TRANSIT54号『不思議で尊い世界の聖地へ』の「世界五大宗教と聖地」と題した企画では、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム、ヒンドゥー教、仏教の5つの宗教を、それぞれ比較してまとめました。 ここでは、世界でもっとも古い一神教のひとつ、ユダヤ教の基本情報を駆け足で紹介していきましょう。
Supervision:TESSYU SYAKU Text : TRANSIT
旧約聖書『創世記』によると、神はヘブライ人アブラハムを選んでカナンの地(現在のイスラエル)を与え、彼と彼の子孫の繁栄を約束したとされる。その約束通りアブラハムは息子イサクを授かり、イサクの子ヤコブは12人の子を授かった。これがイスラエル12部族の祖となり、ヤコブはイスラエルの祖に、ヤコブの4番目の子であるヨセフはユダヤ人の祖となった。ユダヤ教はこのように、神と人が約束を交わす宗教で、「人が窮地に陥ったときに神は救世主をつかわす」というメシア待望信仰がある。
ユダヤ教において、唯一絶対の神にして万物の創造主。その名を口にするのは畏れ多いと、我が主を意味する「アドナイ」と呼ぶのが礼儀。神は「YHVH」の4文字で記され、アドナイとはこれを子音のみ発音したときの読み方とされる。
積極的な布教は行わず、基本的に親から子へ受け継がれるかたちで存続する。そのためユダヤ教徒とユダヤ人の境は曖昧だったが、近年は両者を区別する見方もある。現在ではイスラエルをはじめ、アメリカやヨーロッパに多くの信者が暮らしている。
ユダヤ教の聖書はタナハと呼ばれ、キリスト教の旧約聖書に相当する。聖書は一つしかなく、新約聖書は含まれない。『タルムード』は口頭伝承の集大成で、みんなの先生的存在であるラビはこれを参考に聖書を講釈し、さまざまな指針を与える。
唯一絶対にして万物の創造主である神の存在を信じ、神が与えた律法を守ること、および律法に記された社会正義、他者への慈愛、倫理、道徳を神の意志としてとらえ、実践することが神への忠誠を表明すると考えられている。
紀元前10世紀、古代イスラエルのソロモン王が首都エルサレムに神殿を建立。神がモーセに与えた律法を刻む石板を収めた「契約の櫃」をここに安置した。古代の遺構はヘロデ大王時代に修築された神殿の西側の石垣(通称「嘆きの壁」)のみ。
宗教学者、僧侶
釈 徹宗(しゃく・てっしゅう)
浄土真宗本願寺派如来寺住職、相愛大学人文学部教授。著書に『ゼロからの宗教の授業』(東京書籍)、『宗教聖典を乱読する』(朝日新聞出版)など。共著に内田樹との『聖地巡礼』(東京書籍)シリーズがある。
浄土真宗本願寺派如来寺住職、相愛大学人文学部教授。著書に『ゼロからの宗教の授業』(東京書籍)、『宗教聖典を乱読する』(朝日新聞出版)など。共著に内田樹との『聖地巡礼』(東京書籍)シリーズがある。