毎日のようにサウナに通い、サウナがあれば国内外どこへでも足を延ばす女優の清水みさとさん。TRANSIT.jpの連載「清水みさとの世界のサウナ巡礼記」でも、その熱いサウナ愛をつづっているが、ついに2026年3月5日に『TRANSIT特別編集号 清水みさとの世界のサウナをめぐる冒険』が刊行した。
清水さんが、アイスランドをはじめ世界のサウナを巡り、実際に訪れたことのある世界と日本のサウナ&温泉スポット200カ所以上も解説。旅好きもサウナ好きも満足できる一冊だ。
そんなサウナ旅に誘う「TRANSITサウナ特集」をつくった清水さんに、制作の裏側を聞いてみた。
Text:Takamasa Kujirai / Photo:Atsuya Yamazaki(TRANSIT)
TRANSIT
『TRANSIT特別編集号 清水みさとの世界のサウナをめぐる冒険』の刊行、おめでとうございます!
TRANSITとしては「サウナ」だけをテーマにした初めての一冊。あとがきでも触れられていましたが、その始まりも奇跡的だったとか。
清水
そうなんです。初めてTRANSITにかかわったのは、インドでした。
以前からTRANSITは知っていて、『TRANSIT Travel Guide:India』を手にした写真をSNSに投稿したら、2025年の2月にTRANSIT.jpのインド特集でインタビュー取材を受けることになったんです(web記事「すべてが愛おしいジャイプール by 清水みさと」)。
TRANSIT
たしかにはじまりはサウナは関係なく、インドがきっかけでしたね。
清水
はい。でも、その取材終わりに編集部からwebでサウナ特集をつくる予定があるという話があったので、「え、それ私やります!だってこんなにもいろいろなサウナに行ってますよ、ほらほら」ってスマホの写真を見せながら売り込んだんです(笑)。
TRANSIT
さらにそのインタビュー取材で撮影に入っていたフォトグラファーの藤原慶さんが、その半年後にアイスランドで撮影旅を計画していることも判明。その旅に同行することを決めて、行動を起こしたそうですね。
アイスランドの〈Blue Lagoon〉で、サウナに加えて改めて温泉の魅力にもどっぷりハマる。
清水
はい。webだけじゃなくて紙にまとめられるかも、という話になって。
ただそれには制作費もたくさん必要になってくる。そこで、サウナ関係でお世話になっている方々に声をかけました。サウナという”素のままで向き合える場所”で、つながった人たちばかりなので声をかけやすかったし、「まあダメでもいいからやってみよう」という謎の強い精神が功を奏しましたね(笑)。
TRANSIT
みなさん、サウナを愛しているから「サウナが広まってほしい」という気持ちもあったんでしょうね。
清水
世界のサウナを知りたい人もきっといるかなと思って。最初は数ページだけでもいいと思って動いていたのですが、気がついたら一冊の本というスケールの大きな話になって驚きました。
TRANSIT
清水さんが、アイスランド、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニアの5カ国を巡り、さらには清水さん自身が実際に訪れたことのあるサウナ&温泉スポットから厳選した世界25カ国133カ所、日本全国76カ所の一覧など、旅好きもサウナ好きも満足できる超大作になっています。
サウナの本を一冊つくることにあたって、不安はありませんでした?
清水
ありましたね。私はサウナが大好きなので、つい熱くなりすぎてしまいそうで(笑)。
でも、この本ではその「サウナ好きの視点」と「客観的な視点」がうまく両立できたと思っているんです。
清水
たとえば、リトアニアのページにあるストーブの写真。これはサウナ好きにとっても珍しいストーブなんです。かといって、そういった写真ばかりだとサウナにそこまで詳しくない読者は楽しめないかもしれない。そのコントロールを編集部がしてくれて、本当に助かりました。
清水さんが珍しがっていたのは、リトアニアで出合ったサウナストーブ(誌面の左下)。
TRANSIT
サウナ好きと旅好きが交差するような、両者が興味をもてる内容になったわけですね。
清水
そういう意味だと、紀行文はかなり頭を悩ませました。最初に書いた原稿は、私が感じたことばかりの「ポエム」だけになっていて、読者に知ってほしい「伝えたいこと」がない文章でした。それでアイスランドとフィンランドはまるごと書き直したんですよ。
ここ何年かたびたびエッセイを書く機会はあって、2000文字ほどの文字数だったら、はじめから終わりまで自分の視点だけですらすらと書くことができるんですよね。ただ、このTRANSITのサウナ本で書いたような5000文字ほどの紀行文となってくると、はじまりと終わりが噛み合わなくなって思っていたように書けなくなってしまって。
今回の原稿はこれまでとは役割が違うぞと。私の視点に加えて、その土地のサウナ文化を伝えるという軸も必要なんだと気がついたんです。
そこで改めてTRANSITを読みなおしてみたら、紀行文のなかにも流れるように歴史やカルチャーが組み込まれていて、それが読者へ「伝えたいこと」の屋台骨となっていると気づいたんです。私が最初に書いたそのままの文章だとちょっと揺れたら崩れてしまう家だなと思って。それに気がついてから、このTRANSITのサウナ本では書き方を変えました。
サウナの聖地、北欧のアイスランド、フィンランド、バルト三国のエストニア、ラトビア、リトアニアを巡る旅へ。
TRANSIT
そんな苦悩をへて、サウナへの意識も変わりましたか?
清水
はい、紀行文を書きなおす過程で、その土地の歴史や地理や文化などをいろいろ調べるようになって、サウナの見方も変わりましたね。旅先の体験と知識が合わさることで、サウナの深い部分に潜っていった気がします。
サウナを通してこんなにも世界を知れる、世界に近づけるんだと、改めて実感しました。
TRANSIT
これまで行った海外のサウナも、知識を得ることで見方が変わる可能性もあるわけですよね?
清水
絶対そうですね。汗かいて気持ちいい~と楽しんでいたから……。それももちろん大事だけど、もう一回全部行ったらまた違う景色が見えるかも(笑)。
TRANSIT
この本で清水さんが紹介しただけで、200カ所以上ありますけど(笑)。
清水
「清水みさと選 世界のサウナガイド」と「日本のサウナ76選」の企画ですよね。ある意味、この一冊のなかで一番苦労しました。ここでピックアップしている施設は全部自分で訪れているんですが、数が多くて書き分けるのが大変でした。
TRANSIT
世界はともかく、日本は数も多いし、銭湯やスパはとくに似ていますからね。
清水
そうなんです! ぜひこれを見て、サウナに行ってほしいです。それだけの力作だと思っています!
TRANSIT
日本なら日帰りでも可能ですからね。
清水
そうですよ! 世界のサウナももちろんそれぞれに素晴らしいんですが、日本のサウナもやっぱり独自の進化を遂げていておもしろいんですよね。銭湯やスパなど見慣れたところ以外にもいろいろなサウナが全国にあるので、行ってみてほしいですね。
TRANSIT
全160ページにまるっとかかわった清水さんですが、もしまだページがあったら、どんな誌面をつくりたいですか?
清水
すべてこのサウナ本に出し切っているので、もうないんですが……!
強いていうなら1カ月間、一緒にアイスランドなどを旅して回った写真家の藤原慶さんとのやりとり、ですかね。
© Misato Shimizu
清水
旅って、どこへ行くかも大事だけど、誰と行くかも強く記憶に残りますよね。藤原さんと私の旅はなかなか珍道中で……。
旅の間、藤原さんと私が交代で車を運転していたんですが、私が暗い夜道を運転していたら、突然、車道にハスキーが飛び出してきたんです。幸い、急ブレーキをかけて事故にはならなかったのですが、そのとき藤原さんなんて言ったと思います?
「ねえ、ハスキーもさ、走馬灯見るのかな?」ですよ。犬の心配もだし、私の心配もしてほしかったな。
そのアクシデントもありつつ、その日の深夜2時にホテル着いたら、ロビーが真っ暗。危うくチェックインできなくなるところで……。私がハンドルを握る代わりに、到着が遅くなるから宿に連絡入れておいてねってお願いしたんだけど、藤原さんは忘れていたみたいで。
そういうエピソードがいろいろあります。ちゃんとこの本が完成して笑い話になったので、それを公開したいです(笑)。そんな藤原さんとは、お互い懲りずに「次はチリに行こうか」という話をしています。
TRANSIT
最後にあらためて、この本についてひと言お願いします。
清水
サウナは言葉がいらない場所なんです。会話がなくても、人と人は自然に交じり合えるし、言語が通じなくても同じ時間を共有できる。
旅先で現地の人と仲よくなりたいけど、そのきっかけが掴めないことってありますよね。サウナはどこも地元の人が集まる場なので、みんな私のことを見て「旅行者がいるぞ」と不思議がって話かけてくれたりする。私も彼らも裸や水着でケータイも何ももたずに、身振り手振りでコミュニケーションを取り合おうとする。
そういう意味でも、サウナ好きはもちろん、旅好きにも、旅先でサウナに入るのはいいと思うんですよね。とくに最初の5カ国の紀行文と写真は、そんな世界のサウナの魅力がギュッと詰まっています。
清水
それと、この本をつくっていて、私のサウナへの向き合い方も少し変化した気がします。もともと私のモットーは「ナイス・カスタマーでいよう」でした。これまでも自分のSNSやいろんなメディアでサウナを紹介してきましたが、あくまで「ただサウナが好きなひと」でいようと思っていたんです。
でもこの一冊をつくるなかで、“広める側”に立っている自覚をもつようになりました。サウナを「知ってほしい」という思いも、これまで以上に大きくなった気がします。
紀行文だけでなく、歴史やカルチャーがしっかり詰まった一冊になっているので、サウナ好きな人も、TRANSIT好きな方もぜひ『TRANSIT特別編集号 清水みさとの世界のサウナをめぐる冒険』を手に取って、サウナ旅を楽しんでいただけたらうれしいです。
清水みさと
奈良出身。大学生の頃から毎日のようにサウナに通うようになり、日本や国内外のサウナ旅を日々繰り広げている。サバンナ・高橋茂雄さんと〝サウナ婚〟をして自宅にもサウナを導入。夫婦でサウナのある暮らしを楽しむ。サウナ・スパプロフェッショナル、サウナ・スパ健康アドバイザーの資格をもつ。
奈良出身。大学生の頃から毎日のようにサウナに通うようになり、日本や国内外のサウナ旅を日々繰り広げている。サバンナ・高橋茂雄さんと〝サウナ婚〟をして自宅にもサウナを導入。夫婦でサウナのある暮らしを楽しむ。サウナ・スパプロフェッショナル、サウナ・スパ健康アドバイザーの資格をもつ。
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TRANSIT特別編集号 『清水みさとの世界のサウナをめぐる冒険』
生粋のサウナ好きとして知られ、日本はもちろん、世界中のサウナや温泉を巡ってきた清水みさとさんと、トラベルカルチャー誌『TRANSIT』のコラボレーション企画が実現。
清水さんがこれまでに訪ねた30カ国以上のサウナ&温泉旅を、TRANSIT的視点で編集したサウナガイドが一冊にまとまりました。フィンランドやエストニア、ドイツなど、清水さんが各国から厳選した充実のサウナ案内はもちろん、アイスランドにて撮り下ろした巻頭グラビアページ&旅のエッセイ、サウナの歴史や基礎知識をイラストや図解で読み解くTRANSITならではの読み物ページ、日本で楽しめる世界のサウナ一覧表など、サウナと温泉の紹介だけに留まらない、読めばサウナの旅に出たくなる本です!
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