夜空にゆらゆらと煌めく、神秘的な光。オーロラとはいったいどんな現象なのだろう。なぜ、特定の地域でしか見ることができないのか。発生原理からオーロラにまつわる素朴な疑問まで、その神秘を解説します。
Supervision:Ryuho Kataoka Text:Koji Uno
Q. オーロラって何 ?
オーロラが現れる要因のひとつは、「太陽風」という太陽から放出される超音速のプラズマの流れ。もうひとつが、太陽風からバリアのように地球を守っている「地磁気」です。
太陽フレア(太陽面爆発)などによっ て、地球に吹きつける太陽風のスピードが速く、太陽風の磁場が強いほど、明るいオーロラが光ります。太陽風は大気にぶつかりません。太陽風と地磁気がせめぎあっているのは、地上6万kmほどの宇宙空間。
太陽風が地磁気に吹きつけることで、太陽風と地球の磁場の隙間にプラズマが溜まり、圧力の高い領域が生まれます。ここから圧力が低いところへとプラズマが流れると発電が起こり、そうやって生じた電流が地球の大気に流れ込むことでオーロラを光らせているのです。
Q. どこで光っているの?
空を漂っている雲は、高いものでも地上10km程度です。オーロラが揺らめいて見えるのは、それよりはるかに高い地球の大気のいちばん外側。地上100~1000kmほどの宇宙空間です。
地上の大気には、窒素分子が約8割、酸素分子が約2割の割合で含まれていますが、高度が80kmを超えると空気より軽い酸素原子が増え、高度100km以上では大気のほとんどを酸素原子が占めるようになります。
また、高度が上がるにつれて気圧は低くなり、真空状態に近づきます。高度400kmにある宇宙ステーションのまわりの気圧は、地上の1000億分の1程度。オーロラは、そんな空の果てで光っています。
Q. なぜ光るの?
太陽風と地磁気の相互作用によって生じた電力は、大量の電子の洪水となって地上の大気へと流れ込み、上空にある酸素や窒素に衝突して原子や分子を励起(※)させます。
通常の大気中で励起状態になった原子や分子は、ほかの原子や分子と衝突してエネルギーを発散しますが、オーロラが現れるほどの上空では酸素や窒素の密度が極めて低いため、衝突でエネルギーを発散することができません。
そこで、一定時間エネルギーを溜めたままの原子や分子は、電磁波(光)を放出することで通常の状態(基底状態)に戻るのです。この光が、オーロラの正体です。
Q. オーロラってどこで見られるの?日本からも見える?
オーロラが現れるのは、アラスカ、カナダ、グリーンランド、ノルウェーなど、地磁気の軸(自転軸よりアメリカ側に約10°傾いています)を取り囲む国々です。
オーロラは地球規模でみると、「オーロラオーバル」 と呼ばれる輪のような形をしています。この輪は太陽の側(昼)よりも太陽の反対側(夜)の方が広がっていて、オーロラの観測地はすべて、夜中にオーロラオーバルが真上になるところにあります。
また、大規模な太陽フレアの影響で、太陽風の爆風が地球を包み込み、大きな磁気嵐が発生するときには、緯度の低い地域でもオーロラが見えることがあります。そうしたオーロラの多くは、遠く北の国に出ているオーロラの上の部分だけが地平線すれすれに見えていたりするもので、色は赤く、はっきりした形をもちません。
古い記録では、日本最古の歴史書『日本書紀』に、西暦620年にオーロラが見られた様子が書いてあります。最近では2015年に北海道で赤いオーロラが撮影されました。
Q. オーロラの語源は?
中緯度で見られるオーロラが夜明けの光に似ていることから、この発光現象を暁の女神アウロラの名前を用いた「オーロラ」と呼ぶようになりました。アウロラは地上に夜明けをもたらす神であり、古代の人びとは夜の暗さを追い払い、この世に光を与えてくれるのはアウロラ女神であると信じられていました。
名づけ親は諸説ありますが、天文学者であるガリレオ・ガリレイとも言われています。