連載:ジャムの生まれる場所を訪ねて
ゴロンと大きく育ったみかんを収穫する農家さんたち。澄んだ青い海を前に広がる段々畑には笑い声が響いていた。
湖のように凪いだ海を見ながら、陽の光を一身に受けて育ったビタミンカラーの柑橘たち。瀬戸内海に浮かぶ大三島で車を走らせ果樹園へと案内してくれたのは、アヲハタで30年も原料調達に携わる木谷さん。太陽の光を浴びやすい傾斜を生かした果樹園ではさまざまな柑橘が手がけられていて、アヲハタ55オレンジママレードの主役となる夏みかんや冬だいだいもここで育っている。
おいしい柑橘の条件といえば水分量と糖度の高さだと思いがちだが、果樹園の人たちにとっての理想の柑橘は、味はもちろん見栄えがよくなくてはいけない。なぜならママレードは、黒点ひとつない皮を楽しむものだから。キズつけないよう、ベテランのお母さんたちがハサミでパチンと収穫。 集めた柑橘は果汁や果皮を一次加工する島内の工場へと運ばれていく。その加工パートを担う〈大三島果汁工業〉の淺野さんと、笑顔で情報交換をする木谷さん。これまで悪天候や災害で不出来だった年もあったけれど、互いの痛みを受け止めながら、逆境を乗り越えてきたのだろう。ふたりの間には、言葉では言い表せない往年のバディ感が漂っ ていた。
瀬戸内海の潮風と穏やかな太陽を浴びてすくすくと育った、大三島産の柑橘たち。
午前10時のお茶休憩を終えて収穫作業に戻ったお母さんは、柑橘農家に嫁いで50年のベテラン。
働きもののお母さんたちを背に、木谷さんと次に向かったのは愛媛の四国中央市にある〈藤田青果〉。もとは夏みかん栽培が盛んな土地柄だったが、いつしか伊予柑や紅まどんなといった高糖度が主流になり、1990年代には夏みかんの果樹園がどこも廃園寸前となった。そこで1992年に結成したのが藤田アヲハタ会。地元の農家さんと協働し、夏みかんの契約栽培をスタート。定期的な勉強会や情報交換で品質をあげ、全国屈指の夏みかん生産地に返り咲いた。
藤田青果の藤田さんと近藤さん。ふたりとも実家の庭には夏みかんが植えられていたそう。
ママレードの原料になる夏みかんは、硬さや味わいはもちろん皮の面の美しさも必須条件。
「たいていの契約栽培は5年ほどで関係が終わるのですが、アヲハタさんとはもう30年以上。この関係は奇跡です」と代表の藤田さん。おいしいジャムはおいしい素材から、という大前提以上に、おいしい素材はいい人間関係なくして成り立たない。そんなジャム作りの真髄を、行く先々の人びとと冗談を飛ばし笑い合う木谷さんの姿に見た。
4種のブレンド
ママレードに使用する柑橘は4種類。配合量が一番多いのが国産夏みかんで、酸味と爽やかな香りを担う。その ほか、芳醇な甘みはネーブルオレンジ、上品な苦みは冬だいだい、シビルオレンジと、4つの個性が一つの瓶に。
夏みかん
冬だいだい
シビルオレンジ
ネーブルオレンジ