アイドルとして活躍しながら大学で西洋美術を学び、フランスの歴史や文化に関心をもつようになった和田彩花さん。 1年半のパリ留学で感じたフランスの魅力、美術への愛、そして見つけた「自由」について。
Photo : Ittetsu Matsuoka
Text : Takumi Okazaki
まず、フランスに興味をもったきっかけを教えてください。
和田彩花さん(以下、和田):最初のきっかけは、美術です。15歳のとき、仕事の集合時間を間違えて、東京駅で暇ができてしまったんです。それでたまたま立ち寄った三菱一号館美術館で、エドゥアール・マネの作品に出合いました。そこから西洋美術にハマって勉強するうちに、フランスの歴史や文化への憧れが膨らんでいきました。
大学で美術史を学ばれていたときは、どのようなことに関心をもたれていたんですか?
和田:私、フランス革命が好きなんです。私は19世紀の美術史を中心に学んだのですが、その時代は革命によって人権を勝ち取り、フランス人たちの心が自由に開かれていった時代でした。美術史と合わせてフランスの歴史を学ぶなかで、「社会は変えられる」という革命の精神を、いつの間にか内面化していたんだと思います。一方で私は日本の芸能界で、アイドルという仕事をしていて。「なぜ自分の生きる世界には自由がないんだろう」という意識が強くなっていったんです。
そのような経緯で、アイドルを卒業後、フランスへ飛び立たれたのですね。
和田:芸術とアイドル、真逆の世界を行き来するうちに、バランスがとれなくなっていたんだと思います。グループを卒業して、大学院を修了したらすぐに留学に行くつもりでしたが、ちょうどコロナがきて……。2022年にやっとフランスへ旅立つことができたんです。基本は語学を学んでいて、その合間で芸術に触れたり、ヴァカンスを使って国内旅行に出かけたりしていました。
念願叶ってフランスに着いた瞬間は、やはり感動しましたか?
和田:そうですね。でもおもしろかったのは、私が絵画を通して見てきたのは、19世紀のフランスだったので、「あ、現代は違う」って思いました(笑)。いろんなルーツをもった人がいるし。でも街並みは当時とあまり変わらなくて、それもまた驚きでした。たとえば、サン=ラザール駅。クロード・モネやマネをはじめとして名だたる画家が描いた駅が今も残っていて、本当に感動したのを覚えています。絵と同じ角度を探して、ここからこう描いたのかなと想像する時間が大好きでした。
「芸術の都」と呼ばれるパリですが、日常でアートを感じる瞬間はありましたか?
和田:企画されるアートイベントがとにかく多いです。各地区で無料で楽しめるイベントが日常的に行われています。クラシックからコンテンポラリーまで、ジャンルも幅広いので、飽きることがありませんでした。とくに印象的だったのが、道路を封鎖して設置されたステージで行われたダンスパフォーマンスです。私がそのときに見たのは、ヒップホップの要素も取り入れたコンテンポラリー・ジャズのダンスでした。物凄いクオリティで、こんなものが日常的に、しかも無料で見られるなんて、なんて素晴らしい環境だろうと思いましたね。
美術館に行かなくても芸術に触れることができるんですね。
和田:あと、よくチェックしていたのが”Vide Grenier”。「屋根裏を空にする」という意味で、日本でいうガレージセールのようなものです。専門の骨董品店が出店する蚤の市とは違って、一般の人たちがそこらじゅうで、使わなくなった家具や食器、洋服を安く売ってるんですよ。パリにいると、新しいものを買うことがあまりないんです。ものを大切にして、使えるものを使っていく。環境やエコの観点でも学びになりました。
アイドル・表現者
和田彩花(わだ・あやか)
群馬県生まれ。アイドル。2010年にアイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)でデビュー。2019年に同グループを卒業し、パリへ留学。現在はソロとして音楽活動をする一方、大学で学んだ美術など多様なジャンルに関しての活動の幅も広げている。
群馬県生まれ。アイドル。2010年にアイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)でデビュー。2019年に同グループを卒業し、パリへ留学。現在はソロとして音楽活動をする一方、大学で学んだ美術など多様なジャンルに関しての活動の幅も広げている。