地球を想う、世界の環境活動家たちの言葉

地球を想う、世界の環境活動家たちの言葉

THINK EARTH

2024.12.30

2 min read

温暖化や気候変動に、厳しく警鐘を鳴らし続ける環境活動家たち。彼らの言葉からは、地球を大切にする思いと一向によくならない現状への焦燥感、何もしない人びとに対する憤りがにじみ出ている。パワーある世界のリーダーたちのことばを集めた。

Text:TRANSIT

グレタ・トゥーンベリ(2003-)/スウェーデン

あなたたちは、私たちを失望させている。
しかし、若い世代はあなたたちの裏切りに気づき始めています。
未来の世代の目は、あなたたちに向けられている。
もしあなたたちが裏切ることを選ぶのであれば、
私たちは決して許しません。
私たちはこのまま、あなたたちを見逃すわけにはいかない。
今この場所、この時点で一線を引きます。
世界は目覚め始めています。変化が訪れようとしています。
あなたたちが望もうが望むまいが。

グレタ・トゥーンベリは、15歳のときに学校をストライキし、議会の前に座り込んだ活動が注目を集め、いまでは世界的に影響力をもつようになった若き環境活動家。彼女が起こした運動「Fridays For Future」影響を受け、日本でも「Fridays For Future Japan」が巻き起こっている。トゥーンベリは肉を食べない、飛行機を使わないなど二酸化炭素排出量の少ない生活を自らが実践。2019 年にこの言葉が話された気候変動サミットに参加する際、温室効果ガスの排出量の高い飛行機を使わずヨットでイギリスからニューヨークまで辿り着いたことは大きなニュースになった。いま、若者世代の声の代弁者として、そして温暖化防止のアイコンとして、政治家やビジネスリーダーの間で物議をかもしている存在だ。

TRANSIT49「美しい海の星」より

© Junji Takasago

アル・ゴア(1948-)/アメリカ

この惑星は窮地にあるというのに、
すべての注目はパリス・ヒルトンに集まっている。
私たちは私たち自身に対して
「一体何が起こっているんだ?」と問わなくてはならない。

地球の危機を訴える声が、お騒がせセレブのニュースで消えてしまっていることに対し、メディアのあり方を皮肉に問うた言葉。アル・ゴアはビル・クリントン政権でアメリカ副大統領を務めた人物。2000年には大統領選に立候補し、僅差でジョージ・W・ブッシュに惜しくも敗れたが、その後は環境活動家として積極的に活動し、映画『不都合な事実』などの影響力でノーベル平和賞も受賞している。

ワンガリ・マータイ(1940-2011)/ケニア

木は、その根っこを大地に持ちながら、
空に向かって伸びていきます。
大志を持つためには、地に足をつけていなければならないし、
どんなに高く伸びても、私たちは、
その根っこから滋養をもらっているのです。

植樹活動である「グリーンベルト運動」を起こした、ケニアの元環境副大臣のワンガリ・マータイの言葉。砂漠化が進む地域での植樹は貧困層の女性に雇用をもたらし、女性の社会進出を後押しされたことが国際的に評価されている。マータイが取り組む資源活用の3R(Reduce、Reuse、Recycle)を一言で体現しているとして、「もったいない」を国際語として発信した人物でもある。

TRANSIT49「動物たちのいるところ」より

© Harumi Shimizu

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(1989-)/アメリカ

地球が燃えるなか、
私たちには手をこまねいている時間はありません。
若者にとって気候変動は選挙や再選よりも大きな問題です。
それは生か死かの問題です。

ニューヨーク州ブロンクス出身の政治家、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスの言葉。彼女は2018年にアメリカ史上最年少の28歳で下院議委員となった実力派。温暖化防止と経済格差の是正を同時に目指す景気刺激策「グリーン・ニューディール」を掲げ、再生エネルギーの投資に環境・エネルギー分野での新しい雇用の創出を期待している。男女格差の解決にも積極的に取り組み、若年層を中心に熱く支持されている。

TRANSIT49「火の森を追いかけて」より

© Tetsuo Kashiwada

レイチェル・カーソン(1907-1964)/アメリカ

地球の美しさと神秘を感じ取れる人は、
科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、
孤独にさいなまれることは決してないでしょう。

レイチェル・カーソンは、1962年に著書『沈黙の春』を通じて環境問題を提起した海洋生物学者。殺虫剤などの合成化学物質の大量散布が生態系を破壊し、それが人間の命にも関わることであることを警告し、当時の社会に大きなインパクトを与えた。幼少期に自然の神秘や不思議に目をみはる感性を育むことが大切だとしている。カーソンの意志は次世代の環境活動家たちの誕生にもつながっており、彼女が「環境の時代」をスタートさせたと言っても過言ではない。

マハトマ・ガンディー(1869-1948)/インド

地球は全ての人間に必要なものは充分満足させてくれるが、
全ての人間の欲を満足させてくれるのではない。

人権運動や植民地解放運動で世界中に大きな影響を与えたマハトマ・ガンディー。直接的に環境活動をしたというわけではないが、その思想や経済施策は結果的にエコロジーに結びついていたともいえる。例えば、ガンディーは産業化や機械化にあえて反対し、労働が過剰化するのを防いだ。というのも、インドは労働者が多いため、効率化されると仕事を失うものも出てくるから。また、便利な機械という存在が人間の「機械と自分さえ良ければいい」という利己主義にも繋がると考えており、人びとに利他的な精神を植え付けようと尽力した。人種差別、女性蔑視、経済エリートによる大衆搾取、家父長制などにも反対した。

TRANSIT49「揺らぎながら生きる人びと」より

© Greta Rybus

ネイティブアメリカンの言葉

自然は祖先から譲り受けたものではなく、
子孫から借りているのだ。

自らを自然の一部としてとらえ、数世代先のことを考えて自然が持続していくように自然と向き合って生活するネイティブアメリカンの言葉。1980年ごろからは、先住民の目から見える地球や世界を環境倫理に取り入れていこうという動きがあり、その価値観が注目された。

エドワード・オズボーン・ウィルソン(1929-)/アメリカ

経済的利益のために熱帯雨林を破壊することは、
食事を作るためにルネサンスの絵を燃やすようなものだ。

「生物多様性の父」とも称される、アメリカの昆虫学者エドワード・オズボーン・ウィルソンの言葉。社会性昆虫であるアリの行動を研究し、アリの自己犠牲的な行動は自分と遺伝子の近いほかのアリが生き延びることによる遺伝的利益から起こるということを発見した。他の動物の社会性にも共通点を見出し、その思索は自然と人間の共生の価値観に繋がっていく。環境保護主義的な研究が世界的に評価されている。

TRANSIT49「動物たちのいるところ」より

© Harumi Shimizu

人間による環境破壊に警鐘を鳴らす言葉は、最近になって放たれ始めたのではない。レイチェル・カーソンやアル・ゴアの時代から環境の時代はすでに始まってもう数十年が経っており、その精神は次の世代に継がれている。 大切な言葉に耳を傾けるのか、それとも耳を塞いでしまうのか。それによって、私たちの未来は大きく変わりそうだ。

LET'S LISTEN TO EARTH

Australia / Maldives / Tubal / Uganda / Hokkaido

TRANSIT49号
美しき消えゆく世界への旅

2020

AUTUMN

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Yayoi Arimoto

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