Yayoi Arimoto
古くから藍や綿花の生産地として知られる岡山県の児島の地に根をおろし、デニムや藍染めを軸とした服づくりをする〈KAPITAL〉。そんな〈KAPITAL〉が、日本の伝統や昔ながらの精神を受け継ぎながらも、新しい試みにも挑む「Japan Working Hero」を訪ねて、季節ごとに旅をする連載。
「柿渋と茅葺き職人編」では、茅葺き職人である相良育弥さんに会うために、神戸市北区 淡河町を拠点とする相良さんの工房へ向かった。
Photo : Yayoi Arimoto
Text:TRANSIT
稲藁やススキといった茅がうずたかく積まれた倉庫に踏み入ると、スモーキーでノスタルジックな干し草の香りに包まれた。ここは、神戸市北区淡河町を拠点に活動する茅葺き職人・相良育弥さんの工房。壁に目をやると、稲藁を短く刈り込んだ作品に目が止まった。花活けの背景になるものだという。
「茅葺きの家は、1軒茅葺いても、2軒つぶれているのが実情です。このままだと未来は明るくない。だから、可能性を横方向にも引っ張っているんです」
日本では茅葺きといえば伝統的には屋根だが、ヨーロッパでは壁にもなる。そこで、壁にするための技術をオランダで学び、実際に建物の壁や看板に用いたり、アートワークに挑戦しているのだ。「アウトプットは現代的でも、やってることは伝統的な技ですから」
未来を切り拓くための工房を出て、実際に葺き替え作業をしている様子を見せてもらうことに。道すがら、里山に本格的な秋を告げるように、黄色い広葉樹の森や稲刈り後の田んぼが視界を横切り、民家の庭先には柿の木がのぞく。そして、ぽつぽつと茅葺き屋根の家が現れる。神戸の市街地から車で30分ほどだというのに、昔話のような光景が広がっていることに驚いた。
現場では、4~5人の職人さんが軽々と屋根に登り、作業に勤しんでいた。金属音も機械音もきこえない。「静かですね」と思わず口をついて出た。「すべて手道具ですからね。茅葺き屋根は40~50年で葺き替えが必要ですが、自然の資材なので木、竹、ススキと解体できて、土に還るものばかり。環境にもいいんです」
大きな縫い針に藁縄を通し、藁が落ちないように固定する。1棟で10tトラック2台分の藁が必要だそう。
帰路、夕日を受けて黄金色に輝くススキ野を見かけて車を止めた。すると、「これはススキではなくて同じイネ科のオギ。茅にもなるんですよ」と相良さん。KAPITALの柿渋染めのウエアを纏い、オギ野に佇むその表情は晴れやかだ。
「青天のなかで汗をかいて、仕事終わりにビールを飲んで。健康的な生活ですよね、些末な悩みもなくなります」
時間とと もに風合いが変化する柿渋染めの刺し子デニム。柿渋コーティ ングを施すことで強度も増す。
jacket ¥34,980、denim pants ¥37,180(including tax)
茅葺き職人
相良育弥(さがら・いくや)
1980年生まれ。茅葺き職人。株式会社くさかんむり代表。伝統的な茅葺きの修復だけでなく、茅葺きの可能性や魅力を広げるためのワークショップやセミナーの開催なども行っている。
株式会社くさかんむり|https://kusa-kanmuri.jp/
Instagram|@ikuya_sagara
1980年生まれ。茅葺き職人。株式会社くさかんむり代表。伝統的な茅葺きの修復だけでなく、茅葺きの可能性や魅力を広げるためのワークショップやセミナーの開催なども行っている。
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問い合わせ先
HP|www.kapital-webshop.jp
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