4月8日は花まつりの日。仏教の開祖・お釈迦さまの誕生を祝う大切な法要で、「灌仏会(かんぶつえ)」とも呼ばれています。
東京都等々力にある、等々力不動尊の花まつり。
© Guilhem Vellut
ソウルの灌仏会の様子。仏教の僧侶たちが、釈迦の誕生日を祝いソウルの中心街を練り歩く。
お釈迦さまが生まれたのは、今からおよそ2500年前、インドのルンビニーという花園の中だったと伝えられています。誕生にまつわる逸話も印象的です。生まれてすぐに七歩歩き、「天上天下唯我独尊」と高らかに宣言したお釈迦さま。その瞬間、天からは甘露の雨が降り注ぎ、大地は花々に包まれたとされます。
この伝説にちなんで、日本では小さな誕生仏像に甘茶をかけて祝う「灌仏」の儀式が生まれました。誕生仏は右手で天を、左手で地を指し、まさに「唯我独尊」を体現する姿で立っています。甘茶はアジサイ科の植物から作られた自然の甘味をもつお茶で、当日は参拝者にもふるまわれます。
東京都、芝にある大本山増上寺。
© Guilhem Vellut
日本で灌仏会が定着したのは奈良時代のこと。仏教が国の保護を受けて広まり、4月8日をお釈迦さまの誕生日として祝う風習が全国に浸透していきました。平安時代以降は宮中行事から寺院の法要へと移り、鎌倉・室町・江戸時代をへて庶民の間にも広く根づいていきます。寺の境内には「花御堂」という小さな花の祭壇が設けられ、その中に誕生仏を安置。春の花々に囲まれた空間は、訪れる人びとの心を優しく包み込みます。
なかでも、滋賀県大津市にある比叡山延暦寺で行われる花まつりは、とくに格式ある行事として知られています。延暦寺のある比叡山は、最澄(伝教大師)が開いた天台宗の総本山であり、日本仏教の母山とも呼ばれる霊峰。ここでは毎年4月8日に花御堂が華やかに飾られ、多くの参拝者が静かに列をなし、甘茶を注いでお釈迦さまの誕生を祝います。
© KimonBerlin
灌仏会の頃の延暦寺は、山桜やシャクナゲが咲き始める季節。自然と信仰が調和する風景のなかで行われる花まつりは、まさに“心の節目”にふさわしいひとときとなるでしょう。
忙しい毎日をほんの少し立ち止まり、花の香りとともに、静かで優しい祈りの時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
Yayoi Arimoto
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Yuki Kumagai
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