正式名称は「フィンランド共和国」。フィンランド語では「スオミ(Suomi)」とよぶ。(スオミは「フィンランド語」をさす場合も)首都は南部・フィンランド湾に面した南部の都市、ヘルシンキ。
●人口=約556万人(2022年10月)
●面積=33.8万km²(日本よりやや小さい)
●政体=共和制
●元首=サウリ・ニーニスト(2012年3月~。大統領2期目)
フィンランドといえば日本でも人気の高いサウナにムーミン、素敵なデザインのプロダクトに建築が思い浮かび、気になる国のひとつだという方も多いのではないでしょうか。
今回の記事は、TRANSIT webで世界のさまざまな国や地域、宗教などについての基礎知識をまとめる連載「What's?」のフィンランド編。なんと超特別!スペシャルゲストに、フィンランド大使館の参事官・レーッタさんをお迎えしてお届け。
TRANSITに掲載しているフィンランドの情報をご紹介しつつ、レーッタさんが教えてくれた、気になるフィンランドのカルチャーや豆知識をお送りします!
illustration=AYUMI TAKAHASHI /photography&text=TRANSIT
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正式名称は「フィンランド共和国」。フィンランド語では「スオミ(Suomi)」とよぶ。(スオミは「フィンランド語」をさす場合も)首都は南部・フィンランド湾に面した南部の都市、ヘルシンキ。
●人口=約556万人(2022年10月)
●面積=33.8万km²(日本よりやや小さい)
●政体=共和制
●元首=サウリ・ニーニスト(2012年3月~。大統領2期目)
「森と湖の国」といわれることもあるフィンランドは、都市部でも自転車で30分以内で森にアクセスできるほど、自然が身近な存在。多くのフィンランド人が日常的に森や生き物に親しんでいるとレーッタさんはいう。
「自然はフィンランドの大切な一部です。夏になると森の中に入ってベリーを摘んで、健康を維持するためにハイキングをしたり。冬には凍った湖に穴を掘って、サウナに入ったあとに冷たい水の中に入る、なんて楽しみ方をする人もいるんです。」
だが、近年は気候変動の影響を感じることも多いそうだ。
「身近なことでいうと、雪の量が減っていることでしょうか。冬場の雪や寒さは森の菌類や虫たちのバランスを保つためにも必要ですし、フィンランドの文化的にも重要な存在。子どもたちの代、そしてその先まで、ずっと守らなければならないと考えています。だからこそ、フィンランドは環境を守るための取り組みにも積極的に行っているんです」
そんな、フィンランドを語るうえで外せない自然や地理環境について、TRANSIT本誌「スケールが桁違い!フィンランドのでっかい自然」から一部抜粋してご紹介。データなどを交えアウトラインをつかんでいこう。
(※以下の自然や地理に関する情報はすべてTRANSIT本誌「スケールが桁違い!フィンランドのでっかい自然」の抜粋です)
国土に対する森林面積の割合は約75%と、世界で11番目、ヨーロッパではもっとも高い水準を誇る。伐採の仕方によって、1本の木ごとに4~5本植樹する必要があるといった森林法が定められ、大切に守られている。フィンランドの森林の多くは私有林で、国が管理しているのは4分の1ほど。
少なくとも18万(!)以上あるといわれる湖。1万年以上前、フィンランドはその全土が氷河に覆われており、氷河は大地をえぐりとりながら動いていた。氷河期が終わると、削られた跡に水がたまり、湖となったのだ。最大の湖は南東部・湖水地方にあるサイマー湖で、広さ約4,400km²と琵琶湖のおよそ6倍の面積をもつ。
国土の約4分の1が北緯66度33分以北=北極圏に属し、この地域を「ラップランド」とよぶ。夏には一日中日が沈まない白夜、冬には一日中日が昇らない極夜の時期があり、北部では2カ月間白夜・極夜がつづく場所も。
実は世界で2番目に島が多い国といわれ、その数なんと約18万以上。なぜこんなに島が多いのかというと、1万年前まで氷河の重みで沈んでいた地殻が、氷河がなくなったことにより隆起する「氷河性地殻均衡」現象のため。今も土地の上昇はつづいており、少しずつ島は増え領土も拡大している。
フィンランドの文化の代表的な文化を3つ挙げるとすると、「サウナ」「コーヒー」「ヨウルプッキ」だというレーッタさん。近年日本でも人気の高まっている「サウナ」は有名だが、なぜ「コーヒー」?そして「ヨウルプッキ」ってなんだ?
それぞれについて、TRANSIT本誌「フィンランド人の生態解剖」の内容を参照しながら詳しくみていきたい。
人口550万人に対して、320万個のサウナがあるといわれている。街の公共サウナから、田舎のコテージや家庭などのプライベートサウナ、また大企業の中や、集合住宅まであらゆるところに設置。コロナ禍以前の調査では59%以上の人が週に1回以上サウナに入ると回答。衛生のためだけでなく、家族や友人との団らんの場、またビジネス相手とのアイスブレイクの役割をも果たしている。
(※TRANSIT本誌「フィンランド人の生態解剖」から一部抜粋)
実はフィンランドは、1人あたりの年間コーヒー消費量が世界一(12㎏/1年)。平均すると毎日4杯のコーヒーを飲んでいることになる。その理由は諸説あり、日照時間が短く気分がふさぎがちになる冬にカフェインの覚醒作用が効く、水道水が綺麗だから普及した、などといわれている。雇用契約には、労働者にコーヒー休憩を取る権利があると記載されているほど。
(※TRANSIT本誌「フィンランド人の生態解剖」から一部抜粋)
レーッタさんも、ほぼ毎日コーヒー休憩をとるという。「フィンランド大使館でももちろんコーヒー休憩をとっていますよ。人や会社によってもまちまちですが、基本的には15時くらいに15〜20分ほど、コーヒーや軽いおやつをつまみながらリフレッシュするんです」
また、コーヒーはサウナ同様、フィンランドのおもてなしの心の表れでもある。誰かの家を訪ねたときなどには、必ず「コーヒーはいかがですか?」と聞かれるそうだ。
「そういえば、フィンランドにはコーヒーにまつわるおもしろい昔話があります。かつてコーヒーは高価で希少価値の高いものだったので、お客さんや牧師など大切な人にはおもてなしの気持ちを表すために濃いコーヒーを入れる傾向にありました。
その昔、教会の牧師が地域の人びとの家を訪問するしきたりがあったフィンランドでは、牧師はその都度濃いコーヒーをごちそうされる。つまり1日に5〜6軒の家を回る彼らは、1日に大量の濃厚なコーヒーを飲むことになるんです。だから、牧師は強いお腹、強い胃が必要だ、なんて言われていたこともあるんですよ」
ヨウルプッキとは、フィンランドのことばで「サンタクロース」のことをさす。 「サンタクロースは、コルヴァトゥントゥリというフィンランド北部・ラップランドにある山の中に住んでいるそう。ラップランドの都市・ロヴァニエミにはサンタ村とよばれる場所があって、世界中の子どもたちからサンタクロースへの手紙が届くんです」
ちなみにフィンランドでは、クリスマスは家族で集まる大事な祝日。伝統的なクリスマスの食卓には、 キンックと呼ばれる大きなハムをメインに、 ジャガイモやニンジンなどのオーブン料理が並ぶそうだ。おいしそう!
自然を大切にし、サウナやコーヒーを愛するフィンランドの人びと。そんな彼らは、どんな国民性のもち主なのだろうか?
レーッタさんは、「信頼」、「平等」、そして「SISU(シス)」の3つのキーワードが、フィンランドの国民性を表すことばとしてよくいわれるのだと語る。
「『SISU』は少し聴きなれないかもしれませんが、フィンランドのことばで、忍耐力というような意味。難しい状況でもそれを乗り越え、正しいことをしようと思う気持ちを表します」
この『SISU』は、他国による侵略や戦争など苦難の歴史を乗り越え、厳しい気候環境での暮らしのなかで身につけた精神であるという。フィンランド人たちはこのメンタリティに誇りをもっているのだ。
今回はフィンランドの概要を駆け足でご案内しました。
TRANSIT本誌では、この記事で紹介した自然環境や文化のみならず、四季折々の過ごし方や森の生態系など、フィンランドをもっと深く知ることのできる企画が満載です。
フィンランド大使館で報道・ 文化担当参事官
レーッタ・プロンタカネン
2020年10月より在日フィンランド大使館で報道・ 文化担当参事官として着任。コミュニケーション担当として、フィンランドが大事にする価値観や文化などを国内外に広める活動を行う。
2020年10月より在日フィンランド大使館で報道・ 文化担当参事官として着任。コミュニケーション担当として、フィンランドが大事にする価値観や文化などを国内外に広める活動を行う。