台湾南西部に位置し、北回帰線が 通る嘉義(ジャーイー)市。阿里山山脈を筆頭 に豊かな自然に囲まれた農業の都 市で、都市の便利さも備える。文 化路夜市、鴨肉飯、阿里山高山茶、 パイナップル、愛玉子(オーギョーチー)などが有名。
私たちが日常のなかで何気なく口にし、あるいは背伸びして食卓に取り入れる海外の食品たち。 海の向こうでは、唯一無二のおいしさを求めて生産者たちが愛情を注ぎ作っている。
連載第14回は、台湾料理に欠かせない食卓調味料、ピリリと旨辛なマーラージャンをお届け。
Ilustration:Hitoshi Kuroki Text:Alice Kazama
台湾南西部に位置し、北回帰線が 通る嘉義(ジャーイー)市。阿里山山脈を筆頭 に豊かな自然に囲まれた農業の都 市で、都市の便利さも備える。文 化路夜市、鴨肉飯、阿里山高山茶、 パイナップル、愛玉子(オーギョーチー)などが有名。
どこで何を食べてもおいしいのが台湾。食のアベレージがとんでもなく高いと思うが、これはひとえに台湾の人びとが“食べること” が大好きだからではないだろうか。それを裏打ちするのが、挨拶代わりに「你吃飯了沒(ご飯食べた)?」のフレーズが飛んでくることや、会話やメディアでも食の話題が驚くほど多いこと。屋台や夜市はいつでも大賑わい。食のためなら店の行列に並ぶのが苦にならない、という人が多数だとも聞く。
とくに台湾の人は「火鍋」への情熱が強い印象だ。昼でも夜でも、寒い冬はもちろん汗滴り落ちる真夏でも、火鍋レストランでフーッフーッとおいしそうに頰張っている。専門店に備えられたソースバーには数十種類のタレが並びセルフで組み合わせられるが、各々で調合のセオリーがあるようで、そんな話で盛り上がるのもおもしろい。
外食が盛んな台湾でも、市販のマーラージャンを使って自宅で定番の麻辣火鍋を作ることが少なくない。複雑に思える店の味も、おいしい調味料さえあれば家庭で手軽に楽しめる。国内で販売される多くのマーラージャンのなかでベストセラー
を誇るのが、老舗企業愛之味が展開する「愛之味マーラージャン」。シンプルな原材料ながらスパイシーな香りと豊かな味のブレンドが完璧で、舌の肥えた台湾の人びとをも満足させている。
愛之味の創立は1971年。77年に缶詰工場が完成し、台湾の伝統的な家庭料理、キュウリの醬油漬けを製品化したのが最初だった。缶入りデザートの開発に着手し、八宝粥、ピーナッツ豆花など手軽に食べられる台湾スイーツを提案。お茶を中心とした健康飲料の展開も行う。近年では缶入りの麻婆豆腐や台湾式ライスプディングなど、ユニークな商品も登場。研究所を持っており、自社ブランドの開発に余念がない。
台湾の伝統的な食文化をベースに、革新的に挑戦しつづける業界のパイオニア的な存在。そのなかで変わらないのは企業の理念で、50年前から“FOR A HEALTHY TOMORROW(明日の健康のために)” を掲げてきた。「おいしさと健康は共にあるべきだ」と語るのは取締役会長の陳冠翰氏。同社では材料の選定や検査に重きを置くだけでなく、製品の99%が肉を使わないグリーンプロダクト。今回紹介しているマーラージャンも、高品質な原材料のみで作られた、ベジタリアンにも対応するサステナブル商品だ。
「台湾では家族や友人が集まる年間行事には必ず特別な料理が付随します。また、ゲストが台湾を訪れた際には文化や歴史を感じていただくためにレストランや屋台にお連れするのが礼儀と考えています。そのように私たち台湾人が当たり前に行っている文化的、伝統的な食体験を提供することこそが、会社の役割だと思うのです」と陳氏。そんな愛之味が作り上げるこだわりの調味料は、文字通り一味違う。本物の台湾ソウルフードをぜひ体験してみてほしい。
創業者の息子。嘉義市出身。コーネル大学にて食品科技研究所博士号を取得。2018年に同社取締役会長に就任。マーラージャンには黒酢やニンニク、ネギを混ぜたい派。
ホームフレンドリーな、本格麻辣火鍋
自宅で手軽に作れる本場の麻辣火鍋レシピを紹介。鍋に水1000mlを沸騰させ「愛之味 マーラージャン」1瓶を加えよくかき混ぜる。肉や魚介、白菜、キノコなど好きな具材を入れ、全体に火が通ったら完成。味変はマーラージャンと相性のよいゴマ油、酢、醤油がおすすめ。他にも餃子のつけダレ、麺料理や炒め物、焼肉や焼鳥のタレまで万能な辛味調味料。「変わり種なら麻婆豆腐ピッツァや麻辣パスタをお試しください」と陳氏。
愛之味
マーラージャン
ピリリとしたしびれと華やかな香りの四川産花椒と唐辛子、エシャレット、醬油、唐辛子味噌などをブレンド。さまざまな料理に使える万能調味料。台湾国内のシェアが高く、受賞歴も。
TEL