空気が澄みわたり、風がかがやく西オーストラリア州。"世界一美しい街"と謳われる州都パースはもちろん、まわりの町も見どころいっぱい。とくに高級ワインで鳴らすマーガレットリバー、潮風に吹かれながらシーフードに夢中になれる美食の街バッセルトン、活気あふれる港町フリーマントルなど、太陽と大地と海が育てたスペシャルなごちそう地帯が広がる。
西オーストラリア州の旅で見逃したくない絶品グルメを、定番からニューフェイスまで10個選んでみました!
text & illustration & photography=AYAHA YAGUCHI
cooperation=オーストラリア政府観光局, 西オーストラリア州政府観光局
西オーストラリア州でくいしんぼうを極めるなら、まず訪ねるべきはマーガレット・リバー(Margaret River)。州都パースから300kmほど南、車で約3時間のエリアに、大小あわせて約200軒のワイナリーが集結している。この地でワインの醸造がはじまったのはわずか50年前だが、世界を驚かせるほどの品質を誇り、名だたる賞を次々に受賞。驚異的なスピードでプレミアムワイン産地としての地位を確立した。「ここのワインを飲んだからこの職についた」と語るソムリエいわく、「飲む人を深い沼に引きずりこんで離さない一杯がマーガレット・リバーにはある」とのこと。
“世界でもっとも孤立したワイン産地”と評されることが多いマーガレット・リバー。インド洋と南氷洋の2つの海流がぶつかるエリアで寒暖差が大きく、フランスのボルドーに気候が似ているともいわれる。一番最初に「ここがいい!」と地の利を見極めてワイン造りに取りかかったパイオニア、それが〈バッセ・フェリックス(Vasse Felix)〉のワイン。
ワイナリーを訪れると、貴重品の並ぶ展示室やギャラリーを見られるほか、有名なカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネなどのテイスティングもじっくりと楽しめる。とはいえ試飲だけではもったいないので、ぜひ併設のレストランへ。ペアリングで楽しめるコース料理にトライしたい。
日本のマーケットにはなかなか入らない珍しいワインを求めるなら〈フレーザー・ギャロップ・エステート(Fraser Gallop Estate)〉へ。1999年の設立以来、世界最大級のワインコンクールなどで数々の受賞歴を誇るトップワイナリーだ。
見どころは、ワイナリーが開催する「ヴィンヤードツアー」(90分・95豪ドル)。造り手とともに太陽光発電のバギーに乗りこみ、風を切ってブドウ畑を巡る。日本人がまだ知らないヴィンヤードの舞台裏に飛びこめるチャンスだ。
おいしいツアーで胃袋に火がついたら、ご近所にある有名ワイナリー〈ヘイ・シェッド・ヒル(Hay Shed Hill)〉に出かけて、併設のレストラン〈ラスティコ(Rustico)〉でランチをいただくルートもよし。ワインとともに次々と美しい料理が出てくる美食のカーニバルのはじまり。
地中海式気候の西オーストラリアでは、オリーブの栽培も盛んだ。マーガレット・リバーにも専門店がいくつかあって、なかでも品揃えが豊富だといわれるのが〈オーリオベッロ(Olio Bello)〉。試食コーナーも充実していて、好みの味を確認してから買えるところもうれしい。
マーガレット・リバーでは〈ガブリエル チョコレート(Gabriel Chocolate)〉も有名だ。カカオ豆からチョコレートバーになるまでを一貫して製造するBean to Barを貫く専門店で、豆の味わいをとことん生かす独自製法が自慢。
産地やカカオ含有率(%)、フレーバーなどがそれぞれ異なるチョコレートを多彩に扱っている。テイスティングでは、甘み、酸味、苦味にはっきりと違いがあって、舌の上で変化する繊細な味わいにも驚く。店内の奥で販売しているアイスクリームは、選ぶならやっぱりチョコ味。みずみずしい芝生の庭でいただけるのもゼイタク。
そうそう、チョコレートといえば〈ナカムラチョコレート(Nakamura Chocolate)〉も現地で人気だ。アボリジナルと交流をつづける日本人ショコラティエール・中村有希さんが、現地に古くから伝わるブッシュフードやブッシュフレーバーなどを現代風にアレンジしている。こちらはパース市内のギフトショップなどでも出合える。
マーガレットリバーから車で50分ほど北上すると、海辺の街バッセルトン(Busselton)に到着する。この街はとにかく桟橋が有名で、90年間にわたって延ばした結果、南半球最大の1.8kmに到達。桟橋の上をミニ列車がコトコトと走ることから、ジブリ映画『千と千尋の神隠し』の海上に浮かぶ線路のシーンのモデルになった……とのウワサも。珍百景タイプの絶景が好きな人にはたまらない。この海辺のごちそうは、ニューフェイスのビールとシーフードだ!
ワインが大好きなオージーたちだけれど、ビール人気も負けてはいない。海をのぞむ最高のロケーションに、昼間からビールを楽しむ人たちで大賑わいの〈シェルター(Shelter)〉がある。店内の奥には3階分はあろうかという巨大な銀色のビールタンクが並び、直接タップへとつながっているから、飲めるビールの鮮度は最高。常に7種類の定番を揃え、季節によって増えるそう。
ムール貝は西オーストラリア州の名物。〈シェルター〉のメニューには、定番タイプと辛いタイプの2種類があって、注文すると鍋で登場。どちらもトマトベースの滋味深いスープに浸かってイイ香り。フォークもあるけど、指で殻をつかんで口元を真っ赤にしながら豪快にむしゃぶりつく。青い海を見ながらバケツを抱えてビールをグビリ。その豪快さに、ひととき海賊気分になれる料理だ。
バッセルトンからパース市内に向かう国道1号線の道中に、ドライバーたちに人気のカフェ〈ザ クックド キャロット(The Crooked Carrot)〉がある。店内には自家製ベーカリーのサラダやロールパン、サンドイッチなどに加えてミートパイがずらり。これがオージーたちの大好物。聞けば、近年は環境保護の一環として牛肉の代わりにカンガルー肉の消費が推奨されているのそうで、カンガルーのミートパイも地元の定番。いただくと、赤身の牛肉……いや、シカかな? ちゃんとおいしいから、見つけたらぜひ挑戦して。
パースから電車で30分ほどの海辺の港町フリーマントル(Fremantle)は、地元では「フレオ」と呼ばれて親しまれる場所。ローカルが、「ここは世界で一番19世紀っぽい港町だよ!」と話す通り、イギリスから入植して開拓した時代の面影を残す歴史的な建物が立ち並ぶ。大きな漁港もあって、パースの料理人たちが新鮮なシーフードを求めてやってくる台所でもあるのだ。
イギリスの専売特許かと思いきや、パース在住のローカルたちが「いや、ウチのほうがうまい!」とゆずらないのが「フィッシュ&チップス」。確かにパース市内で出合った一皿は、カラッと揚がり外はカリカリ中はフワフワな顔よりも大きなフィッシュがとても美味だった。
そんなフィッシュ&チップスで極上の味を求めるなら、フリーマントルにある有名店〈シッセレーロ(Cicerello’s)〉へ立ち寄りたい。メニューに目を通すと、「Trevally(アジ)」、「Sole(カレイ)」など魚の名前のオンパレード。いろんな種類のフィッシュ&チップスが味わえる。山盛りポテトフライといっしょに、南半球の鮮魚にかぶりつこう。
フリーマントルのマーケットから歩いて10分。新しくできたレストラン〈エミリー・テイラー(Emily Ttaylor)〉は、点心などが人気のアジアンレストランだ。店名は、かつてアジア経由でイギリスとフリーマントルを結び、お茶やスパイスなどを運んでいた船に由来する。エキゾチックな食材をたくさん運びつづけたエミリー号のように、地元の新鮮食材とアジアの豊かな風味をミックスする料理をふるまうというのがお店のコンセプト。店内の熱と活気にあおられながら、船乗り気分で食べまくろう。
そういえば、クオッカが暮らすロットネス島に新しくできたレストラン〈ロンタラ(Lontara)〉もアジアン・キュイジーヌで活況だった。近年の西オーストラリアのグルメ界はアジア料理がちょっとしたトレンドなのだそう。お見逃しなく!
駆け足でお伝えした西オーストラリア州で食べたい10のグルメ。ほかにもあなたの好きな一皿、味、食材を探してみてください!
気候:南半球に位置するパースは、2月が真夏、7月が冬にあたる。ただ、地中海性気候で冬でも最低気温は7℃程度と過ごしやすい。晴天をのぞむなら12~3月頃の観光がオススメ。
服装:日差しが強いため、サングラスと日焼け止め、帽子をお忘れなく。夜は冷えるのでカーディガンがあると便利。
時差:日本の−1時間。
アクセス:日本・パース間のを直行便は運休中だが、2023年秋から復旧する。その場合、東京からの平均飛行時間は10時間ほど。
通貨:オーストラリアドル(1豪ドル=90円:2023年5月現在)。クレジットカードでの決済が盛んで現地通貨への両替の必要がないほど。
その他:入国時はオンラインでETAS(電子入国認可システム)に登録する必要がある。
supported by
オーストラリア政府観光局 https://www.australia.com/ja-jp
西オーストラリア州政府観光局 https://www.westernaustralia.com/