海ではなく、陸を探検する。
24時間の船旅もゴール間近。聟島列島が見えてきたというアナウンスに誘われてデッキへ向かう。晴れていたらイルカやクジラが迎えてくれる日もあるようだがあいにくの雨。ぐずつく天気のなか、おがさわら丸に挨拶してくれたのはカツオドリだけだった。天気予報を何度見ても晴れマークにならず、父島初日は海でサンゴを見る予定だったが、透き通るボニンブルーは期待できなさそうだ。
おがさわら丸の進行方向とともに飛ぶカツオドリ。
小笠原といえば、シュノーケリングなど海のアクティビティの印象が強い。ガイドブックには楽園のようなビーチがいくつも紹介され、イルカと泳ぐアクティビティも神秘的で憧れる。
しかしそれに劣らない魅力がこの島にはある。小笠原諸島はガラパゴス諸島のように、大陸とつながったことのない、深海から突き出て現れた「海洋島」。鳥や、波や風に運ばれて辿り着き、そこで環境に適応しながら成長した島固有の動植物が、細分化しながら進化している。その生態系が認められて小笠原諸島は2011年に世界自然遺産に登録された。そしてその希少な生態系は、海よりも陸のほうが多いのだという。
孤島に辿り着くことのできた少数の生き物たちだけが、ひっそりと進化してきた。小笠原は、そんな生き物の宝庫なのだ。
父島の中央山で出会ったメヘゴ(上)とシマザクラ(左下)。メヘゴは父島にのみ分布するシダの固有種。
父島の大神山公園で見つけたアカガシラカラスバト。
父島の長崎展望台で出会ったテリハハマボウ。