フランクフルトの南、シュトゥットガルトの北にあるブッヘンは1200年以上の歴史をもつ小さな町。人口2万足らずでありながら、多民族で祭りも多く活気に溢れている。川が流れ高地で穀類などの農作物栽培に適した環境。
私たちが日常のなかで何気なく口にし、あるいは背伸びして食卓に取り入れる海外の食品たち。海の向こうでは、唯一無二のおいしさを求めて生産者たちが愛情を注ぎ作っている。
連載第15回は、手軽で、栄養満点で、おいしい、ドイツの定番朝食・ミューズリーをご紹介。
Ilustration:Hitoshi Kuroki Text:Alice Kazama
フランクフルトの南、シュトゥットガルトの北にあるブッヘンは1200年以上の歴史をもつ小さな町。人口2万足らずでありながら、多民族で祭りも多く活気に溢れている。川が流れ高地で穀類などの農作物栽培に適した環境。
ドイツの朝食といえばミューズリー。オーツ麦や大麦、スペルト小麦など未精製の穀類をベースに、ナッツ、ドライフルーツ、シードなどを混ぜたシリアルだ。食物繊維、ビタミン、鉄分といった栄養素がたっぷり摂れる、手軽な健康食品として愛されている。そんなミューズリーの代表格が「サイテンバッハ社」。ドイツのミューズリーの生みの親で、国内でサイテンバッハ社を知らない人はいないほど生活に深く浸透している。サイテンバッハ社のアジア・マーケットを担当する王さんに話を聞いた。
ミューズリーが主流になるまでは、パンやシリアルなどシンプルでやや味気なかったドイツの朝食。これを一新させるには元製粉店の息子で現サイテンバッハ社の社長、ウィリー・ファンネンシュワルツ氏の並々ならぬ情熱と努力があった。
1970年代、ロックミュージック好きの青年ウィリー氏は父と一緒に製粉業に励んでいた。あるとき、原料の穀物を集めに地域の農家を訪れると、多くの人が生活習慣病を抱えている事実を目の当たりにする。「新鮮でナチュラルなものを食べているのに、彼らはなぜ病気になるのだろう」と混乱した。自身の研究の末、小麦粉や砂糖の精製方法に問題があるという結論に達する。白い小麦粉は栄養価の高い外側の皮の部分を取り除いているため、人びとはもっと全粒粉を食べるべきだと考えた。同社が掲げる「お客様に健康で100年生きてほしい」というアイデアもこのとき生まれた。
どうすれば皆が自発的に全粒穀物を食べるようになるのか?と自分自身に問いかけ、彼は多くの実験を行った。独学で機械工学を習得し、研究室にこもる日々。そうして完成した最初の製品、全粒粉のシュペッツレ(柔らかい卵麺)用小麦粉に対する世間の反応は冷たかった。当時、全粒粉は「豚のエサ」と呼ばれ、イメージを覆すのはたやすくなかったのだ。しかしウィリー氏は簡単に 諦めない。全粒粉を大きなフレーク状に丸め、ナッツ、ドライフルーツ、シードと混ぜて食べやすくし問題を解決した。カラフルでおいしいミューズリー、サイテンバッハ・ミューズリーの誕生である。その後、全粒粉は定番となり、彼が思い描いた「食の革命」の時代が本当にやってきた。
1980年に夫婦二人でサイテンバッハ社を立ち上げ、現在も家族経営。本社はオーデンヴァルト地区の小さな町、農業の盛んなブッヘンに構えた。地元の農家をパートナーに多くもち、フレッシュな原料が直接届く。創業当時から変わらず「クリーンな食品づくり」と「ナチュラルフード」を一貫して掲げ、新商品を開発している。同時にウィリー氏は大好きな音楽活動もつづけ、自らCMソングを書き下ろしラジオで流していたことも。世間では「Mr.サイテンバッハ」と呼ばれ話題に。
こだわり抜いた品質、誠実なものづくり、そして食べる人がずっと健康であってほしいという願い。その背景を知ると、サイテンバッハ・ミューズリーのおいしさがさらに深まる。心にも体にもやさしく響く一杯で、気持ちの良い一日を。
台湾出身。サイテンバッハ社で唯一のアジア人として、2022年からアジアのマーケット全般を担当。お腹が空いたらミューズリーをス ナックのよに食べるのがお気に入り。
健康でフレーバーフルな、らくらく朝食。
朝食を2回食べるドイツでは、朝一番の食事として手軽なミューズリーが選ばれることが多い。牛乳やヨーグルトをたっぷりかけるのが主流。ハチミツやジャムなどを加えるとより味わいが深まる。もっと手軽にしたければ、牛乳、ヨーグルト、バナナなどお好みのフルーツとミキサーにかける“ミューズリースムージー”を。ピーナッツバターやハチミツと混ぜて冷蔵庫で固めるだけの“ミューズリーバー”も食べ応えのあるおやつとしておすすめ。
サイテンバッハ
ミューズリー フォー
アクティブピープル
全粒のオーツ麦やスペルト小麦、大 麦に、パパイヤ、パイナップル、バナナチップスなどのトロピカルフルーツと、ナッツ&シードの贅沢ミックス。添加物やGMOフリーの100%自然派。
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Yayoi Arimoto
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Naoko Maeda
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