3月14日は、世界的な理論物理学者スティーブン・ホーキングがこの世を去った日。
© Yortw
スティーブン・ホーキングは1942年1月8日、イギリスのオックスフォードに生まれました。生物学者の父親をもち、幼い頃からとくに数学や物理に興味を抱いていた彼は、ケンブリッジ大学へ進学し宇宙論を研究する道を選びます。
しかし、順調に見えたその人生は、若干21歳のときに大きく変わることになりました。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の診断を受け、余命わずか数年と宣告されたのです。
スティーブン・ホーキングと、妻ジェーン(1965年)。
病に侵されながらも、ホーキングは研究をつづけました。体が次第に動かなくなっていくなかでも、彼の知性は輝きを増していきます。
とくにイギリスの数学者ロジャー・ペンローズとともに証明したブラックホールの特異点定理や、「ホーキング放射」と呼ばれるブラックホールの蒸発理論の発表は、宇宙物理学の分野に革命をもたらしました。これにより、ブラックホールが完全に物質を飲み込んでしまうのではなく、微小な粒子を放出しながら徐々に縮小していく可能性が示されたのです。
この理論は量子力学と一般相対性理論を結びつける重要な手がかりとされ、彼の名を不動のものにしました。
無重力空間を体験するホーキング。
© NASA
ホーキングの人生は、科学的な業績だけでなく、その生き方そのものが多くの人びとに勇気を与えるものでした。
病気の進行により話すことが困難になると、コンピューターによる音声合成装置を使い、自らの考えを世界に発信しつづけました。科学の普及にも尽力し、1988年に発表した著書『ホーキング、宇宙を語る(A Brief History of Time)』は世界的なベストセラーに。難解な宇宙論を一般の人にも理解できるように解説した本書は、今も多くの読者に宇宙の神秘を伝えています。
© Mihnea Maftei
2018年3月14日、ホーキングは76歳でその生涯を終えました。
奇しくもこの日は、物理学史に名を刻むアルベルト・アインシュタインの誕生日。異なる時代に生まれながら、宇宙の謎を解明することに人生を捧げた二人が、同じ日に生と死を迎えたことには、不思議な縁を感じずにはいられません。
彼の遺灰は、アイザック・ニュートンやチャールズ・ダーウィンが眠るウェストミンスター寺院に埋葬され、偉大な科学者として歴史に名を刻んでいます。
Yayoi Arimoto
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Yusuke Kabuki
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