犬にもやさしいスウェーデン。
アニマル・ウェルフェア先進国で
犬と暮らしてみれば

web特集|月刊TRANSIT「スウェーデンが描く北欧型社会」

犬にもやさしいスウェーデン。
アニマル・ウェルフェア先進国で
犬と暮らしてみれば

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2026.02.04

4 min read

「アニマル・ウェルフェア」とは?

「自分らしく生きる」ーーースウェーデンの人びとの幸福感の多くはここにあると思うのだが、その考え方は動物にも自然に当てはめられている。
 
たとえば犬との暮らしを見れば一目瞭然だ。
まず散歩の頻度が多い。ガイドラインでは、1日に3〜4回の散歩が必要とされている。また「ワーキングドッグクラブ」と呼ばれる団体が各地にあり、子犬のしつけから多様なドッグスポーツまで幅広く活動している。たとえば嗅覚を使って特定のターゲットを探す「ノーズワーク」は、家庭犬の飼い主にも人気で、競技会だけで年間1500回も開かれているという。犬はぬいぐるみではなく、運動や刺激を必要とする生き物だ。だからといって放し飼いにすればよいわけではない。人間社会に共生する以上、飼い主が管理しつつ、犬本来の欲求を満たすことが求められる。そこをスウェーデンの多くの飼い主はよく理解しているように思う。
 
スウェーデンの動物保護法には、犬が人との接触を必要とする「社会的動物」であることが明記され、長時間の放置や係留、ケージ飼いは禁止されている。これは犬に限らず馬にもおよび、群れで過ごす時間が保障されている。孤立は深刻なストレスとなるからだ。背景にあるのはアニマル・ウェルフェアの考え方である。「飢えや渇きからの自由」「病気や不快からの自由」に加え、「自然な行動をする自由」がとくに重視される。日本の動物愛護法が「終生飼養」を掲げるのに対し、スウェーデンは「どう生きるか」に価値を置く。生きるか死ぬかではなく、いかに生きるか。その根底には人びとの幸福感と同じものが流れている。
 
スウェーデンで実際に犬が飼いたくなったらどうしたらよいのか? ここからはそのステップを追いながら、人と動物がともに暮らすためのスウェーデン的心構えをみていこう。

STEP1
自分のライフスタイルで犬を飼うことができるのか考える。

はたして今の自分の状況で犬に十分な運動と刺激を与えられるのか、自分の性格やライフスタイルに合う犬種は何かを考える。犬種クラブやケネルクラブ※で相談することもできる。
※犬種クラブやケネルクラブは、犬の血統登録や犬種の保存・改良、ブリーダーや愛犬家の交流を目的とした全国規模の団体。

STEP2
ペットショップでは犬猫の販売は禁止。 ブリーダーから購入する。

犬種を絞ったら、ブリーダーを探す。ケネルクラブの規則に従う“シリアス”なブリーダーのリストは、犬種クラブなどから入手できる。実際にブリーダーを訪れ、今後どのように犬を飼っていくべきかについて話をする。

STEP3
すべての犬にマイクロチップが埋め込まれ、 飼い主は個人情報を登録する。

子犬が8週齢になると、飼い主はブリーダーから子犬を引き取る。ブリーダーはすでに獣医師による健康診断を済ませ、同時にマイクロチップを挿入している。引き渡しが完了した後も、ブリーダーは子犬の購入者を継続的にサポートする。

STEP4
犬のしつけは信頼関係を構築するため、 飼い主も一緒にトレーニング教室に通う。

多くの飼い主は子犬教室に通い、犬との暮らし方やしつけの方法を学ぶ。子犬教室は、どちらかといえば飼い主に知識を与えるための場であり、しつけを行うためのノウハウをここで得る。

STEP5
長時間の係留飼いやケージに入れての飼育は認められていない。

犬のウェルフェアを守るため、スウェーデンには犬の飼い方に関するさまざまな規則がある。係留飼いやケージ飼いは禁止されており、6時間以上犬をひとりにしないこと、1日に1回は必ず犬舎の外を散歩させることなどが求められている。

STEP6
仕事が忙しいなどの理由で家を長時間離れるときは、デイケアセンターに預ける。

犬を長時間ひとりにしてはいけないという規則のため、多くのデイケアセンターがある。職場に犬を連れて行ったり、家族や近所の人に交代で世話を頼むなど、さまざまな工夫が行われている。

STEP7
電車やバスなどの公共交通機関は、ペットと同乗できるエリアがある。

人と犬がともに生活できるよう、公共交通機関で犬を連れて行くことが認められている。ケージに入れる必要はない。ただし犬たちにはマナーのトレーニングが施されていることが前提。

GOAL!
犬との幸せな共生のために。

人間社会で犬と共生するためには、飼い主には犬の管理だけでなく、犬のニーズを満たすことを含め、多くの責任が求められる。かわいいから飼うという人間側の都合だけではなく、生き物同士、パートナーとして幸せに生きることを目指したい。

猫の場合|自由に室内外を行き来する生活。

ここまで犬についてみてきたが、猫を飼う場合はどうか。基本的に、猫は自由に室内外を行き来する生活を送る。室内飼いをする人もいるが、郊外に住む多くの人は外と家を自由に出入りできるように飼っている。猫にとって外を徘徊することは習性であり、同時にニーズでもあるためだ。

家畜や狩猟対象への動物倫理

スウェーデンにおけるアニマル・ウェルフェアは、愛玩動物だけでなく、家畜や狩猟の対象となる野生動物にまで広く浸透している。その象徴が狩猟法第27条で「獲物に不要な苦しみを与えない」と明記されていることだ。そのため日本で一般的なくくりわな猟はなく、銃などで手負いにした獲物を犬で探し出し仕留めることが義務となっている。家畜も例外ではない。日本では依然として広く利用されている豚の妊娠ストール(妊娠した母豚を体がほとんど動かせないほど狭い檻に閉じ込めて飼う方法)は禁止されている。スウェーデンでは母豚は自由に動き回り、自然な姿勢で子に授乳できるのだ。

Profile

藤田りか子

スウェーデン在住のライターかつドッグスポーツ愛好家。スウェーデン農業科学大学・野生動物管理学修士課程卒業。犬の読み物サイト「犬曰く」を運営。著書は『最新世界の犬種大図鑑』(誠文堂新光社)など。

スウェーデン在住のライターかつドッグスポーツ愛好家。スウェーデン農業科学大学・野生動物管理学修士課程卒業。犬の読み物サイト「犬曰く」を運営。著書は『最新世界の犬種大図鑑』(誠文堂新光社)など。

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