TRANSIT54号『不思議で尊い世界の聖地へ』の「世界五大宗教と聖地」と題した企画では、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム、ヒンドゥー教、仏教の5つの宗教を、それぞれ比較してまとめました。 今回は、インド、ネパール、スリランカ、タイ、カンボジア、日本をはじめ、アジア各地で広まっている仏教の基本情報を、駆け足で紹介していきましょう。
Supervision:TESSYU SYAKU Text : TRANSIT
釈迦族の王子として生まれたガウタマ・シッダールタは、29歳のとき城の外で「老病死」を目にし、伝統的な神々の祭祀では民の苦しみは救えないと出家を決意。菩提樹の下で瞑想に励み、苦悩を乗り越えて悟りを開くための修行法を獲得した。民衆は彼をブッダ(目覚めた者)と呼び、ブッダの死後、仏教は上座部仏教と大乗仏教に展開。修行によりブッダと同じ涅槃の境地を目指す上座部仏教は東南アジアへ、自らも修行に励み民衆も救おうとする大乗仏教は中国や日本へと伝わった。
初期仏教ではブッダの遺骨を納めた仏塔などを礼拝したがやがて崇拝対象として時空を超えた釈迦牟尼仏が編み出された。チベット仏教ではラマ(高僧)を観音菩薩の化身とする活仏信仰があり、なかでもダライ・ラマを最高位として尊崇する。
初期仏教ではブッダの遺骨を納めた仏塔などを礼拝したが、やがて崇拝対象として時空を超えた釈迦牟尼仏が編み出された。チベット仏教ではラマ(高僧)を観音菩薩の化身とする活仏信仰があり、なかでもダライ・ラマを最高位として尊崇する。
信者数は中国が最多。ヒンドゥー教の台頭で発祥地のインドでは衰退したが、インド仏教を積極的に採用したチベットで発展。ブータンやカンボジアでも仏教を国教として公認している。アジア全域のほか近年はアメリカなど世界各地にも分布している。
一切経とも呼ばれる仏教聖典の総集。仏の説法を集めた「経」、仏徒の生活規範を説いた「律」、前述の経を解説した「論」の三蔵を中心に編纂された。なかでも大乗仏教の真髄をわずかな文字にまとめた『般若心経』は多くの宗派で尊重されている。
快楽にふけるわけでも、苦行に熱中するでもなく、両者から離れて極端な生き方に固執しないあり様を中道という。それは冷徹な観察の目をもって、ベストな選択をすること。そのために「三法印」「四聖諦」「八正道」といった基本的な教えが整備された。
ブッダ生誕の地ルンビニー、悟りを開いた成道の地ブッダガヤ、初めて仏教の教えを説いた初転法輪の地・サールナート、80年の生涯を閉じた涅槃の地クシーナガラの四大聖地のほか、中国の天台山、チベットのラサなど、インドから日本まで聖地が点在。
宗教学者、僧侶
釈 徹宗(しゃく・てっしゅう)
浄土真宗本願寺派如来寺住職、相愛大学人文学部教授。著書に『ゼロからの宗教の授業』(東京書籍)、『宗教聖典を乱読する』(朝日新聞出版)など。共著に内田樹との『聖地巡礼』(東京書籍)シリーズがある。
浄土真宗本願寺派如来寺住職、相愛大学人文学部教授。著書に『ゼロからの宗教の授業』(東京書籍)、『宗教聖典を乱読する』(朝日新聞出版)など。共著に内田樹との『聖地巡礼』(東京書籍)シリーズがある。