一生に一度は行ってみたい世界遺産はどこ? と聞かれて、ペルーの「マチュピチュ」を思い浮かべる人もきっといるはず。実際に現地に足を運べたらと思いつつ、マチュピチュへ訪れるには時間がかかる。そんなアンデスの古代遺跡を日本で身近に感じられる「マチュピチュVR体験」「CREVIAマチュピチュ展」が六本木で開催中だ。実際に体験してきた様子をレポート。
Text:Takamasa Kujirai
「空中都市」と呼ばれ、標高2400mの尾根に広がる古代遺跡マチュピチュ。
15世紀頃に築かれた街とされていて、1911年にアメリカ人探検隊に”再発見”され、世界中の知るところとなった。ロマンに溢れていて、世界中の人びとの心を弾ませる場所だ。実際に日本からマチュピチュへ行こうと思うと、アメリカやカナダを経由してペルーの首都リマに飛び、そこから国内線の飛行機でクスコへ向かい、鉄道で3、4時間というのが主なルート。時間をかけて現地を訪れたいところだけど、日本で身近にマチュピチュを体感できたら……。
今、そんな願いを叶えてくれる、ふたつのイベント「マチュピチュVR体験」と「CREVIAマチュピチュ展」が、六本木ヒルズで開催されているのだ。
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「マチュピチュVR体験」は、六本木ヒルズ展望台で「天空の歩き方in東京シティビュー」の展示とともに行なわれているイベント。
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ゴーグルを装着、専用シートに着席すると、マチュピチュの遺跡群を空から巡る旅がはじまる。このVR体験の引率役は、なんとインカ帝国の皇帝パチャ・クティ。アンデス文明の世界観の根底にある「3つの世界(天上、現世、地下)」のうち、天上の世界を案内するとして登場するのだ。それも、天上の世界「ハナン・パチャ」と現世「ケイ・パチャ」を行き来できる神の使い・コンドルの力を借りて空を飛ぶという設定。アンデス文明の世界に自分も入り込むことができる。
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いざ、旅が始まると、VRで360度見渡せるだけでなく、映像に合わせて座っているシートも動くので、空に浮いているような臨場感たっぷり。自分のすぐ隣にはパチャ・クティが空を飛んでいるので、自分も並んで空を飛行しているような気分になっている。
眼下に広がるマチュピチュは絶景だ。切り立った山々の合間にぽつんと現れる都市は、それだけで神秘的。鮮やかな緑に染まった段々畑と石造りの建物の姿が詳細に見えて美しい。
VR映像では、畑で働く人びとや、ラマやアルパカが草を喰むのどか光景も映し出され、当時の暮らしを再現。今では観光地として多くの人が訪れるマチュピチュだが、インカ帝国時代の人びとがどんな日常を送っていたのか想像が広がる。8分の空の旅は、マチュピチュの古代の世界を味わえる充実した時間になっているのだ。海抜250mにある六本木ヒルズの展望台でVR体験をするのも、また現実と仮想世界が交わって不思議な没入感がある。
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そしてマチュピチュを体感できるもう一つのイベントが、森アーツセンターギャラリーで行なわれている「CREVIAマチュピチュ展」。ペルー政府公認で、アメリカをはじめ世界を巡回している国際的な展覧会で、アジアでは日本が初開催となる。首都リマのラルコ博物館の貴重な所蔵品134点が日本に上陸。マチュピチュを築いたインカ帝国を含む、古代アンデス文明の発掘品などがメインに紹介されている。
アンデス文明のお宝がいっぱい!
© MUSEO LARCO LIMA - PERU
アドベ(日干しレンガ)を使った先住民時代の建造物のひとつ「太陽の神殿」。アメリカ大陸で最大級の規模を誇る。
ユニークなのはその展示方法だ。アンデス文明の神話に登場する英雄アイ・アパエックが、古代アンデスの世界観へと誘ってくれるのだ。
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ここで、ひとつアンデス文明の世界観の解説を。
アンデス文明では、太陽が輝く神の領域「ハナン・パチャ(天上の世界)」、人びとが生きる「ケイ・パチャ(現世)」、そして亡くなった祖先の住む「ウク・パチャ(地下世界)」の「3つの世界」が存在していると考えられていた。また、その3つの世界は共存し、循環していて、それらの世界をつなぐのが、指導者とシャーマンだった。
アンデス文明は神秘的で複雑な世界観で、土器や資料を眺めているだけでは理解しにくいかもしれない。そこで役立つのが、アンデス文明に含まれる、モチャ文明で生まれたアイ・アパエックの神話だ。
神話上の英雄、アイ・アパエックの壁画。神話では、地上・天上・地下の世界を自在に行き来する力を持つ存在として描かれている。
「CREVIAマチュピチュ展」は、英雄アイ・アパエックが太陽を取り戻す冒険のエピソードからはじまる。
旅のお供はトカゲと犬とハゲワシ。彼らを従えたアイ・アパエックは、カニやフグや巨大巻貝と戦い、戦った相手の能力を得ていく。アンデス文明において、山や動物などの自然物は、人間を凌駕する霊的な力をもつ存在として崇拝されていて、人間であってもその動物の姿に“変身”したりその能力を身に着けることができると考えられているのだ。
アイ・アパエックは、多くの海の生物を倒すものの、サメとエイとアシカの要素をもつ海の神に破れて首をはねられてしまう。命を失い地下世界へ行くと、癒やしの力をもつフクロウと出会い、心身を回復させる。ここでは「3つの世界」が並行して存在していることが現れている。
そして、アイ・アパエックはフクロウの仲裁によって大地と豊穣の女神・パチャママと結ばれる。生命の樹を生み出し、さらなる力を得たことで完全な存在に。さらに、故郷に戻る途中に、ホラ貝を生命の液体を司る神に捧げることで、恵みの雨を得て平和な世界を取り戻す。これこそ、破壊と再生という循環を表しているのだ。
「CREVIAマチュピチュ展」では、大きなパネルで神話が紹介され、その周囲にはアイ・アパエックにまつわる土器などが一緒に展示されている。神や動物が融合した造形物が多くあるのだが、それだけ見ても理解しがたいものも、神話の世界とともに眺めると、不思議とその奇妙で愛らしい姿に納得できてしまうのだ。
左/大蛇の耳飾り、ネコ科の牙を有するアイ・アパエックの顔を表した埋葬用仮面。
右/ネコ科動物、鳥、ヘビの融合体の土器。
© MUSEO LARCO LIMA - PERU
また、「CREVIAマチュピチュ展」では、神聖な生贄の文化や、アンデス文明の世界観を表す黄金の装飾、そしてマチュピチュの高度な文明をパネルや映像で紹介。紀元前3000年頃から16世紀と長きにわたって育まれた独特な世界を堪能できる。
「マチュピチュVR体験」は六本木ヒルズ展望台で3月22日(日)まで、「CREVIAマチュピチュ展」は森アーツセンターギャラリーで3月1日(日) まで開催。ぜひ東京でペルーのマチュピチュの世界に触れてみよう。
「マチュピチュVR体験」
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場所
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「CREVIAマチュピチュ展」
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