モンゴルの遊牧生活入門!
大草原の暮らしにおじゃまします

月刊TRANSIT/これが私のモンゴル旅

モンゴルの遊牧生活入門!
大草原の暮らしにおじゃまします

People: TRANSIT編集部

TRAVEL&EAT&WATCH

2025.06.24

10 min read

モンゴルの草原を旅してみたい。だけどちょっとハードルが高そう……。
そんな不安をおもちのみなさま、ご安心ください。ウランバートルから西に約60kmのところにあるツーリストキャンプ「Mongol Nomadic Camp」では、モンゴルの大自然と伝統文化を、気軽に、そして快適に体験できるんです。編集部が体験した日帰りモンゴル遊牧Dayのお話をどうぞ。

Photo : Hirotaka Hashimoto

Text : TRANSIT Special Thanks : SUNRISE PROMOTION TOKYO, DIPPS PLANET

いらっしゃ〜い!
ウランバートル中心部から車で西に1時間半ほど、中央県アルガラント村にある「Mongol Nomadic Camp」に到着。ゲルに宿泊できて、遊牧民の暮らしや乗馬トレッキングも体験できると聞いてやってきました。
 
伝統衣装デールと、帽子マルガイを身につけた遊牧民のみなさんが、相棒のラクダ、ヤク、馬とともにお出迎え。草原のオールスター勢揃いで、まるでドラマのオープニング。
 
それでは早速、遊牧民文化をのぞいてみましょう。

そもそも遊牧民って、どんな暮らし?

川や湖などの水場が少なく、農業に向かない草原や砂漠地帯で、牧畜を主な生業とするのが遊牧民。
彼らのパートナーは、厳しい気候条件に耐えることのできる「馬、牛、ラクダ、羊、山羊」の五畜。肉や乳は食料に、毛皮や革を衣類や生活用品に、移動・運搬手段としても欠かせません。文字どおり、家畜とともに生きる自給自足の生活です。
 
現在、モンゴル全体の人口の約1割が遊牧民というデータもありますが、兼業も含めると3割ともいわれています。

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モンゴルに暮らす遊牧民が飼っているのは、主には馬、牛、ラクダ、羊、山羊だが、場所によってはトナカイ、ヤク、犬鷲を飼って生活に役立てながら暮らしてきた人びともいる。

遊牧=移動。その暮らし、家畜ファースト。

家畜のエサと水を求めて、遊牧民たちは季節ごとに移動します。冬は暴風雪をしのぐ谷間の地形に、夏は川のある平地へ。新しい生命を迎える家畜の出産期や、夏の毛刈り、肉の保存、越冬など、自然や生き物とともに生きる、そんな遊牧生活を支える家が、移動に適したゲルなのです。
 
このゲル、なんと大人4名もいれば1時間ほどで組み立て完了だとか。ゲルの骨組みは格子状の折り畳み式で、牛やラクダに積んでお引っ越し。ご近所や親戚総出での大移動です。

夏の風物詩、フェルト作り!

訪れた6月初旬は、羊毛でフェルト作りの真っ最中!
遊牧民たちの夏は、羊の毛を刈り、断熱性や防水性に優れたフェルト作りを行う季節。フェルトは、ゲルの壁や天井、床材などに使う、大事な大事な素材なのです。
 
刈り取った長い羊毛を広げて濡らし、両手に棒を持ってひたすら叩く! こうして繊維の束をほぐし、均一な厚さに並べます。水を撒いてローラーに巻き付け、外側から牛革でくるみます。それを紐でしばり、馬やラクダで引いて転がすと、フェルトが圧縮して、硬くなります。
 
作業中は、祝いの言葉を歌いながら羊毛を叩くのが伝統的なスタイル。リズムに合わせて、叩いて叩いて、また叩く!

ゲルの中にお邪魔します!

ゲルの内部は、中央部に2本の柱、放射状の垂木が天井を支え、壁は格子状の木とフェルト仕上げ。窓はなく、「トーノ」と呼ばれる丸い天窓の枠から光が射し込みます。その下にはストーブ兼かまどがあり、料理も換気もばっちりです。
 
間取りはワンルーム、角も壁もない開放的設計。入口から向かって左側が上座(男性)、右側が下座(女性)というシンプルな空間構成になっています。このゲルの中に、遊牧民の衣食住のすべてがつまっているのです。

ちょっと一息、遊牧民のおもてなし

モンゴルの塩入りミルクティー「スーテーツァイ」でおもてなし。茶葉を煮出して、生乳と塩を加えたもので、甘味はありませんがじんわり沁みる味わい。

さらに小さな揚げパン「ボールツォグ」(写真左)、ミルクでできた「アーロール」(写真右)もいただきました。アーロールはヨーグルトのような酸味がクセになるおいしさで、家畜の恵みそのもの! 遊牧民の食は肉と乳のものが基本で、それぞれ「赤い食事」「白い食事」と呼び、夏はほとんど「白」中心の食生活です。

ゲルの壁ではお酒を発酵中。馬の生乳を牛の皮袋「フフル」に入れて発酵させると、馬乳酒「アイラグ」ができあがります。発酵の過程で乳酸菌がビタミンを生成し、大事な栄養源に。家畜の毛皮や革は衣類や道具にフル活用されます。無駄のない暮らしが垣間見えます。

草原の音楽会と動物たちとの触れ合い

ゲルの中でミニコンサートが始まりました!
低音と高音を同時に歌うホーミーの不思議な響きに、横笛リンベ、馬頭琴モリンホール、太鼓のリズムが重なります。カントリー調の明るい楽曲もあれば、遊牧民の暮らしをうつすような民族音階の調べもあり。遊牧民の自由さと大自然の雄大さを感じさせる多層なハーモニーに酔いしれます。

小さな演奏会が静かに幕を下ろすと、ゲルの外へ。動物たちと触れ合えるお楽しみ時間です。
生まれたばかりのカシミヤヤギを抱っこしたり、ヤクに乗せてもらったり、動物たちとの距離がゼロなのも楽しい。遊牧民の少年が披露してくれたのは、猛スピードで駆け抜けていく間に地上の帽子を拾うパフォーマンス。馬との呼吸がぴったりで、華麗な姿と馬術のレベルの高さに感嘆します。

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そして1時間の乗馬トレッキングツアーへ繰り出しました。引率者の馬とつないでもらえるので初めてでも安心。「Mongol Nomadic Camp」の敷地内ですが、360°見渡す限り草原。遠くに見える山との距離感もつかめないほどに広い野原を、馬の速度で駆ける開放感はすばらしいものでした。徐々に馬のリズムに体を合わせられるようになって、もっと遠くへ行きたい……と思ったところで終了。なんてあっという間なんでしょう!

日が暮れていきます

6月初旬、夜8時をすぎてもまだ明るいモンゴル。夕食は施設のレストランで羊肉のボーズやホーショールといった本格的モンゴル料理を楽しみ(羊肉が苦手な人のために牛肉やお野菜もたっぷり)、暖房・水洗トイレ・シャワーも完備のゲルに宿泊。施設内には本格的なサウナも併設されて、トトノウこともできるのです。
そして真夜中には、星空が瞬く天体ショーが始まります。
 
大空と草原と。動物と人が寄り添って暮らす風景。そんな世界から、しばらく帰りたくなくなってしまうのでした。

Information

Mongol Nomadic Camp

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Photo by

Yayoi Arimoto

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