イタリアの強豪リーグで研鑽を積み、パリ五輪でも日本代表とした活躍した髙橋藍さん。2024-25シーズンは「サントリーサンバーズ大阪」に所属し、日本のリーグでプレーすることも話題になっています。
20歳でイタリアへ降り立ってから、何を感じ、何を吸収してきたのか。
日々の生活や成長について、ジェラートを片手に聞いてみました。
TRANSIT61号イタリア特集に掲載のインタビューの一部を、特別に少しだけご紹介します。
Photo : Hinano Kimoto
Text:Keisuke Kimura
イタリアといえばジェラートが有名。髙橋選手は現地で食べていますか?
髙橋藍さん(以下、高橋):滞在するシーズンが冬なので、あまり食べてないですね。久しぶりに食べました。おいしいです(笑)。
髙橋選手は現在、イタリアのプロバレーボールリーグであるセリエAでプレーされていますが、所属チームがあるパドヴァはどんな街なんですか ?
髙橋:ヴェネツィアから車で20分のところにある中規模の街です。歴史が古くて、1222年創立のイタリアで2番目に古い大学もあったりして。昔はそこでガリレオが教鞭を執っていたそうです。
2シーズンをイタリアでプレーされてきましたが、日本でのプレーと異なることはありますか?
髙橋:地元パドヴァのファンが熱心に応援してくれるのが好きですね。試合のときは自分ごとのように一緒に喜んだり怒ったりしてくれるし、街でも頑張れ、と声をかけてくれるんです。
住み心地はいかがでしょう?
髙橋:きっと食事が口に合うかどうかで左右されますよね。その点、イタリア料理はなんでもおいしいので、気持ちよく暮らせています。体を気遣って朝と夜は基本的に自炊をしていますが、昼は自由にイタリアの料理を食べることにしています。
髙橋選手の好きな料理はなんでしょう?
髙橋:一番好きなのは、アマトリチャーナというパスタ。パンチェッタを使っていて、カルボナーラのトマトソース版みたいな感じです。よく行く店のマスターに「藍はどうせ今日もアマトリチャーナだな?」って言われるくらい食べてます(笑)。
馴染みのお店があるなんて素敵ですね。
髙橋:住んでみて初めて知ったこともあります。たとえばイタリアといえばエスプレッソ文化ですが、 細かい決まりがあるんです。ミルクを入れるカプチーノは朝10時までしか飲まない。昼にカプチーノを飲もうとすると「いまカプチーノ?」と怪訝な顔をされます(笑)。ちなみに、練習や試合の前にも、エスプレッソをキュッと飲みますね。
スポーツドリンクではなくエスプレッソを?
髙橋:体育館にエスプレッソマシーンがありますからね(笑)。どのチームも持っていますよ。
食事は3時間かけて食べると聞きました。
髙橋:そうなんです、長いんですよ(笑)。試合後にみんなでご飯を食べに行くと、料理はコースで出てくるし、おしゃべりもするし。最初の頃は言葉の壁もあって、早く帰りたいなと思うこともあっ たけど、チームメイトとの距離も近くなると、時間なんて気にしなくなりましたね。
言語が違うので、コミュニケーションも大変かと思います。
髙橋:最初はイタリア語はもちろん英語もできない状態だったので、意思疎通が難しくて。
現在はいかがですか?
髙橋:いまは積極的に自分からも話せるようになってきました。最初の頃に比べるとだいぶコミュニケーションはとれていると思います。
イタリア人との文化や習慣の違いで、戸惑いみたいなものはなかったんでしょうか?
髙橋:日本人は感情を表に出さない人が多いですけど、イタリア人はとにかくはっきりしています。 怒るときも、機嫌がいいときも、本当にわかりやすい。バレーをするときはとくにそれがありがたかったですね。ちなみに、同じくイタリアでプレーする石川祐希選手とご飯を食べに行くと、イタリア人と日本人の違いで大盛り上がりするんです。
髙橋選手は、感情を隠すタイプ?
髙橋:やっぱり日本で生まれ育った以上、気を遣って人に合わせることは多い。だけど、徐々に感情を表に出すようになってきましたね。
ほかに、日本人選手とイタリア人選手の違いがあれば教えてください。
髙橋:彼らは自分の意見ははっきり言います。たとえば監督から指示があっても、少しでも違うと思えば、自分の意見をしっかり伝える。日本人だと「わかりました、やります」って鵜呑みにすると思うんですよね。最初は驚いたけど、ひとつのプレーに対してお互いの意見を言うことで信頼関係を築ける。その姿勢は大切だなと感じています。
その感覚を日本代表にも持ち込んでいると。
髙橋:そうですね。以前よりも積極的に監督と会話するようになりましたし「ぼくはこう思うけど、どう思う?」みたいな議論も増えました。監督の意見に従うことも大事だけど、ストレスが溜まるし、議論をすることで一番いいかたちを見つけられるので。
2023-24シーズンからは、ロンバルディア州のモンツァでプレーすると伺いました。訪れたことは?
髙橋:試合で行ったことはあります。モンツァも大きい街ではないので、パドヴァとよく似てるのかなと思います。チームに関していうと、監督もチームメイトも変わるので、自分のプレースタイルがどうなっていくのか楽しみですね。
今後も、ずっとイタリアでプレーしたい気持ちはありますか?
髙橋:場所にはこだわっていなくて、日本にも素晴らしい環境はあるし、自分の成長は自分次第だと 思ってます。ただ、いまはイタリアでプレーすることが成長につながると思っているので、とにかく1年1年、集中してバレーをやるだけです。
インタビューのつづきはTRANSIT61号「いつだってイタリアが好き!」に掲載しています。
本誌もぜひチェックしてみてくださいね。