雪国新潟のガストロノミーを満喫する旅へ

連載:47都道府県ローカルのすゝめ|新潟県vol.2

雪国新潟のガストロノミーを満喫する旅へ

People :新潟県

TRAVEL&EAT

2025.01.10

7 min read

北は北海道から、南は沖縄まで、ひとくちに日本といっても、食べ物、お祭、習慣、自然が織りなす景色まで個性はさまざま。その土地ならではの愉しみ方は、その土地の人に訊くのが一番!そんな日本各地の地元ネタを集めたのが、この「47都道府県ローカルのすゝめ」です。

新潟県のvol.2では、雪国ならではの食について。教えてくれたのは、新潟市出身の新潟県観光協会の渡邉紗生さん!

Text:Saki Watanabe Special Thanks:公益社団法人新潟県観光協会

雪国新潟へようきなった!(新潟県の方言で「ようこそ」の意味)
みなさんご存じのとおり、新潟県は日本有数の豪雪地域です。なかでもひときわ雪深い魚沼エリアでは、1年の約半分もの間、雪とともに暮らします。

雪国というと、どのようなイメージをもちますか?
「生活が大変そう」「暮らしにくそう…」そのような声が聞かれるかもしれません。
たしかに雪国ならではの苦労もありますが、それ以上に雪がもたらすたくさんの恩恵があり、雪国で育まれた貴重な食文化があり、春の訪れへの喜びがあります。

樹齢約100年のブナの木が生い茂る「美人林」。立ち姿が美しいブナ林の幻想的な世界を楽しめる。

今回は、雪国新潟、魚沼エリアの「食文化」にフォーカスした旅をご提案します。
この記事を読んだあと、あなたもきっと雪国の奥ゆかしさを知り、その食文化を体感してみたくなるはず。
 
五感でめぐるガストロノミー(美食学)の旅へ、さあ出かけましょう。

マ・ヤンソン / MADアーキテクツ「Tunnel of Light」(大地の芸術祭作品)
日本三大峡谷の一つに数えられている「清津峡(きよつきょう)」。水鏡に映る水墨画のような世界はまさに絶景。

雪国で育まれた貴重な食文化とは?

新潟県のなかでもトップクラスの積雪量を誇る魚沼エリアでは、毎年冬の時期になると、あたり一面白銀の世界が広がります。

冬に降る大量の雪は、春になると地層深くにゆっくりと浸透し、この地域に豊富な水をもたらします。その清冽な水は川に流れ込み、土壌を潤し、日本一おいしいお米を育てるのです。魚沼産コシヒカリに代表されるお米は、もっちりとしていて独特の甘みがあり、一度食べたら忘れられない最高の味です。

そして豊富な雪解け水は、うまい日本酒を生みだします。
新潟県は酒蔵が89蔵もある日本一の酒どころ。県内各地で多種多様な酒づくりが行われています。

ほかにもミネラル豊富な雪解け水が作る最良の漁場や、天然の冷蔵庫「雪室」で甘みと旨みを蓄えた雪室野菜など、雪はたくさんの恩恵をもたらしており、まさに雪が新潟の食文化をつくっているのです。
 
また、1年の約半分もの間を雪とともに暮らす環境は、この土地に保存食や発酵食品という独特の食文化を生み出しました。雪国の人びとは、春の山菜が収穫される時季から、冬に食べる保存食づくりを始めます。食物を保存して長い冬を越す工夫が、自然を活かし、自然と共生する独特の食文化を育んでいるのです。

新潟ガストロノミーアワードのこと

そんな素晴らしい食文化が軒を連ねる新潟県では、日本有数の食文化県であることを世界へアピールするため、「新潟ガストロノミーアワード」を実施しています。

「新潟ガストロノミーアワード」とは、地域の風土、歴史や文化を料理に表現する「ローカル・ガストロノミー」の理念を体現し、地域社会との関わりに積極的な新潟県内の飲食店等を発掘して表彰する取り組みです。
 
県内飲食店、旅館・ホテル、特産品の各部門で、県外トップシェフやジャーナリストが、県内の雑誌編集者とともに審査・表彰し、新潟が誇る「食」を国内外に発信します。

このアワードで発掘した料理店では、その土地の風土や文化を五感で感じることができ、その料理を食べるためだけでも新潟へ訪れる十分な理由となります。
料理が生まれた背景を感じながら、その土地の食材や食文化を理解した料理人たちの渾身の一皿を味わってみてくださいね。

ここからは、雪深い魚沼エリアのアワード受賞店を数店舗ご紹介します!

審査員特別賞 山の麓のそばと山菜がおいしい〈八海山 宮野屋〉

先代から受け継いだ山菜の保存食や郷土の風味、蕎麦の味わいを日々進化させ、蕎麦店のイメージを凌駕する食体験ができる、新潟屈指の名店。
海藻の「フノリ」と山菜の「オヤマボクチ」をつなぎに使った田舎そばは、つるっと喉越しよく、ほのかな潮の香りが上品な味わいです。

霊峰・八海山の登山口でもある八海山尊神社に隣接しており、その味が評判を呼び多くの人が訪れます。

山菜の盛り合わせでは、木の芽、ゼンマイ、ワラビなど種類豊富で繊細な雪国の山菜料理が楽しめますよ。

Information

八海山 宮野屋

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Chef's Choice賞 古民家で田舎料理を〈欅苑〉

明治時代初期に建てられた母家は、雪国の典型的な茅葺屋根の田舎屋造りで、その雰囲気だけでも味わい深さを感じられます。建物の裏手にそびえたつ樹齢約1500年の欅の木が店名の由来です。

お料理は、地元で採れた野菜や山菜が中心。囲炉裏で焼いたアユやイワナ、自家製の魚沼産コシヒカリなどと一緒に、季節の田舎料理のコースが味わえます。

タイプスリップしたような雰囲気のなか、風情のある庭を眺めながら、豊かな時間を過ごしてみてくださいね。

特産品部門受賞 地酒で仕込んだ〈今成漬物店〉の山家漬(やまがづけ)

今成漬物店の「山家漬」は新潟土産にぴったり。厳選された地野菜や山菜を、地元の銘酒「八海山」の酒粕で漬け込んだ風味豊かな粕漬けです。

200年以上前に建てられた蔵で、1年半ほど熟成・発酵させて味を整えており、発酵独特の豊かな風味と香りをもつ伝統的な味わいを今に伝えています。

創業は江戸時代中期にまでさかのぼり、正岡子規をはじめとして、高浜虚子、北原白秋、坂口安吾、会津八一など多くの文人がその漬物の美味しさを絶賛しました。
先人の知恵が生み出した雪国の保存文化を、ぜひご堪能ください。

魅力あふれる食文化を満喫していただくなかで、きっとたくさんの発見があり、雪国新潟が大好きになるはず。
おいしい料理でじょんのび(新潟県の方言で「ゆっくりと」の意味)過ごしてくださいね。

稲藁(いなわら)を使ったさまざまな藁細工。昔は雪に覆われる冬の期間に、家族総出でつくっていました。

新潟県をもっと知りたくなったら!

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Cheng Chung Yao

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