今、どんな記事をつくってる? 週末はどこへ行ってた? 最近気になっていることは? などなど、TRANSIT編集部のオンオフの日々を週単位でお届けします! 今回は、編集部・鈴木の横浜のとあるジャズバーでの雨宿りの話。
Photo & Text:Shun Suzuki(TRANSIT)
秋の終わりのとある三連休、僕はひとり横浜へ旅に出た。といっても、当日朝の思いつき。そこまで旅をおおごとにする気はなかったので、1泊2日の小旅行にした。
ふだん都内で暮らしている僕にとって、横浜は近くて馴染みのある存在だったものの、これまで訪れる機会がなかった。これを機に横浜の雰囲気を感じてみようと旅先に選んだ。
© Dick Thomas Johnson
夕方、横浜駅に到着。まずはホテルのほうへ歩いて向かう。街並みや街行く人の様相は東京と大きくは変わらない。でも、海風が流れてきたり、空の青が広く感じたり、制帽を被った海上自衛隊の訓練生らしき青年が歩いていたりと、港町・横浜らしさを所どころに見られるのがおもしろい。
ホテルでチェックインを済ませ、腹ごしらえをしようと再び街へ。「せっかく横浜に来たのならやっぱり中華でしょう!」と、地下鉄に乗って元町中華街へ。ふらりと入った中華料理店で、熱々の麻辣湯麺と焼売をペロリと平らげた。
中華料理店を出ると外はまさかの土砂降り。どうしようかと立ち尽くしていると、中華街の外れに、近くにジャズバー〈MINTON HOUSE〉を見つけて、雨宿りついでに入店することにした。
お客さんは僕一人きりで、温かみのあるライトが照らす木目調の内装、棚にはたくさんのレコードが並び、壁にはフライヤーやステッカーがびっしりと貼られている。
僕がカウンターの椅子に腰を掛けるやいなや、店主が棚から一枚のレコードを取り出し、その盤に針を落とした。楽しげな雰囲気たっぷりのスイング・ジャズで、曲の半分以上を男女混声のコーラスが「Boop bop, Boop bop~♪」と歌っている。ピアノやサックスも加わり、全体的にすごく多幸感あふれる曲調で展開される。僕が横浜という街に酔いしれているだけだろうか、その曲はどこか港町の空気感をまとって聴こえる。かつて開港時代の賑わいにあふれる横浜の街が脳裏に浮かんできた。
これめちゃくちゃいいですね、と店主に伝えると、「The Manhattan TransferのTuxedo Junction。70年代の曲だよ」と教えてくれた。
入口脇の窓からは、土砂降りの雨が外で降っているのがわかる。雨のブルーな雰囲気と、それを吹き飛ばすようなハッピーな曲が絶妙にマッチし、すごく心地よかった。なんだか横浜という街に迎え入れてもらったような感じがした。
後日、僕はそのレコードを買い、ときおり曲を聴き返している。思いつきの旅がくれた、旅のお土産。また次も、雨の日に訪れたい。
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