連載:NIPPONの国立公園
National Parks of Japan.
連載:NIPPONの国立公園
TRAVEL & THINK EARTH
2024.10.03
5 min read
本州から1000km離れた、太平洋に浮かぶ小笠原諸島。その隔絶された島に、海を越えて少し ずつ生命が上陸。数千万年の時間をかけて生み出された独自の生態系の今を見つめた。そんな小笠原国立公園を巡った旅を、前編「孤島に根づく生命の息吹」、後編「破壊と再生の森」に分けてお届けします。
Photo : Hidetoshi Fukuoka
Text:Kanami Fukuoka (TRANSIT) Supported by THE NORTH FACE
八丈島、青ヶ島、鳥島……。島々の近くを通過 するたびに、船内に各島を紹介するアナウンスが 流れる。東京・竹芝埠頭から「おがさわら丸」に 乗りこんで丸1日、ついに目的地、小笠原諸島・ 父島の説明が流れた。
デッキに駈け上がり、訪れ ることを夢見ていた南の島を眺め見る。断崖絶壁にぶつかる大きな波しぶき。その奥には深い緑に覆われた山々が見える。想像以上に無骨で荒々しい。島でほぼ唯一の平地に接した二見湾に「おが さわら丸」は汽笛を鳴らしゆっくりと入港した。
小笠原諸島は、4800万年前頃の海底火山の噴 火によって、海面に隆起してできた海洋島だ。本 州からは約1000km離れ、一度も大陸と陸つづきになったことがない孤島。それゆえ、大海を越えて辿り着くことができたわずかな生物が独自の進化を遂げ、唯一無二の生態系が形成されてきた。
在来種のうち、陸上植物の約36%、カタツムリなどの陸産貝類の約 9 4% が固有種とされている。そんなユニークな生態系をまずは海の近くで目にするため、ガイドさんと小さなボートに乗り込み、南島へと向かった。南島は、父島から南西1 kmほどの距離に浮かぶ無人島。1日100人の上陸人数の制限があり、上陸前に靴底を消毒するなど、生態系の保護のためにルールが設けられている。
1年後、感染者の数はひと桁増え、常態化した緊急事態宣言下で観光産業の困難は山小屋にも及んでいる。海外、とくにアジア圏の観光客が多かった立山で、8月、天狗平山荘の客数はコロナ禍前と比べると20%ほどともいう。
立山が人気なのは乗り物を乗り継ぎ、山の絶景にアクセスできるところにある。立山駅からケーブルカーに乗り、終点・美女平からは観光バス「立山黒部アルペンルート」が2450m地点の室堂まで連れていってくれる。室堂から立山連峰の絶景を楽しみつつ、45分ほど歩けば雷鳥沢キャンプ場。ハードな登山をせずとも、気軽に自然を満喫できる絶好の場所なのだ。
南島は不思議なすり鉢状の形をした島だ。サンゴ礁の化石が固まりできた石灰岩で構成されているため地層が柔らかく、波や風、雨による侵食を受けやすい。
エメラルドグリーンの海が迫る、岩に囲われた秘密基地のような白い砂浜を裸足で歩き回ると、カタツムリの殻がいくつも落ちていることに気がついた。一見どれも同じようだが、よく見ると巻き方や形が少しずつ違うものがある。小笠原の生態の特殊性を語るに外せないのがカタツムリだ。
流木などによって運ばれた1つの種から、小笠原の地で進化し100を超える種類に分化していったのだとガイドさんが教えてくれた。決められた小道を歩いていると、足元の斜面に小さな洞穴のような穴がポツリポツリと空いている。中をのぞくと、羽毛に覆われたふんわりした 鳥の横腹や、残された卵が見えた。
この島には、カツオドリやオナガミズナギドリ、アナドリなど、南方の渡り鳥たちが夏の間にやってきて、繁殖を行なっているのだ。
本記事はTRANSIT54号より再編集してお届けしました。
日本の国立公園
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環境省・日本の国立公園