音楽と食をめぐった
U-zhaanのニューヨーク紀行 vol.1
サンドイッチ散歩とマティーニの夜

Promotions

音楽と食をめぐった
U-zhaanのニューヨーク紀行 vol.1
サンドイッチ散歩とマティーニの夜

People: U-zhaan

TRAVEL&EAT

2025.04.30

11 min read

世界の経済とエンターテインメントを牽引してきた街、ニューヨーク。音楽をテーマにしたプレスツアーに参加しませんか? 編集部に届いた素敵なお知らせに、TRANSITから送り出したのは、タブラ奏者のU-zhaanさん。音楽と食に酔いしれたU-zhaanさんによるニューヨーク紀行を、3回にわたってお届けします。
第1回は、ニューヨーク到着までとマンハッタンのグルメを満喫したDay1とDay2についてーー。

Photography&Text = U-zhaan

Day1/U-zhaan in NY

NY 最初の晩餐

7年ぶりに乗ったニューヨーク便は満席だった。機内で水をもらいに行ったら、CAさんから「水と一緒にポテトチップスも持っていかなければならない。なぜなら、私たちが用意しているチップスは異常においしいから」と熱心に勧められたので、お腹は空いてないけれど一袋いただくことにした。あなたもきっとびっくりするはず、と言う彼女から手渡されたのは、カルビーの「堅あげポテト うすしお味」だった。

ジョン・F・ケネディ空港に着き、この日から2泊する予定の〈The Knickerbocker〉へ車で向かう。ニューヨークへは6回くらい来ているが、これまでは友人の家に泊めてもらっていたからホテルに宿泊するのは初めてだ。しかもマンハッタンの真ん中、タイムズスクエアすぐそばのホテルなんて今後泊まることはないかもしれないので、絶好のロケーションを満喫するべく、荷物を置いたらすぐに街を散策するつもりだった。だが、ホテルの大きくて清潔そうなベッドを見たらちょっとだけ横になりたくなる。

Information

The Knickerbocker(ザ ニッカボッカ)

住所

6 Times Square, New York

01

気がついたら真夜中になっていた。飛行機でもらったポテトチップスを夕飯代わりにかじりながら、「これ、もらっておいて良かったな」とアメリカン航空に感謝した。

Day2/U-zhaan in NY

サンドイッチ・デイ

朝、ホテルから歩いてストロベリーフィールズを訪れてみた。セントラルパークにある、ジョン・レノンを偲んだ記念碑だ。街のど真ん中にこれほど大きな公園が維持しつづけられていることにニューヨークの凄みを感じた。

さて、2日目の行程表に目を落としてみる。最初に書かれているのは11時からの「ア・マン&ヒズサンドイッチ|タイムズスクエア・ツアー」だ。タイムズスクエア付近でサンドイッチを食べ歩くツアーなのだろうか、と予測を立ててみたが、実際その通りだった。今日は3軒のサンドイッチ店を巡る予定だという。

案内人であるベンという陽気なオーストラリア人と待ち合わせ、ツアーに向かった。オーストラリアで弁護士をしていた彼は、ニューヨークで食べたパストラミサンドに衝撃を受けてサンドイッチのことしか考えられなくなり、この街でツアーコンダクターになったそうだ。「このツアーが終わったら、君はきっと日本の寿司すらもサンドイッチの一種だと思うようになるだろう」と言われ、「いや、ならないよ」と思った。
 
1軒目は〈All’Antico Vinaio〉。イタリア発祥の店だそうだ。1989年にイタリア人夫婦がフィレンツェに店を構えて営業を開始した同店は、2006年になり18歳の息子が経営に参加してから人気が爆発したらしい。2014年からはSNSも活用し、Instagramのフォロワーは現時点で91万人を超える。
 
ベンから渡されたのは、プロシュートとトマト、モッツァレラチーズ、それにバジルが挟まれたオーソドックスなサンドイッチだった。なるほど、どの具材もフレッシュでおいしい。人気が出るのもわかる。ただ、ちょっとサイズが大きすぎる。僕はホテルで食べた朝ごはんについて後悔し始めていた。ビュッフェよりも値段が安いという理由だけで、なぜ朝7時半からビーフステーキを注文してしまったのだろうか。

2軒目に案内されたのは〈Margon Restaurant〉という、小さなキューバ料理店だった。キューバ人が従兄弟3人で始めたこのレストランの従業員として働いていたドミニカ出身のラファさんが、店の経営権を取得したのが1987年。それ以来、夫婦で営業を続けているという。
 
ベンお勧めのキューバン・サンドイッチには、ハンバーガーのバンズとコッペパンを足して2で割ったようなパンが使われていた。具材は豚肉、チーズ、ピクルス、それにたっぷりとマスタードがかかっている。辛いのが嫌いじゃなければサルサソースも付けるといいよ、とベンが言うのでそれに従った。
なんというか、非常に重量感のあるサンドイッチだ。沖縄で食べる、ずっしりとしたスパムおにぎりのような迫力がある。これは腹持ちがよさそうだ。

店の奥さんが「サービスだ」と言って手羽元のグリルのようなものをくれた。お礼を言いながら、脳裏に「ありがた迷惑」という言葉が一瞬よぎったけれど、食べてみるとクリスピーでおいしかった。
 
歩いて3軒目へ向かいながら、正直もう食べられないなと感じていた。一歩一歩、進むごとに満腹感が増していく。ベンには申し訳ないけれど次の店では一口だけ味見するぐらいにしておこう、と心に決める。
 
案内されたのは〈Taco Mahal〉。Taj Mahal風のロゴが看板にあしらわれている。

「君はカレーに詳しいんだろう? インド人の旦那さんとプエルトリコ人の奥さんがお互いの国の味をコラボレートさせた、ニューヨークならではのインド風タコスを君のためにチョイスしたんだ」とキラキラした目で言うベンに、とてもじゃないが「もう満腹だからムリ」とは言い出せなかった。
カレー・タコスの具材はチキン・ティッカ・マサラ。バターチキンにも似た濃厚さと甘味があり、空腹時に食べたらテンションが上がりそうな味だった。

Information

A Man & His Sandwich  |Times Square Tour (ア・マン&ヒズサンドイッチ|タイムズスクエア・ツアー)

住所

Meeting point: Capital One Café (53 W 34th St, new York, NY, 10001)

01

ところで、これはサンドイッチを食べ歩くツアーだったはずだ。はたしてタコスはサンドイッチに入るのだろうか、という疑問がどうしても沸いてくる。ベンにそれを伝えると「それは大丈夫。7カ月前にインディアナでの裁判で、タコスとブリトーはサンドイッチだと認められたんだ」という信じがたいような最新サンドイッチニュースを教えてくれた。

ベン自身は最後まで一口もサンドイッチを食べなかった。

ベンと別れ、膨れに膨れたお腹を抱えながら次に訪れたのは「リンカーンセンター」。名前はよく聞くけれど、どんな場所なのかは今ひとつわからないでいたこの施設について詳しく教えてもらえるツアーに参加することになっている。
 
迎えてくれたのはガイドのラリーさん。俳優やダンサー、そして指揮者など、これまでさまざまなかたちでここにかかわってきたそうだ。たぶん70歳はすぎているのだと思うが声の張りも動作のこなしも若々しく、さすが元パフォーマーだと思わされた。
 
リンカーンセンターは舞台芸術の総合施設だそうだ。オーケストラ、バレエ、オペラなど、それぞれに合わせた専門の劇場が用意されている。
なかでも印象的だったのは、ニューヨーク・シティ・バレエの本拠地、デヴィッド・H・コーク劇場だ。バレエダンサーの特徴的なポーズ(名前を聞いたような気がするが失念した)をイメージして造られたという、180度アルプススタンドのような観客席は壮観だった。どの席からでも視界を遮られることなくステージに集中できるようになっているらしい。

Information

Lincoln Center Tour(リンカーンセンター・ツアー)

住所

Lincoln Center Plaza, Josie Robertson Plaza, New York City, NY 10023

01

そのほかの劇場にもさまざまなコンセプトがあって、それら一つひとつをラリーさんは大きく身振り手振りをしながら解説する。印象照明部屋や楽屋などの舞台裏も惜しげなく見せてもらえ、とても充実したツアーだった。ただ余りにもお腹が苦しかったので、なにか胃薬的なものを飲んでから参加できたらよかったなと思った。

劇場で自分の名前が目に入ったような気がして振り返ったら、席の案内板だった。

この日ラストは、宿泊しているホテル「The Knickerbocker」の探索ツアー。セールス&マーケティング・ディレクターだというスーツの似合うメキシコ人、マウリシオが部屋や共有スペースを案内してくれる。
 
1906年に開業して以来、ニューヨークのランドマーク的な存在として人気を博しつづけてきたというこのホテル。もともと600室あった客室を思い切って330室につくり替えたことで、より一層ラグジュアリーな空間として親しまれるようになったそうだ。
目と鼻の先にタイムズスクエアがあるという立地なのに、外の喧騒が客室内にまったく入ってこないのがすごい。火災報知器から出ている極微小な電気ノイズが聞こえてきてしまうくらい静かだった。
そしてこのホテルは、なんとあの有名なカクテル「ドライ・マティーニ」発祥の地としても知られているそうで、そのオリジナル・ドライ・マティーニをバーで飲ませてもらえることになった。テーブルの横までバーテンダーが来て、目の前でステアする。

1/〈The Knickerbocker〉のセールス&マーケティング・ディレクター、Mauricio Acevesさん。とてもいい人。

2/バーカウンターごと、バーテンダーが移動してきてくれる。

3/味がわかるふりをする日本人男性(47)。

4/2019年に発表されたザ・ニッカボッカ・マティーニ。こっちもうまい。

04

1907年に考案されたレシピのままだというマティーニには、オリーブは入っていなかった。ジンはイギリスの「プリマス・ジン」。オレンジビターがキリッと香る、すっきりとした味わいだ。
 
そして2019年に発表された新たなマティーニがあるというので、そちらも飲ませてもらった。こちらにはタンカレーが使われている。1907年のものより少し甘めで、飲みやすい。そしてどちらもなかなかに強いカクテルなので、時差ボケ真っ最中の身にはかなり効く。
 
「そろそろディナーにするのはどうかな。アメリカ人にはまだちょっと早い時間だけど」とマウリシオに促された。サンドイッチを食べ過ぎた日本人にとってもだいぶ早い夕食だな、と思いながらホテル内のレストラン〈Charlie Palmer Steak IV〉へ席を移す。マウリシオと相談しながら、2種のタルタル(牛肉、マグロ)、シーフードサラダ、それにステーキを2種類(熟成トマホーク&フィレ・ミニョン)をオーダーした。

どれも素晴らしかったが、やはり店名にもなっているステーキの完璧な焼き加減と重厚な旨みが記憶に残っている。ニューヨークに来るたびに必ず一度はステーキハウスを訪れるのだけれど、もしかするとここが今までのベストかもしれない。
 
ホテルツアーの最後はルーフトップバーでのナイトキャップだった。寝酒のことをナイトキャップと呼ぶのを、実はこの日はじめて知った。マウリシオから勧められた、唐辛子の入った辛いカクテルで乾杯して一日を終えた。これほどカロリーを摂取した日は今までの人生になかったな、と思いながら着替えもせずにベッドに倒れ、気絶した。
 

Information

アメリカン航空

アメリカン航空は、羽田とニューヨークのJFK国際空港を結ぶ唯一の米系航空会社。パートナー航空会社である日本航空と合わせて、毎日3便ニューヨークに運航しています。

 

なお、アメリカン航空が提供するロイヤリティプログラム(AAdvantage®)では、会員の皆様は、フライト、商品やサービスの購入、クレジットカードのご利用、ホテルでの宿泊、レンタカーなどを通じて、マイルやロイヤリティ・ポイントを獲得できます。AAdvantage® エコシステムでの利用金額に応じてマイルが加算されるなど、ほとんどのマイル利用でロイヤリティ・ポイントが加算。すべての会員向けに、早期搭乗、旅行やクレジットへの簡単なアクセス、特別キャンペーンなどの特典が用意されています。

02

TRaNSIT STORE 購入する?

ABOUT
Photo by

Yayoi Arimoto

NEWSLETTERS 編集後記やイベント情報を定期的にお届け!