「私が出合った世界の民藝」特集ということで、世界を旅するTRANSIT編集部が取材先やプライベートの旅から持ち帰った民藝品を見せてもらおうと、編集部に「各々の思いが詰まった民藝品を持ってきて!」と声をかけてみた。
ここでは、編集部員それぞれのとっておきの品々を見ていこう。
© TRANSIT
かつてトルコに留学していたこともある編集部の川原田が選んだのは、かわいらしい鳥の置き物。
川原田
トルコ留学中、古くから陶芸が盛んな町キュタヒヤへの小旅行で購入したもの。キュタヒヤ陶器といえばお皿や壺などが定番ながら、私が選んだのは鳥の置き物。どこかとぼけた表情と、トルコの伝統的なモチーフであるチューリップ模様が描かれているところがお気に入り。思えばこれが、国内外で鳥グッズを収集しまくる沼の入り口でもありました……。
背面もとっても愛らしい
「たくさん持ってきちゃったんですよね……」と言いながら、リュックから何枚もの皿を取り出したのは、編集部の小野だ。
小野
土っぽさを感じる質感と、中国やフランスの影響を受けたらしき素朴な柄がかわいいソンべ焼。日本でその存在を知り少しずつコレクションしていたが、本誌のベトナム取材でとある案件の撮影現場に行くと、そこに大量のソンベ焼が!!! 時間を忘れて夢中で買い物した(撮影はちゃんとやりました)。
「僕、布の切れ端を持ってきました」とにっこり笑いながら、分厚めの布を取り出したのは編集部の鈴木だった。
鈴木
タイ・チェンマイにある〈パガヨー アンティークショップ〉で購入した、モン族の衣装の切れ布。手縫いのボコボコした感じと渋い色味、幾何学っぽい模様に惹かれ、用途は考えずに即購入。モン族の方々は帽子に付けていたらしいが、インテリアとして壁に飾っています。ちなみに同店は、他にもテキスタイルや天然染め、バスケット、山岳民族衣装など……タイの伝統工芸品が揃うオススメショップ!
最近、遅めの夏休みをとって2週間の中米旅に出かけていたTransit.jp編集長の津賀。
旅先で見つけたイチオシの民藝品は、絨毯村で出合ったラグだったという。
津賀
メキシコ南部にあるオアハカ州は、手づくりの村が点在するエリア。地域ごとに、木彫り、腰織り、赤い陶器、黒い陶器……など、村の人たちが丸ごと手仕事をしていたりするので、民藝好きにはたまらない場所です。
なかでもテオティトラン・デル・バジェという村は、サポテコの人たちが毛織物をしているところで、私はここで出会ったタペテ(ラグ)にひと目惚れ。ベースの茶色は羊の毛そのものの色。赤とピンクはコチニールというサボテンにつく虫の色を使った天然染料。羊の毛を紡いで、染めて、織るまで、すべて手作業。お値段もしっかりしてるけど、長く使っていてもヘタれないし、冬用にと買ったものの、毛足が短いので夏にもよくて、年中使えます◎。
テオティトランは街自体も伝統的な暮らしが残っていて、かわいい雰囲気。最初は取材で訪れたのですが、自分の夏休みでもまた再訪。のんびり散策するにもいい、小さな素敵な村ですよ。
次は、TRANSIT編集長菅原の選んだ民藝品。各地を旅してきたこともあり、「選定に迷ってしまって……」と笑いながら差し出した品々の中で目を見張ったのが、こちらのカゴ。
菅原
サルデーニャ島のカステルサルドはカゴ細工の街。カステルサルドの城内には、家の軒先でカゴを編むお母さんの姿がある。一つひとつ、配色もデザインも違う商品のなかから時間をかけてこの子を選んだ。素朴でかわいらしく、果物やお菓子をのせて使っている。今思えば、もっと買っておけばよかった気もする。
続いて、TRANSIT編集長の菅原が手にしたのは、中国・雲南省大理での思い出とともに、日々の暮らしで愛用されているというトレーだった。
菅原
大理にある古道具店で、地元の木彫り職人が作った丸型のトレーを購入。光り輝くトウモロコシ畑を借景に、家具や茶道具が所狭しと(しかし不思議と整然と)並ぶその店は、店主が趣味で営んでいるものだと聞いて驚いた。翻訳アプリを駆使し、淹れていただくお茶を飲みながらスモールトーク。今は茶器を置くトレーとして活躍中です。
最後は、統括編集長林。TRANSIT編集長の菅原と同じように、「選べなくてたくさん持ってきちゃって……」と言いながら、あっという間に机の上が民藝品で埋まってしまった。
林
10年以上前にソウルの骨董街「踏十里(タプシムニ)古美術商街」で出合った、アンティークの餅型。当時、TRANSITの姉妹誌で『BIRD』という雑誌をつくっていたこともあり、鳥モチーフに目が止まりました。お餅にスタンプのようにして模様をつける道具で、台座の裏面に模様が刻まれています。本来の役割としては裏面が重要なわけですが、お餅を作る機会がないので本棚の置物になっています。お餅に模様を刻みたい方がいたらお貸ししますね。
「本当は絨毯もあったのだけど、さすがに持って来れないし……」と、林は布をいくつか広げながら困ったように話す。そこで目を惹いたのがウズベキスタンの布、スダ二だった。
林
スザ二はウズベキスタン伝統の手刺繍の布で、現地では壁掛けやベッドカバーとして使われているもの。古都サマルカンドから車で40分ほど、ウルグットというまちのバザールにある店で手に入れたこちらは、推定50-60年前のオールド・スザニ。ティーポットのモチーフはウルグット地域の固有のものだそうで、スザニにしては控えめなベージュ系の色合いに惹かれました。実はウズベキスタンでは計3枚のスザニを手に入れたのですが、いまだ箪笥の肥やしになっています……。