心を揺さぶったのは、映画そのものだけじゃない。きらきらと輝く海、星空、穏やかな風。しまなみの島々で観た映画は、作品だけじゃなくて、島のまとう空気とともに、あたたかく、美しい記憶として刻まれている気がするのです。
広島・尾道駅から30分ほど車を走らせ、しまなみ海道をわたったところにある、生口島(いくちじま)。ちょうど愛媛県との県境にあり、車なら一周しても30分くらいの小さな島。この生口島を中心に、9月27日(金)〜29日(日)の3日間にわたって開催された、「しまなみ映画祭」の様子をレポートします!
Photo & Text:TRANSIT
今年2024年に初開催となった「しまなみ映画祭」ですが、ユニークなのが生口島や大三島など4つの島を横断して開催されていること。各島の個性に合わせた映画のラインナップやマルシェが開催されており、映画を観るだけでなく、島めぐりも同時に楽しめてしまうんです。
編集部メンバーがまず訪れたのはメイン会場となる生口島。レモン栽培が盛んな島で、最近は瀬戸田という町に〈Azumi Setoda〉や〈SOIL Setoda〉などおしゃれなホテルもたくさんできているとあって、しまなみ海道のなかでも注目度は俄然高め。今回の映画祭の起点となるのも生口島になっています。
会場の生口市民スポーツ広場に到着すると、白を基調にしたかわいらしいマルシェがお出迎え。瀬戸田やしまなみの名店から各地から出張しているフードやショップ、ボディペイントのブースなどが揃います。「逗子海岸映画祭」を主催する〈CINEMA CARAVAN〉のコーナーも!しかも、このマルシェ会場のテントは地球環境に配慮し、すべて竹で、しかも手作りで作られているのだそう。
早速、ブースで島の名物を頼んでみることに。瀬戸田で愛されるごはん処〈御食事処ちどり〉では、島のレモンをその場で絞ったレモンサワーを発見。まだ青々とした色合いが美しいグリーンレモンのサワーは、酸っぱくて爽やか、まだ少し暑い9月末の島の気温にぴったりな1杯でした。
1日目の夜のラインナップは主に2つ。「逗子海岸映画祭」を主催するCINEMA CARAVANによるパフォーマンスと、世界中で大ヒットを記録したフランス発のヒューマンコメディ映画『最強のふたり』の上映。
パフォーマンスでは、TRANSIT55号「海の楽園」特集にも寄稿くださったCINEMA CARAVAN主催の志津野雷さんらが撮影した映像とともに、ライブ演奏を披露。夕暮れから夜へと移り変わる空の色を背景と穏やかな音楽が相まって、会場はリラックスムードに包まれます。
そしてしまなみ映画祭の記念すべき1本目の上映作品『最強のふたり』が海辺のスクリーンに映し出される。事故の後遺症で首より下が麻痺した大富豪フィリップと、その介護を引き受けるスラム街出身の黒人青年ドリスが、次第に打ち解けあい人生最高の友人となっていく様子を、ユーモアたっぷりに描いた作品です。
芝生に寝転んで作品を観ている人もいれば、ゆったりと椅子に腰掛けビール片手に観る人も。映画館で映画を観ると少し緊張するときもありますが、しまなみ映画祭の会場にはゆったりとした時間が流れ、思い思いに映画を楽しむ姿が印象的でした。
そんな生口島会場、2日目の作品はなんと〈agnès b.〉がセレクト。選ばれた作品は……みんなが大好きな『アメリ』。2001年に公開され、フランスのみならず各国で社会現象を巻き起こしたあの名作を、しまなみの清々しい会場で観られるなんて!
『アメリ』は、不思議な青年ニノに恋した空想好きのアメリが巻き起こす、ユーモラスでちょっと変わった日常を描いた作品。そのストーリーはもちろん、赤を基調にしたポップでキュートな画づくりも魅力なんです。星が瞬く夜空の下、大きく映し出されるアメリの世界は、やっぱりとびきりおしゃれ!しかも芝生に寝転んで、お酒片手におしゃれな映画、なんてまさにフランスっぽい気がして、ときめきが止まりませんでした。
ちなみに、agnès b.は服やフードの出店もしていて、ロゴやフォトプリントTシャツのほか、アイスクリームやかわいいロゴ入りの紙袋に入ったポテチなど、映画と一緒に楽しみたいキュートなフードやプロダクトが並んでいました。とくにマンゴーのシャーベットは見た目のかわいさもさることながら、ねっとりと濃厚なマンゴーの味わいが◎でした。
というわけで、メイン会場・生口島と映画を堪能した編集部。ですが、実はしまなみ映画祭には、まだまだおもしろいコンテンツがもりだくさん。次の記事では、生口島以外の3つの島、大三島、大久野島、因島のことをレポートします!お楽しみに。