北は北海道から、南は沖縄まで、ひとくちに日本といっても、食べ物、お祭、習慣、自然が織りなす景色まで個性はさまざま。その土地ならではの愉しみ方は、その土地の人に訊くのが一番!
ということで、連載「47都道府県ローカルのすゝめ」はじまりました。
中部地方の岐阜県からは、これからの季節にうれしいあったか〜い旅先「奥飛騨温泉郷」について。教えてくれたのは、学生時代のアルバイトをきっかけに飛騨温泉郷のファンになり、これまで県外の友人を何人も現地へ連れて訪れたという岐阜県観光国際部の川崎裕史さん!
Text:Hiroshi Kawasaki Special Thanks:岐阜県観光国際部
日本のほぼ中央に位置する岐阜県。富山県、石川県、福井県、長野県、愛知県、三重県、滋賀県の7つの県に囲まれた内陸県です。
北は奥穂高岳、乗鞍(のりくら)岳など、標高3,000mを超える山並みを眺める「飛騨(ひだ)地域」と、南は木曽川、長良川、揖斐(いび)川の木曽三川が流れる濃尾平野が広がる「美濃(みの)地域」があり、古くから飛騨の山と美濃の水という意味で「飛山濃水」(ひさんのうすい)と呼ばれています。
そんな雄大な山々や清流が織りなす多様な地形や気候を背景に、岐阜県には豊かな自然の恵みや伝統文化、暮らしの知恵が今もなお大切に受け継がれています。
旅好きな方には、白川郷合掌造り集落をはじめ、飛騨高山の古い町並、下呂温泉、郡上(ぐじょう)おどり、ぎふ長良川の鵜飼などのほか、温泉やスキー、アウトドアアクティビティ、さらには岐阜城や関ケ原古戦場といった歴史資源を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
このように多くの観光資源を保有する岐阜県ですが、そのなかでも今回は、全国有数の温泉地として名高く、大パノラマの紅葉が楽しめる秘境「奥飛騨温泉郷(おくひだおんせんごう)」を紹介します。大自然に身を委ね、心も体も満足する癒やし旅を堪能してください。
全国の人気温泉ランキングで常連の「奥飛騨温泉郷」。
奥飛騨温泉郷というのは、北アルプスの山懐に抱かれた平湯・福地・新平湯・栃尾・新穂高の5つの温泉地の総称。なんといってもその特徴は日本有数を誇る豊富な湯量にあります。
さらに、露天風呂の数はこの奥飛騨温泉郷内だけで100箇所超もあり、日本一ともいわれています。自然に溶け込んだかのような開放感たっぷりの露天風呂で、美しい山並みや渓流のせせらぎ、満天の星空などの絶景と静寂に浸れば、何にも代え難い至福の癒やしの時間になります。
奥飛騨温泉郷の場所は、長野県との県境にほど近く、飛騨の高山市にあります。JR高山駅・高山濃飛バスセンターからバスまたは車で東へ約1時間。奥飛騨温泉郷の玄関口である「平湯温泉」から、北へ「福地(ふくじ)温泉」、「新平湯温泉」、「栃尾温泉」へと続き、最奥エリア「新穂高温泉」があります。
そんな奥飛騨温泉郷の5つの温泉地の魅力を駆け足でみていきましょう。
5つの温泉地の中でもっとも歴史が古く、武田信玄が飛騨へ攻め込んだ際、老猿が湯だまりで傷を癒やしていたことが発見の由来といわれています。乗鞍スカイラインや長野県・上高地へアクセスできるバスターミナルがあり、奥飛騨観光の起点となる温泉地でもあります。2024年7月13日には、自然体験や山岳観光の拠点として「中部山岳国立公園奥飛驒ビジターセンター」がリニューアルオープンしました。
国道から1本脇道へ入った温泉地で、静寂に包まれた情緒あふれる雰囲気は奥飛騨温泉郷の中でも随一です。個性的な古民家・旅館も魅力。年中無休の福地温泉朝市では、地元の新鮮な野菜や果物、お土産物が購入できます。
奥飛騨温泉郷のほぼ中央に位置する賑やかで湯量豊富ないで湯の里。素朴な民宿から落ち着いた和風旅館、お食事処やカフェなどさまざまな魅力をあわせもつ温泉地です。こぐまを抱っこして記念撮影(期間限定)ができる「奥飛騨クマ牧場」もあります。
なんといっても、すぐそばを流れる川底が見えるほど澄んだ清々しい高原川と蒲田川が魅力。渓流魚の宝庫としても知られるこの地は、釣りファンにも人気なんです。庶民的で気どらない宿が多く、山菜や川魚を使った料理の数々が大好評。周囲が開けているため、渓流沿いの露天風呂からは美しい流れが満喫できます。
北アルプスを仰ぐ眺望抜群の露天風呂が自慢。自然と一体になったような開放感で、日頃の疲れがリセットできます。登山やハイキングのほか、気軽に絶景を眺望できる「新穂高ロープウェイ」を訪れる際には、ぜひ利用してみてください。白樺林のリゾートムードも後押しして、魅力は尽きません。
それぞれの個性が光る奥飛騨温泉郷。滞在地を1カ所に絞り切れない方には、各地に点在する立ち寄り湯や足湯もお薦めです。
また、湯めぐり手形「奥飛騨湯けむり達人」(1,200円)を購入すれば、加盟する宿泊施設の温泉に入浴することができます。奥飛騨温泉郷は泉質や湯温も多様で、無色透明な「単純温泉」、匂いが特徴の「硫黄泉」、美肌の湯といわれる「炭酸水素塩泉」などがあるので、温泉の違いを楽しんでみてください。
奥飛騨温泉郷一帯は例年10月上旬から紅葉がはじまり、11月上旬までカエデ、ナナカマド、ブナ、シラカバなどが赤黄色鮮やかに染まります。10月下旬には、運がよければ真っ青な空に新雪を被った北アルプスと紅葉の共演に出会うこともできます。また、福地温泉や新穂高温泉中尾高原で行われる夜のライトアップも幻想的です。
新穂高ロープウェイの紅葉はさらに早く、9月下旬頃から山頂駅(標高2,156m)周辺で色づきはじめ、10月上旬から下旬にかけて徐々に麓へと下ってきます。四季折々に大パノラマを楽しめますが、なかでも鮮やかな紅葉はまるで絨毯のよう。国内唯一の2階建てゴンドラが感動を届けてくれます。
そして、2024年10月11日、山頂駅である西穂高口駅の隣に、散策路テラスや展望カウンターデッキなど雄大な自然を満喫できる絶景を望む休憩スポット「頂の森」がグランドオープンしました。
このような鮮やかな紅葉もさることながら、温泉街が白一色の雪景色に変わる積雪が数メートルに及ぶこともある冬の奥飛騨もまた人気があります。氷点下の研ぎ澄まされた空気の中、満点の星や幻想的な雪景色を見ながら浸る露天風呂は格別の贅沢なのです。
飛騨の食といえば外せないのが「飛騨牛」。全国的な知名度も高いですが、口の中でとろけるような食感と肉の甘みが楽しめるきめの細かい霜降りが特徴です。新鮮な地元野菜との相性も抜群で、すき焼きやしゃぶしゃぶがお薦め。また、繊細な甘みと肉本来の旨みが堪能できるステーキも至極の一品です。ソースはもちろん、粗塩とワサビで食べてもそのうまさが一段と引き立ちます。
そして、高山市中心部に位置する古い町並みでは、散策しながら飛騨牛が食べ歩きできます。串焼きやにぎり寿司、コロッケ、バーガーが人気。しぐれ煮やカレー、ジャーキーなどもお土産にうれしい。
もうひとつは、奥飛騨温泉郷をはじめ、広く飛騨地域を中心に食膳を飾る「朴葉味噌」。秋になり茶色く落葉した大きな朴の葉に、地味噌やネギ、椎茸などを乗せ、そのまま焼きながら食べる郷土料理で、味噌が焼ける香ばしい香りが食欲をそそります。ご飯によく合うため、宿の朝食の定番メニューとなっていることも多いんです。酒の肴としても重宝されていて、お土産にもぴったり。飛騨牛を贅沢に乗せた朴葉味噌焼きは絶品です。
温泉、周辺観光、グルメなど多くの魅力が詰まった秘境・奥飛騨温泉郷。大自然の静寂に包まれて湯に浸りつつ、温泉から上がったら古民家・旅館の囲炉裏の前に座って、飛騨牛や朴葉味噌、岩魚(いわな)の串焼き・骨酒を。
自然の恵みをたっぷり受けた癒やしの旅を満喫しに、岐阜県の奥飛騨温泉郷を訪れてみませんか? 心温まるおもてなしが待っていますよ。
奥飛騨温泉郷
住所:岐阜県高山市奥飛騨温泉郷
アクセス:高山市・奥飛騨温泉郷
◆鉄道
・東京駅-JR高山駅 約3時間38分
(北陸新幹線 富山駅経由 高山本線「特急ひだ」)
・東京駅-JR高山駅 約4時間5分
(東海道新幹線 名古屋駅経由 高山本線「特急ひだ」)
・新大阪駅-JR高山駅 約3時間12分
(東海道新幹線 名古屋駅経由 高山本線「特急ひだ」)
・JR大阪駅-JR高山駅直通 約4時間15分 (「特急ひだ」)
◆高速バス
・バスタ新宿-平湯温泉 約4時間45分
(京王バス/濃飛バスにて。高山濃飛バスセンター(JR高山駅前)まではさらに約1時間)
・なんば-高山濃飛バスセンター(JR高山駅前)約5時間40分
(近鉄バス/濃飛バスにて)
◆その他、自家用車等アクセスの詳細はこちら
(一社)奥飛騨温泉郷観光協会
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