Yayoi Arimoto
古くから藍や綿花の生産地として知られる岡山県の児島の地に根をおろし、デニムや藍染めを軸とした服づくりをする〈KAPITAL〉。そんな〈KAPITAL〉が、日本の伝統や昔ながらの精神を受け継ぎながらも、新しい試みにも挑む「Japan Working Hero」を訪ねて、季節ごとに旅をする連載。
「墨と山伏編」では、山伏であり美術家の坂本大三郎さんに会うために、山形県の西山町へ向かった。
Photo : Yayoi Arimoto
Text:TRANSIT
「ここは日本で一番、雪深い町の一つなんです」
出羽三山の一角、月山(がっさん)の参詣道に西川町はある。この町に山伏であり美術家の坂本大三郎さんは暮らす。
「この冬は雪が少ない。こうなると雪かきは楽ですね。朝、昼、晩、2時間ずつやらなきゃいけないところ、朝晩の2回で済む。でも雪が少ないと春の山菜の味がぼやけるんですよね」。5月になると坂本さんは崖のような山まで分け入って山菜摘みをする。もともと山伏は、山菜や山草、獣、鉄といった山の恵みを里に持ち帰る、山と人の媒介者だった。明治の魔仏毀釈で山伏文化は荒廃してしまうが、医療、鍛冶、芸能、行商のあらゆる術を持ち合わせたところに、坂本さんは惹かれている。
墨と藍で染めたデニム地に刺し子を施したウェア。一面の雪景色に墨藍の陰影が浮き立つ。
ここ数年、坂本さんは「籠る」ことと「芸能」について考えている。
天岩戸に籠った天照大神を招き出した舞踊。世界各地に残る原始の洞窟絵。山伏修行も基本は山籠りだ。洞穴やお堂に籠り、お経を何遍も唱え、滝に打たれ、これまでの自分を葬って山という胎内に籠り、生まれ清まることを目指す。坂本さんは裏山に穴を掘り、そこに1日〜1週間ほど籠って、外に出たときに踊るという、修行と芸能の淵に立つようなことをしているのだ。
坂本さんに出会った翌日、本州を覆うほどの大寒波が到来した。
猛吹雪のなか、坂本さんは山伏衣装に身を包んで舞ってみせてくれた。降り積もった雪面に棒を打ち立て、経を唱え、雪を踏み締め、旋回する。容赦ない雪山に相応しい、猛々しく荒々しい舞。ふいに太鼓の音が止んだ。風の音に包まれる。舞が終わったのだ。
太鼓を打ち鳴らして踊る、坂本大三郎さん。地元の山伏衣装と自ら集めた民具や古着を纏って異形のものになる。
凍りついた白装束を脱ぎ、墨と藍で染めた〈KAPITAL〉のWORK WEARに袖を通した坂本さんが雪原に立つ。長い冬を越えて、発動されるものとはなにか?草木も、動物も、人間も。そんなことを考えさせてくれるのだった。
denim jacket ¥39,380、denim pants ¥37,180(including tax)、stall *参考商品
山伏・芸術家
坂本大三郎(さかもと・だいざぶろう)
1975年千葉県生まれ。自然と人の関わりの中で生まれた芸術や芸能の発生、民間信仰、生活技術に関心を持ち東北を拠点に活動している。
HP|www.13ji.jp/daizaburosakamoto
Instagram|@daizaburo_sakamoto
1975年千葉県生まれ。自然と人の関わりの中で生まれた芸術や芸能の発生、民間信仰、生活技術に関心を持ち東北を拠点に活動している。
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