国名:ロシア連邦
建国年:1991年
面積:約1,710万km²
人口:1億441万人(世界銀行調べ、2020年)
通貨:ルーブル(1RUB≒1.10円、2022年3月)
宗教:ロシア正教、イスラーム教、仏教、ユダヤ教など
公用語:ロシア語(インド・ヨーロッパ語族スラブ語群東スラブ語)
文字:キリル文字
2022年2月末に起きたウクライナ軍事侵攻で、その一挙手一投足に注目があつまるロシア。
ユーラシア大陸のほとんどをカバーする世界最大の国、アジアに一番近いヨーロッパ、ロシアと日本の間にある北方領土問題......。ロシアと聞いて思い浮かべるいくつかのイメージはあるけれど、日本の"お隣"であるにもかかわらず、どうも謎めいた印象も強い。それは広い土地ゆえかもしれないし、重なり合った人種が原因かもしれない。
数字が示すデータから、いま一度、ニュートラルな視点でロシアを眺めてみた。
Text : TRANSIT
※この記事はTRANSIT27号「美しきロシアとバルトの国々」から再編集したものです。
国名:ロシア連邦
建国年:1991年
面積:約1,710万km²
人口:1億441万人(世界銀行調べ、2020年)
通貨:ルーブル(1RUB≒1.10円、2022年3月)
宗教:ロシア正教、イスラーム教、仏教、ユダヤ教など
公用語:ロシア語(インド・ヨーロッパ語族スラブ語群東スラブ語)
文字:キリル文字
「こんにちは」……Здравствуйте! (ズドラーストヴィチェ)
「さようなら」……До свидания(ダスヴィダーニャ)
「ありがとう」……Спасибо(スパシーバ)
「ごめんなさい」……Извините(イズヴィニーチェ)
ロシアはどんな国か? という問いに、「世界一大きな国」と答える人も多いかもしれない。約1710万㎢の国土面積は、地球上の陸地の11%以上、居住地域では8分の1を占める。日本のおよそ45倍の広さがあり、ロシアにつづいて国土面積の大きいカナダ(約998万㎢)、アメリカ(約963万㎢)、中国(約960万㎢)と比べても、およそ1.7倍も広いことがわかる。東西に延びる国土は地球を半周する広がりをもち、国内で最大10時間の時差がある。そしてロシアは面積だけでなく、さまざまな点において桁外れのスケールをもっている。つづいて、そのほかのロシアがもつワールドレコードを見ていこう。
世界一の長さを誇るシベリア鉄道。西は首都モスクワから、東はシベリア南東部ウラジオストクまでを1本で結ぶ。1891年に建設を開始し、1904年日露戦争のさなかに全線が開通した。
ロシアはたしかにデカいが、国土にまんべんなく人が住んでいるわけではない。モスクワやサンクトペテルブルクのように都市が集まるのは、”ヨーロッパロシア”と呼ばれる西部のみ。ウラル山脈以東の中部、東部、そして極東部では街は点在し、残りはタイガ(森林)かツンドラ(凍原)だ。
都市間の距離は途方もないくらいに離れていて、隣町まで馬で2~3日、なんてことも昔はよくあった。20世紀初頭に開通したシベリア鉄道は、人びとを移動・運搬の苦悩から解放した大改革といえるだろう。
バイカル湖のほとり。海のように大きいが、波はほとんどない。
広さだけでなく「深さ」も桁外れだ。この数字は世界一の水深を誇る湖「バイカル湖」の深さ(資料によっては1,642m)。南北に680km、東西幅が約40〜50kmという巨大な面積も手伝って、貯水量も同じく世界最大。世界中の淡水の20%以上がバイカル湖にあるといわれる。水質もよく、世界最高の透明度を誇るといわれている。
ちなみに、人類が掘ったもっとも深い穴のワールドレコードもある。その深さ、なんと12,262m。地球の地殻深部を調べるべく行われた「コラ半島超深度掘削坑」にて、1989年に達成。地球物理学に有益な情報をもたらした。
観測史上、地球上で一番寒いとされているのが、南極大陸の−97.8℃。ただ、人が定住していてもっとも寒い場所となると、ロシア東部にあるサハ共和国オイミャコン地区が世界一となる。氷点下71.2℃という驚異的な気温は、1926年にオイミャコンで記録されたもの。以降、”人間の定住地のなか世界一寒い町”として知られるようになった。冬場は−50℃以下になる日も多い。寒すぎて凍結してしまうため水道はなく、代わりに給水車が巡回している。
ロシアは世界一の森林面積をもっていて、その広さはなんと地球上の森林面積の4分の1にも相当する。針葉樹林の57%以上がロシアに集まっている計算になる。比較的原生のまま残っているのも世界的に珍しい(2015年調べ)。
広大な自然は動物たちのゆりかごにもなっている。タイガ(森林)の生態系の頂点に君臨するネコ科最大のアムールタイガー、透明度の高いバイカル湖に生息していて大きな目が特徴のバイカルアザラシ、野生としても家畜としても身近なトナカイ。ソリを引いたり、毛皮は衣服に、肉は食料になったりと、北方民族には欠かせない存在。
途方もないスケールをもちながら、厳しい自然によって閉ざされた環境ゆえ、地域ごとの個性はより色濃いものになった。そして「自ら開拓したからこそ」の領土意識は、昔も今も紛争や軋轢を生み出してきた。植生や生態系、街並みや産業、ひいてはそこに順応していく人間まで、まるで別々の国のように異なる街が、”ひとつづきの地”にある。それが世にも不思議な国・ロシアなのだ。
数字からみたロシアの姿を駆け足で紹介したけれど、ほかにもトルストイやドストエフスキーやチェーホフを代表する深淵なるロシア文学の世界があったり、マトリョーシカのような優れた民藝があったり、はたまたチェブラーシカのような愛すべきキャラクターがいたりと、その文化もなかなかに奥深い。
広大で複雑な大国ロシア。そのアウトラインに少しでも触れることができただろうか?