今や大きな旅の目的のひとつにもなり得るサウナ。一度ハマると、もう大変。だってサウナは日本国内のみならず、世界中に溢れている。そんな未知なるサウナを求めて旅するのは、自他ともに認める生粋のサウナ狂、清水みさとさん。時間さえあれば(いやなくても)そこにサウナがある限り、臆することなく世界のどこかへ飛び出していく。そんな清水さんが出会った人びと、壮大な自然、現地独自の文化など、サウナを通して見えてきた世界のあれこれをお届けする新連載です。
Photo&Text:Misato Shimizu
真っ暗闇の中、ぽつんと浮かぶ「SAUNA」という赤いネオンサインを見つけるやいなや、わたしは一目散に走り出した。2019年、初めて訪れたフィンランドでのこと。
仕事で来ているにもかかわらず、うれしくてうれしくて、みんながいることもすっかり忘れて、自己中心の最たる行為に走っていた。
サウナ大国、フィンランド。ついにこの地へ辿り着いた興奮と、やっとこの地に辿り着いた安堵がないまぜになって、自分でも収拾のつかないテンションになっていた。
ヘルシンキ最古の公衆サウナ〈コティハルユ〉。
息を切らして1軒目のサウナに辿り着くと、道路沿いなのにタオル一枚の裸のおじさんたちがビールを片手に談笑していた。日本だったら即ポリス。
凍てつく寒さの中、明らかにサウナ上がりのおじさんたちの火照った体からムンムン湯気がたちのぼり、ほぼ覇王のそれだった(もしくは、肉まん)。
まだサウナに入っていないのに、初めて見るサウナの世界がそこにはあって、セッションでもしているかのごとくわたしの鼓動が鳴り響いた。
毎日必ずサウナに行くし、サウナのためなら津々浦々。それほどまでにサウナが好きで仕方がないのに、わたしは全然サウナを知らないという現実だけがここにあり、いてもたってもいられなくなった。
あぁ、知りたい。
サウナの世界をもっと知りたい。
そうなったら、もうそうせずにはいられないわたしは、自分のもてる時間とお金を世界のサウナを巡る旅に費やすようになった。株もNISAも一切わからないけれど、わたしは「経験」という自己投資をすることに決めたのだ。
以来、サウナを軸にわたしは世界と呼応する。
犬と一緒にサウナに入ったり(勝手に入ってくる)、オーロラの下で外気浴をしたり(フィンランドに来ると必ずオーロラに出くわすラッキーガール)、隣りのロッカーをおじさんが使っていたり(更衣室が男女一緒)、サウナの中でオナラをしたおじさんに、罪をなすりつけられたこともあったっけ(なんで?)。
旅の目的が「サウナ」だっていい。
観光名所に行かなくたって、サウナを巡ればそこに暮らす人たちの営みや息づかいに触れられる。
五感に響く。心を使う旅になる。
サウナがあれば、ありさえすれば、わたしは今すぐ世界の果てまで飛んでいくのだ。
そんなわたしの世界のサウナを巡る記録です。
この連載では、清水みさとさんの世界のサウナにまつわる旅の記録を月2回ずつお届けします。
俳優/タレント
清水みさと(しみず・みさと)
日本や世界中のサウナをめぐるサウナ狂としても知られ、ラジオ「清水みさとの、サウナいこ?」(AuDee/JFN全国21局ネット)のパーソナリティーを務めるほか、るるぶ「あちこちサウナ旅」、サウナイキタイ「わたしはごきげん」、リンネル「食いしんぼう寄り道サウナ」、オレンジページ「本日もトトノイマシタ!」など多数の連載を担当する。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・バルコニー』など舞台でも活躍中。
日本や世界中のサウナをめぐるサウナ狂としても知られ、ラジオ「清水みさとの、サウナいこ?」(AuDee/JFN全国21局ネット)のパーソナリティーを務めるほか、るるぶ「あちこちサウナ旅」、サウナイキタイ「わたしはごきげん」、リンネル「食いしんぼう寄り道サウナ」、オレンジページ「本日もトトノイマシタ!」など多数の連載を担当する。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・バルコニー』など舞台でも活躍中。
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