今、どんな記事をつくってる? 週末はどこへ行ってた? 最近気になっていることは? などなど、TRANSIT編集部のオンオフの日々をお届けします。
現在、編集部は2026年3月発売のベトナム特集に向けて、現地で滞在制作中。ベトナムにいる間は、編集部日誌を毎日更新!
いよいよホーチミン班も帰国の日がやってきました。おいしいものやかわいいものに熱狂する女子旅を満喫したホーチミン班。自由経済が進んでいるホーチミンは賑やかでありながら、しかし社会主義国らしい一面もありました。話題はあっちこっちに飛びつつも、旅の総括を試みます。
Photo & Text:Haruka Ono(TRANSIT)
Index
13 min read
〜1月29日 20:30ホーチミン・タンソンニャット空港へ向かうタクシーにて 〜
小野
ベトナムの人は日々、近所の人とご飯食べて、助け合って、とくに滞在したAirbnbがあった辺りはそうかもしれない。
菅原
あのホーチミン1区の川沿いの地域はよかった。
小野
バックパッカー街になってるファングーラオ(Phạm Ngũ Lão)通りの南側あたり。ローカル色が強くて、たぶん貧しい人の多いエリアだったと思うんですけど、自分の半径10mくらいの人たちに気を配っているというか。家族だけじゃなくて近所の人やコミュニティも大事にしている感じがすごくある。
松本
貧しいってこと自体は改善されたほうがいいけど、そのなかにいる人たちが不幸な感じじゃないっていうか。食べられているっていうのもあると思います。(南部はメコンデルタがあり)地域が肥沃で(食糧が豊富)。
滞在していたエリアの朝の風景。
小野
そうそう、それは絶対ある。
松本
どんなに貧しくても食べられるっていうのは。60代の方に聞いたんですけど、ベトナム戦争の後とかに北部の人が南部の人のものをすごく盗んだんですって。
菅原・小野
へえーーー。
松本
少ない食糧のなかで生き延びるために貯蓄したり盗まざるを得なかった事情があって、だけど南の人はあるから貯蓄しないであるものはすぐシェアするっていうのを聞きました。
小野
Airbnbの周りでも足に障害がある人が朝からカラオケしてお金を集めてたんですけど、お金が入る。だからみんな周りの人、コミュニティを大事にするのかなっていう感じがしましたね。
菅原
たしかにあの辺りは、地域のコミュニティが成立している空気があったよね。
松本
隣に住む人が家の前で書道みたいなのをやってたのは、あれは商売なのか。
菅原
きっと内職だよね。
松本
でもやらなきゃいけない仕事でも、楽しみを見出してるように感じる。インタビューした人も、食べるためにジムの先生をやってるけど、楽しんでインスタとかに写真や動画をあげてたり。労働が義務っていうよりも、けっこう前向きに捉えてるような感じがする。
小野
今は経済が豊かになって、仕事がある。犯罪が起きるのは仕事がないときで、今は仕事があるから多分みんなおおらかにやっていけてるって、街の人から聞きました。あと社会主義の看板が街にいっぱいあるじゃないですか。その標語が多分「幸せのために働きましょう」みたいなことをいってるんでしょうね。そういうのに影響されてるかもしれないですよね。
〜1月29日21:30 川原田と合流、タンソンニャット空港 出発ゲートエリアのカフェにて〜
小野
(LINEグループの)アルバムありがとうございます。これめっちゃかっこいいですね、この写真。
夜のホーチミンをバイクで移動。
菅原
自分がさ、Grabのバイクに乗りながらこうやって写真撮れるようになるなんて。今日もバイク乗ってて思ったけど夜いいよね。
小野
夜のホーチミンいいですね。めっちゃ都会っていう感じがしますしね。
(しばらく写真を共有する時間がつづく)
菅原
2人(川原田・松本)は今回TRANSITとして行く海外は初めてだったけど、どうだった?
松本
やっぱり10日いると考える時間があるのがすごくいいなと思います。2泊3日くらいだとカルチャーショックを感じて帰っていくだけだけど、10日ぐらいあるともう少し深く考える時間がああったり、それからまた新しい情報が入ってきたりして、頭のなかが進んでいく感じがあります。
川原田
私はなんかすごい運に助けられた気がしてて。人との出会いがありがたいなって感じました。ホテル経由でドライバーさんを確保したときも、そのドライバーさんがめちゃくちゃいい人で、翻訳アプリ使いながら、「どこか見たいところがあったらどこでも」って言ってくれて。
みんな
めっちゃ優しい!
川原田
連れて行ってあげるよみたいな感じで。それで農作業してそうな田んぼとかを連れて行ってくれて、農家の方に「日本から来たから写真撮らせてあげて」って頼んでくれて。
菅原
優しいね。
松本
私も道端でおじさんに「ベトナムのトヨタで働いてたんだよ」って声かけられました。日本語が話せる方で、「近くにおいしいコーヒー豆屋があるんだけどコーヒーはもう買ったのか」って訊かれて、買ってないって言ったら後ろに乗れって言われて。バイクに乗せてもらって、コーヒー買いに行ったんですよ。
菅原
それはどの辺で声をかけられたの?
松本
タンディン市場の近くです。彼はたまご屋さんだったんですが、16時から仕事だからそれまで時間があるから、「スーパー行くか」とか「ホテルまで送ってく」みたいなことを言ってくれて、コーヒーを買った後にスーパーまで送ってってくれて。そこでバイバイ。すごい優しいおじさん。
菅原
すごい。もってるね。
松本
優しい人に出会いました。
川原田
ベトナムは優しい人も多いし、かわいい犬も多い。
みんな
(笑)
川原田
海外でこんなにこんなに豊富な種類の犬がいるのは珍しい気がする。文化にもよるのかな。中東では犬ってけっこう汚らしい感じで、猫はきれいめなペットとして扱われていた印象があって。
小野
おもしろい。そうなんだ。
川原田
ベトナムでは犬が大事にされてるというか。門の上に犬の像があって、調べてみたらシーサー的な守り神らしくて。犬の扱いがなんかちょっと珍しいなって思います。
菅原
お稲荷さんみたいな感じかな。
川原田
田舎や都会でも、いろんな種類の犬がいろんなとこにいる。そうそう仔犬もいっぱいいて。でもあのふわふわの猫たちもめっちゃかわいい。
菅原
あの猫もう一回会いたかったな。幻じゃないのかなっていう。
毎日違う服を着ていたおしゃれな犬。レイヤードも着こなす。
ふわふわの猫。
川原田
ありきたりな表現かもしれないけど、すごいエネルギーに満ちてる国だなって思いました。街なかのバイクがいっぱいいる雰囲気でも感じるし、サッカー観に行ったときに一番思ったかも。U23アジア杯の観戦記を編集部日誌にも書きましたけど。観客も若い人多かったし、試合の内容も相まって、これからどんどん成長していきたい意欲を感じる。
松本
社会主義なのに暮らしは逆に自由というか。街なかには国旗も多いし、社会主義っぽい看板もあるんですけど、スタバとかもあるのがすごい不思議。
菅原
ホーチミンのほうが外資が多いって聞いたな。スタバもマックも、日本の企業もあるし。きっとだいぶ違うだろうね。
高層ビルが林立するホーチミンの中心部。
日本の飲食チェーンも進出している。
川原田
ハノイにも行ってみたいなって思う。
菅原
とにかくカフェが多くない? 日本って少ないよね。カフェ。行列してるじゃん今。
松本
ネットで見た記事だと、ベトナムの人は家族で住む人が多いから一人の時間を過ごしたり、友だちと話すためにカフェに行くってあって。でも私が出会った人はけっこう一人暮らしの人が多くて。ちょっと母数が少ないので全体がかわからないけど。発展していくと一人暮らしが増えていくのかな。
小野
核家族化していくんだ。
松本
それもどうなんでしょうね。いいのか悪いのか。ホーチミンはそこまで社会主義が行き届かなかった地域だったのかも。
菅原
結構(ハノイから)離れてるからね。
小野
路上の商売の取締りはちょこちょこ見ましたけど、ハノイほど厳しくないのかな。
菅原
でも雑誌が本当に少なくて。書店に行ってきたんだけど、やっぱり店先に並んでいるのはほとんどが書籍で。パッケージとかプロダクトのデザインをしている人たちとちょっとだけお話しする機会があって。私たちは雑誌つくってるんです、こういう雑誌をホーチミンで買える場所はないですかって聞くと、「本当に困る質問で、すごい恥ずかしいんだけれどないんです」って。
小野
へぇー。
菅原
それが政府のせいとは彼らは言わないんだけど、やったとしても続かない、商売として成立させることが難しいって言ってたんだよね。でもちっちゃなZINEとかが売ってるスペースがあるはあるのね、ただそれが本当にちっちゃい。
川原田
ビジネスとしてそういう雑誌が(ない)。新聞とかもどんな感じなのかがすごい気になる。
菅原
あとやっぱりアーティストとしての写真家がヌード系の写真を出すのはベトナムではNGで。でも海外の出版社で出したって人はいた。
小野
やっぱり海外で(活動するんですね)。なかなかアートは育ちにくいですよね。
菅原
育ちにくいよねー。でもなんか不思議なの。中国はそれこそ言論統制めっちゃ厳しいじゃん、だけどいい映画監督とかいっぱいいるの。上映禁止とかになっても。ベトナムルーツのトラン・アン・ユン監督もいるけど、(フランス育ちだから)違うじゃん。ベトナムも頑張ってほしい。これからなのかもしれない。
川原田
経済的に発展したその先の段階ですね。(同じく社会主義の)キューバも雰囲気は明るくて、本当に気候と人びとの気質によって醸し出されてる明るさで。でもアメリカ資本とかが一切入ってないからスタバとか全然なくて、物も全然なかったりしたんですよね。だからベトナムが自由経済と両立してるのはすごい。
菅原
ホーチミンはブイビエン通りみたいに賑やかな道もあって。
観光客が集まり、クラブミュージックが轟音で鳴り響くブイビエン通り。バーの軒先では露出多めのダンサーがお立ち台で踊っている。
川原田
ほんと、えっ、ここ社会主義国なの?みたいな(笑)
菅原
性を売り物にしてる部分もあって……。
松本
外国人が相手っていう。
小野
ほんとにほんとに。外国人が求めるものを実直に提供しているだけな気がする。
菅原
街の人に聞いたのが、自分を撮影したくて自分でメイクさんを雇ったりするんだって。それで1800円くらい。
松本
安い、一般の人がプロのメイクを雇うんですね。
川原田
地方でも自撮り撮影してる人たくさんいました。
菅原
だから撮影してる人に優しいっていうかさ、みんな迷惑そうにしないし。ルールが(過剰に)ない気がするから、みんなちゃんと節度があって、そのなかでやってる。
松本
本当にそう思います。
菅原
ね。運転もしかり。こっちからバーって来ててさ、こっちからもヴァーーって来てさ、へぇ!?!?って……。車線ってないんですか?? みたいな。
小野
だから、ぱっと見はめっちゃカオスに見えるけど……
川原田・小野
実は秩序がある(笑)
菅原
私、今日、何回か危ないって思ったけど、まぁ大丈夫。
松本
それって押しつけられた秩序じゃなくて、自分たちでそうしたほうがいいと思うからやってる。その思考の流れが健全な気がする。みんなその場で判断して。日本だったら「そうであるべき」ことを気にして生きづらいみたいなのがある気がする。
小野
そう、だからイライラしてる人とか見ないし。
川原田
たしかに。
松本
イライラって他己責任じゃないですか。「自分がどうかするしかない」ってみんなが思ってるからイライラしないのかな。
菅原
本当に街なかで怒ってる人とかあんまり見なかったね。
川原田
クラクションも怒って鳴らしてるんじゃなくて、自分の存在を知らしめるために鳴らしてますもんね。
菅原
そうそう。危な!ってときにもさ、Grabバイクの人も車の運転手も平然としてるし、舌打ちとかもないし。
川原田
Grabさんざん使ったけど嫌な感じの人は一人もいなかった。
菅原
(イライラしないためには)気にしないってことかもね。人が何してるかとか。
川原田
それは絶対ありますよね。自分が自分のしたいように。今の話を聞いて思い出したのが、フォーもバインミーもベースはあるけど、香草入れたり、辛くしたりライムを絞ったり、全部自分の裁量でアレンジできて。みんな「自分はこういう味が好き」っていうのがあって、各々自分の好きにできるようにしてあるらしいです。だからこそ、みんなで食べるご飯が成り立つみたいな。
小野
どう思われるかとかあんま気にしない。だからあんな派手なドーボを着る。
「ドーボ」とは年配の女性がよく着ている、上下同じ柄のセットアップ。市場などでありとあらゆる柄が販売されている。ホーチミン班4名も購入。
菅原
そうだよねー。でもあれ着てみたらめっちゃ快適ー。
松本
いろんな柄があるからそれこそフォーじゃないけど、自分の好きなものを。あれも自己表現ですよね。
川原田
今日一緒に写真撮った人はチェックで、色違いが干してあって。
菅原
チェックが好きなんだぁー、内職してた彼女ね。
小野
働き者。あ、だから快適な服もイライラしない秘訣じゃないですか。
菅原
そうだあ。
川原田
ドーボで仕事をすればいい(笑)
小野
(笑)
松本
ちょっとまだまだ修行が足りないかも……。
川原田
リモートの日に下だけ履くとかから始めて。
菅原
でも確かにあそこでドーボを着ていたとき(※)に私は全然恥ずかしいっていう気持ちがなかった。
※Airbnbをチェックアウトする前、ドーボ着た4名で近所の方々と記念撮影をした。
松本
なかった!
小野
全然なかった(笑)
松本
ちょっと笑われてましたけど。
川原田
(笑)
菅原
彼らのなかに批判的な気持ちがないじゃん、だから全然、見ていいよ!って気持ちだった。
小野
なんか私はやっぱり……どうしてもこう、ツッコミ目線になってしまう。たとえばすごいところで寝てる人とか見て(心のなかで)突っ込んじゃう。そういう気持ちでカメラを向けてしまったり。ベトナムの人はそういうのがないのかな。
松本
道で寝てるおじさんとかもどうでもいい。確かに人に批判を向けないですよね
菅原
最初は結構呆れちゃったんだけどね。バイクの量を見て。大丈夫これ??って思っちゃったけど。私がかっこいいなって思ったのはGrabバイクにこうやって(横座り)乗ってるの。それはできなかった。できたかもね。今の私たちなら。
ホーチミンの下町でいろんなものを見たり感じたり、ちょっぴり自己を解放したりしながら、ベトナムのことをほんの少し知れたような10日間。
ハノイに行った人、ホーチミンに行った人。ベトナムが初めての人、数回目の人。犬が好きな人、猫が好きな人。これまで訪れた国の違い……。同じ編集部として旅をしても、見えているものはきっと異なります。
ベトナムの何を知りたい?ベトナムから何を学べる?
食、カルチャー、経済、言論。一人ひとりの見聞きしてきたものをもち寄って、楽しく、いい意味でおもしろがりながら、読んだ人がもっと旅に出たくなるものをつくれたら。これから我々のベトナム特集の制作は佳境を迎えます。