2024年8月1日、歴史と文化が息づく水の都、大阪の堂島に〈フォーシーズンズホテル大阪〉が誕生した。東京の大手町、丸の内、京都など大都市に凛と佇みながらも、癒やしの時を約束してくれるフォーシーズンズ。大阪ではいったいどのような滞在ができるのか? 開業初日に早速、堂島へと向かった。
photography & text = TRANSIT
前日の天気予報では35度を超える猛暑を伝えていたが、最寄りとなる大阪・梅田駅から地下街を抜ければ、ほとんど暑さを感じることなく〈フォーシーズンズホテル大阪〉まで到着。地下街から地上へ出ると、すぐにその存在感に圧倒された。
ビル群の中でひときわ背が高く、船の帆をイメージさせるアイコニックな建物が、今夏新たに産声をあげた〈フォーシーズンズホテル大阪〉の入る「One Dojima」だ。
もともと堂島は、江戸時代には米市場があったり武家屋敷が並んでいたりと閑静なエリア。いまではスーツ姿の人が行き交うビジネス街でもあり、少し歩けば大阪中之島美術館があったり、堂島川や公園があるような、経済、文化、自然が共存する街だ。One Dojimaはそんな堂島の街並みにも溶け合う堂々とした佇まい。〈フォーシーズンズホテル大阪〉で過ごす大人な時間を予感させてくれる。
さまざまなタイプの客室があるが、どのタイプでも高層階からの眺めは約束されている。
就寝時にぜひ試してほしいのが、完全遮光による極上の睡眠体験だ。ベッドサイドのスイッチで簡単に昇降できる二重カーテンによって、光を一切遮断した空間を作ることができる。そこで朝を迎えると、普段の睡眠がどれだけ明るさに左右されているのか知ることができるだろう。
このホテルの28階には、モダン旅館を表現した「GENSUI(玄水)」という特別コンセプトフロアがある。
「GENSUI(玄水)」の宿泊者は同階に備わる日本茶サロン〈SABO〉にてチェックインや朝食が可能で、滞在中は常に旅館に宿泊しているような気分に浸ることができる。客室は誰もがリラックスできるような畳の香りに包まれていた。
ビジネスや観光、ショッピングなど、大阪滞在はだいたいびっしり予定が入るものだが、〈フォーシーズンズホテル大阪〉に宿泊するのなら、何の予定を立てていなくてもまったく問題ない。むしろそのほうが自分だけの時間と空間を満喫することができるかもしれない。
大阪の街の空気を感じたいというならば、一歩ホテルの外に出るだけでも水都・大阪をめいっぱい堪能できる。これも堂島という大阪の中心地に位置する〈フォーシーズンズホテル大阪〉ならではの大きな魅力だ。
お薦めは、ホテル近くに流れる堂島川から大川にかけてのリバークルーズ。サンセットの時間、シャンパンを片手に、川沿いの人びとに手を振っていると、どこか外国のリゾートに来たような気分にも。このリバークルーズはホテルで手配ができるのも嬉しいところ。
今後、大阪の水辺はより発展を遂げる予定という話も聞いたが、確かに大阪の街中には大小さまざまな川が流れている。かつての北前船の終着地、「天下の台所」と呼ばれた商業の街のより一層の発展は、水辺の活用にかかっているのかもしれない。
クルーズから戻る頃には、すっかり空腹に。
37階にあるレストラン〈江南春(ジャンナンチュン)〉は、夜景とともに本格的な広東料理を楽しめる。シェフであるレイモンド・ウォン氏が手がける料理は、見た目からもおいしさが伝わってくる。海鮮をふんだんに活かしたコースはお酒との相性もよく、特別な時間を紡いでくれる。
広東料理で満たされたあとも、特別な時間は終わらない。
〈江南春〉と同じフロアにある〈バー・ボタ〉は1日の締めくくりにピッタリだ。バーマネージャーのアンドレイ氏は日本に来てまだ間もないそうだが、以前は世界のトップバー50にランクインするバーで活躍をしていた実績がある。〈バー・ボタ〉のカクテルも彼自身が考案し、道頓堀の名を冠したものや、抹茶と柚子の風味を感じるものなど、その感性と日本への探究心が感じられる。
翌朝は少し早起きをして36階のウェルネスゾーンの一部を体験することにした。大都市にあってもゲストを癒やすべく、こうしたホテル共用部のウェルネス施設が充実しているのも、〈フォーシーズンズホテル大阪〉ならではの心遣いだ。
ここには日本古来のマッサージを受けられる〈THE SPA〉やプール、24時間使用可能なジム、そして大阪の銭湯文化を体現するような浴場とサウナが備わっている。
大阪の朝日に照らされたプールを眺めながらプールサイドチェアに背中を預けると、また夢のなかに戻っていきそうになる。いつまでもいられるような空間をなんとか脱出しサウナのある浴室へ。プールからそのまま男女別の浴室に向かえるつくりが、ノーストレスで嬉しい。
サウナ好きの筆者としては欠かさずチェックをしたかったサウナへ。作りは本格的なドライサウナで、数分のうちにしっかりと汗をかくことができる。男性浴室には水風呂も備わり、火照った体をクールダウン。まさか大阪の地上36階で”ととのう”ことができるとは思ってもいなかった。
朝食は1階の〈ジャルダン〉でいただく。 「ジャルダン」はフランス語で”庭”の意味があるが、その名の通り瑞々しいグリーンの溢れるテラス席での食事も可能。店内も光が差し込む明るい雰囲気で、良い一日の始まりを予感させる。
ここではブッフェスタイルと一緒に、オーダー形式のメニューからメインを選ぶことができる。メインには焼きおにぎり(エッグベネディクトのおにぎり版!)を注文。クリームのようなぷにぷにの卵の白身をつつくと、中から黄身がとろけてきた。
ブッフェに並ぶパンの種類の豊富さは驚くほどで、すべて食べてみたいという衝動もありながら、食べたら動けなくなるという理性をなんとか保ち、おいしくいただける量に厳選。
チェックアウトが昼12時なのも嬉しい。時間に追われることなくゆっくりと自分の時間を過ごすことができた。
丸一日滞在し、残ったのはとても心地のよい充足感。その理由が何なのかを思い返して気づいたのは、開業初日という緊張感がある中でも、スタッフが総じて笑顔で対応してくれたことだったと思う。
もちろん素敵な施設があってこそのラグジュアリーホテルだが、また帰ってきたいと思う大きな理由は結局”ひと”なのかもしれない。大阪を訪れるといつも”ひと”の優しさや寛大さに触れてきたが、今回それを〈フォーシーズンズホテル大阪〉で感じることができた。
大阪の普遍的な魅力とそこに吹く新しい風、その2つが見事に調和したホテルだった。