上映企画「映画監督 アンジェイ・ワイダ」
ポーランドから社会に新風を
12/10~26@国立映画アーカイブ

上映企画「映画監督 アンジェイ・ワイダ」
ポーランドから社会に新風を
12/10~26@国立映画アーカイブ

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2024.11.28

4 min read

12月10日(火)から26日(木)にかけて、上映企画「映画監督 アンジェイ・ワイダ」が国立映画アーカイブにて開催されます。

ポーランドを代表する名監督アンジェイ・ワイダ氏。
ワイダ監督のなかでも抵抗三部作『世代』『地下水道』『灰とダイヤモンド』はよく知られていますが、第2次世界大戦中の対独レジスタンス運動やワルシャワ蜂起など、戦中、戦後のポーランドを描いたこの作品群は世界中で反響をよび、映画が社会に大きなインパクトを与えることを印象づけるムーブメントとなりました。ほかにもポーランドの若者たちの苦悩を描いた青春映画や、ポーランド文学の名作をたびたび翻案して壮大な物語世界をスクリーンで描くなど、ワイダ監督の作風やテーマは多岐にわたります。
 
今回はアンジェイ・ワイダ監督の初期から後期まで、長年上映される機会のなかった貴重な映画を含む全14作品。そのなかから6作をピックアップしてみていきましょう!

反ナチス運動に青春を捧げる若者たちの苦悩

『世代』

Pokolenie
 

第二次世界大戦時、ナチスドイツ支配下のワルシャワ。貧民窟に育ったスタフ(ウォムニツキ)はドイツ軍から石炭を盗み生計を立てていたが、母親の願いもあり、工場で真面目に働き始める。だが反ナチの抵抗運動に身を捧げる女性ドロタ(モドジンスカ)を愛したことが彼の人生を転換させていく。ワイダの記念すべき長篇デビュー作であり、『地下水道』『灰とダイヤモンド』へと続く「抵抗三部作」の第1作。デジタルリマスター版を上映。

 
1954年/88分/DCP・白黒

地下水道に追い詰められた兵士たちの悲劇

『地下水道』

Kanał
 

第二次世界大戦末期のワルシャワ蜂起を題材に、ナチスの包囲網を逃れるべく地下水道に追い込まれていくポーランド国内軍の兵士たちの姿を描く。原作・脚本のスタヴィンスキをはじめ実際に蜂起に参加した人間がスタッフ、キャストとして携わり、ポーリッシュ・リアリズムの先駆的傑作と評されるが、単なる事実の再現にとどまらないワイダ特有の美意識がすでに窺える。カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞。デジタルリマスター版を上映。

 
1957年/98分/DCP・白黒

政治色を排して描かれたワルシャワ・ロマンス

『夜の終りに』

Niewinni czarodzieje
 

『灰とダイヤモンド』の原作者アンジェイェフスキと60年代以降のポーランド映画新世代を代表するイェジ・スコリモフスキの共同脚本を得て撮られた意欲作。ワルシャワの街で出会った若い医師(ウォムニツキ)と娘(スティプウコフスカ)の恋の駆け引きに焦点を絞った脱政治劇的な一作だが、「雪どけ」後のワルシャワの都市風景とそこに生きる若者たちを捉えた視点には、依然として鋭利な同時代批評が息づいている。デジタルリマスター版を上映。
 

1960年/88分/DCP・白黒

ポーランドで愛された短編小説の映画化

『ヴィルコの娘たち』

Panny z Wilka
 
親友の死をきっかけに青春期を過ごした田舎の地を訪れたヴィクトル(オルブリフスキ)は、親しかった姉妹に再会するが、彼が想いを寄せていた女性はすでにこの世を去り、他の娘たちも歳月を経てかつての面影を失っていた。『白樺の林』と同じくイヴァシュキェヴィッチの小説の映画化。政治色は薄いが、1930年代のポーランドを舞台に戦争を挟んで変化していく人間の心の機微を叙情的に描き、アカデミー外国語映画賞にノミネートされた。
 
1979年/116分/35mm・カラー

英国の名優を迎えた野心作

『ザ・コンダクター』

Dyrygent
 
著名な指揮者ジョン・ラソツキ(ギールグッド)は、かつて愛した女性の娘で故郷の交響楽団に所属するヴァイオリニストのマルタ(ヤンダ)に出会い、楽団の客演指揮者を務めることになるが、それがマルタと夫アダム(セヴェリン)の関係に変化をもたらしていく。男女の愛憎劇を描きながら、芸術文化に対する当局の姿勢を暗喩的に批判した作品。ポーランドの家系をもつ英国の名優ジョン・ギールグッドを主演に迎え、ベルリン国際映画祭ではアンジェイ・セヴェリンが銀熊賞を受賞した。
 
1980年/102分/35mm・カラー

日本の歌舞伎役者が主演の舞台劇を映画化

『ナスターシャ』

ドストエフスキーの『白痴』にもとづく舞台劇を、舞台と同じワイダの演出、坂東玉三郎主演で映画化した作品。全篇をワルシャワの宮殿でロケ撮影している。ワイダは、長大な原作に描かれたドストエフスキーの「暗い秘密」を、三人の人物(玉三郎はナスターシャとムイシュキン侯爵の二役を演じている)に集約させることで表現しようとしたと語っている。後期のワイダ作品を支えたパヴェウ・エデルマンの撮影やワイダの妻クリスティナ・ザフファトヴィッチによる美術も印象的。
 
1994年/99分/35mm・カラー

その他の上映作品:『灰とダイヤモンド』(1958)、『ロトナ』(1959)、『夜の終りに』(1960)、『サムソン』(1961)、『すべて売り物』(1968)、『白樺の林』(1970)、『大理石の男』(1977)、『ヴィルコの娘たち』(1979)、『ザ・ コンダクター』(1980)、『鉄の男』(1981)、『コルチャック先生』(1990)、『ナスターシャ』(1994)

アンジェイ・ワイダ監督の約30年間にわたって製作された14本の映画たち。
そのどれもが人間性の深奥に迫り、ポーランドの現実を映し出しています。
 
今回ご紹介した作品のほかに、『白樺の林』『ロトナ』など高く評価されたものもあります。ぜひこの機会に劇場へ足を運んでご覧ください。
 
上映スケジュール・チケット購入の詳細はこちらから。

Information

上映企画『映画監督 アンジェイ・ワイダ Film Director Andrzej Wajda』

期間|12月10日(金)~12月26日(木) *会期中の休館日:月曜

会場|国立映画アーカイブ東京都中央区京橋3-7-6

HP|https://www.nfaj.go.jp/film-program/film-director-andrzej-wajda202412/
*上映スケジュールはHPでご確認ください

入場料金|一般:1300円/高校・大学生:1100円/小・中学生:900円/シニア(65歳以上):1100円/国立美術館のキャンパスメンバーズ、障害者手帳をお持ちの方(付添者は原則 1 名まで):800 円

主催|国立映画アーカイブ、アダム・ミツキェヴィチ・インスティテュート(ワルシャワ)

配給|マーメイドフィルム、日本美術技術博物館 Manggha、ポーランド広報文化センター

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Kei Taniguchi

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