とくにカンクンは屈指のリゾート地として知られる。密林部も海岸沿いも、亜熱帯性気候なので一年中気温は高め。
TRANSIT本誌ではここで紹介したメキシコの基礎情報のみならず、マヤやアステカといった数多の古代文明の秘密、タコスやメスカルなどの魅惑の食文化、独自の死生観や信仰心が込められたフィエスタなど、メキシカンカルチャーを大特集。つづきはこちらから!⏬