ブラチスラバでしたい10のこと
城、ビアホール、アート…etc.

月刊TRANSIT/もっと知りたい中欧特集

ブラチスラバでしたい10のこと
城、ビアホール、アート…etc.

TRAVEL&EAT&WATCH

2025.03.31

5 min read

かつてチェコスロバキアとして、お隣チェコと同じ国家を形成していたスロバキア。距離的にはオーストリアやチェコとも近いのに、なぜか中欧巡り旅で見逃されがち? でもこの国には魅力的な場所がたくさん! スロバキアの旅をはじめるのに、まずは玄関口の首都ブラチスラバのことをみていこう。ブラチスラバならではの旅スポットを、現地在住のヴィツィアン邦子さんに教えてもらいました。まだまだ知られざるスロバキア、訪れるなら今です!

Text : Kuniko Vician

What’s ブラチスラバ?

© visitbratislava.com

スロバキアの首都ブラチスラバはドナウ川沿いに広がる人口50万人の都市。過去にはオーストリア、ハンガリー、チェコとともに歴史を重ねてきました。ブラチスラバにはスラブ語で「ブラースラウの城」という意味があって、軍の高官にちなんで名づけられています。EUへの加盟以来、町はどんどん近代化されてきましたが、直径1kmほどの旧市街は一般車の通行禁止なので歩きやすくコンパクト。歴史的な建築物や石畳の路地など中世の趣が残り、かわいいカフェやスロバキア伝統料理のレストラン、ミュージアム、オペラ劇場、カラフルな店が、旅行者を楽しませてくれます。他国で観られるような高い建物が少なく、空が青い日は開放感に包まれる美しい古都を歩いてみましょう!

ブラチスラバでしたいこと!

その1/ブラチスラバ城に行く

まず訪れたいのが、ブラチスラバ名物でもあるこの白くて四角いお城。その名もずばりブラチスラバ城(Bratislavský hrad)。塔に登り、地上85mの高さからドナウ川やオーストリア方面を見渡してみましょう。正面には人びとが暮らす街が望め、奥に広がる広大な畑と緑の深い藪は、冷戦時代に鉄のカーテンがあった地域でもあり、その歴史を感じる瞬間も。晴れていると隣国オーストリアの数えきれないほどの電力風車が見えることもある。
城下に見える聖マルティン大聖堂も合わせてぜひ。マリア・テレジアを含む11人の国王と8人の王妃の戴冠式が行われた場所で、尖塔にはハンガリー国王の金の王冠のレプリカが鎮座しています。

© Vitold Drutel / shutterstock

その2/フラヴネー広場を攻略する

© vvoe / shutterstock

ヨーロッパの街を散策するには、まず町の起点となる広場に行くのがいい。ブラチスラバでいうと、旧市街の中央広場であるフラヴネー広場(Hlavné námestie)がそれにあたる。四角い広場をぐるっと見渡すと、なんと日本の旗が目に入る! 実は日本大使館があるので散策のスタート地点にも待ち合わせ場所にもいい。迷子になったら戻ればいい。
いくつかの路地を歩いて近くのカフェやレストラン、土産店を覗いたら広場にある〈カフェマイヤー(Cafe Mayer)〉でケーキタイム。ガラスケースに並ぶのは、オーストリアでもお馴染みの「ザッハトルテ」、カカオとキャラメルがレイヤーになった「ドボシュ(dobostorta)」、ナッツとバターを使った「エステルハージー(Eszterházy)」など種類も豊富でケーキ選びは大変! 夏はテラス席で涼み、冬はクリスマスマーケットのホットワインをいただくのも◎。時計台の隣の旧市庁舎の門をくぐりぬけると、ツーリストインフォメーションセンターがあって無料マップがもらえる。旅のはじめに、Bratislava Cardを購入しておくと便利。今回紹介するスポットの入場料が割引されたり、公共交通手段も安くなることも。購入はオンラインでも可。

〈カフェマイヤー(Cafe Mayer)〉

©︎visitbratislava.com

〈カフェマイヤー(Cafe Mayer)〉

©︎Cafe Mayer

02

その3/「青い教会」の美しさを堪能する

©️Joel Bradford

©️Shawn Harquail

02

遠目でも一目でわかる、パステルブルーの爽やかさ! フラブネー広場から歩いて10分ほどの場所にあるのが、この「青い教会」こと聖アルジェベータ教会(Kostel sv. Alzbety)。ハンガリー王女の聖アルジェベータの生誕700年を記念し、20世紀初頭に建造されたといわれています。設計を担当したのは、分離派建築を牽引したハンガリーの建築家レヒネル・エデン。外はもちろん教会内も青を基調とし、椅子や装飾もペールブルー、コバルトブルーなどさまざまな青が楽しめます。ツーリストだけでなく地元の結婚式でも大人気。教会の中は見学できる時間が限られているので、必ず事前に確認を。

その4/スロバキアの食を味わう

© ineersk / shutterstock

せっかくスロバキアに来たのだから、食事もぜひスロバキア料理を。お隣チェコやハンガリーの料理とも近いけれど、羊のチーズを多用したり豚肉料理が多いといった特徴があります。とくに有名なのがジャガイモで作ったニョッキに羊のチーズとカリカリのベーコンをのせた「ブリンゾベー・ハルシュキ(Bryndzové halušky)」。スロバキアのタトラ山脈に生息するカムジーク(山ヤギ)がトレードマークになった〈コリバ・カムジーク(Koliba Kamzík)〉などで食べることができます。ただし、味が濃い料理かつ量が多い場合もあるので注文時は気をつけて。もっと気軽にスロバキア料理を楽しみたいときは、ブラチスラバ市内に7店舗ある〈モンデュー(Mondieu)〉もおすすめ。女性の看板が目印で、ランチにたっぷりサラダが食べられるのがうれしい。季節によってはお洒落なテラス席で味わうのも◎。

〈コリバ・カムジーク(Koliba Kamzík)〉

©︎Koliba Kamzík

〈モンデュー(Mondieu)〉

©︎Mondieu

02

その5/ビアホール&ワインバー巡り!

中欧はビールやワインの宝庫! スロバキアも例にもれず、国民の多くはビール&ワインが大好き。ブラチスラバ産のビールが楽しめる〈ブラチスラバスキ メスティアンスキ ピボバー(Bratislavský Meštiansky Pivovar)〉は、老若男女を問わず地元の人に愛される名店。ビアホールとビアーガーデンの2店舗があり、簡単なおつまみからしっかりとした食事まで揃うのがうれしい。ドナウ川の観光船着き場からすぐの場所にある〈プラズドロイ(prazdroj)〉は、チェコ産のピルスナービールが飲めるビアホール。キレのあるビールを堪能したいならば、ここが一番という人も!

〈ブラチスラバスキ メスティアンスキ ピボバー(Bratislavský Meštiansky Pivovar)〉

〈ブラチスラバスキ メスティアンスキ ピボバー(Bratislavský Meštiansky Pivovar)〉

© Bratislavský Meštiansky Pivovar

 
ビールだけではなく、ワインもぜひ。実はスロバキア産の白ワインは世界コンテストで受賞も多い、知る人ぞ知るワインの名産地なんです。ブラチスラバにはお洒落なワインギャラリーやワインバーがあり、手軽なお店ではグラスに10mlを樽から飲める場合も。スロバキア語でワインは「ヴィーノ(Víno)」。あとは英語で好みを伝えてみましょう。
旧市街の地下セラーでスロバキアの名品70選が飲める〈ナーロドゥニーサロンヴィン(Narodny salon vin)〉や青い教会近くのお洒落なワインバー〈ビノテカブルーチャーチ(Vinoteka pri Modrom Kostolik)〉は樽からグラスに注いでくれ気楽にワインを味わえます。ほかにも。マリア・テレジアが好んだといわれるブラチスラバ周辺で生産される赤ワインの「フランコヴカ(Frankovka)」や、カシスを使ったワインも美味。お土産にもぴったりです。

〈ナーロドゥニーサロンヴィン(Narodny salon vin)〉

〈ナーロドゥニーサロンヴィン(Narodny salon vin)〉

© Narodny salon vin

その6/劇場で観劇を楽しむ

スロバキア国立劇場(SND)

©︎Vitold Drutel

スロバキアラジオ局

©︎Kazimierz-Poplawski

02

スロバキア、実は昔からレベルの高いオペラやバレエなどの公演が勢揃いなんです。日本人バレリーナも活躍するスロバキア国立劇場(SND)は、自国の言葉で公演するために1920年に設立されました。オペラ、バレエ、演劇などの演目を2つの劇場で上演しているんです。
 
また、映画『のだめカンタービレ最終楽章前編』で玉木宏さん扮する主人公がオーケストラを指揮したのは、スロバキアフィルハーモニーの本拠地〈レドゥータコンサートホール(Bratislava Reduta)〉です。ヨーロッパで権威のある「BHSブラチスラヴァ音楽祭」は毎年9月に開催される音楽祭で、若手演奏家とスロバキアフィルハーモニーとの演奏は見どころのひとつ。時期が合う方はぜひご確認を。
 
もうひとつのおすすめが、ザ・社会主義建築な逆ピラミッドをもつ、スロバキアラジオ局(Slovak Radio Building)。今ではコンサートホールになっています。その構造から生み出される良質な音響が有名で、ここで開催されるシンフォニーオーケストラの定期演奏は人気でチケットが売り切れることも。いずれの劇場でも、リーズナブルに見られる公演が多いので、気軽にトライしてみて。

その7/UFOの塔に登ってみる

© Brook Ward

ドナウ川にかかる、スロバキア民族蜂起の橋(Slovenske Narodne Povstanie)。その上には、なんとUFOのような円盤型の建物が! このUFOタワー(UFO Observation Deck)には展望台とレストランがあって、地上95mまで一気にエレベーターであがることができます。入場料も約12ユーロとそこまで高くないので、ブラチスラバ市内をぐるりと見渡しに行くのも楽しい。この円盤の周囲を命綱だけをつけて歩く「UFOタワーSKY WALK」というアクティビティもあります。アドレナリンが放出されること間違いなし。刺激を求めるみなさま、必見です。

その8/ブラチスラバの人気者を探してみる

ブラチスラバの街中には、なぜか一風変わった銅像たちがそこかしこにあるんです。たとえば、「のぞき屋」を意味する「チュミル」像や、人間観察をしているナポレオン、ブラチスラバでかつて人気を博していたという芸人シェーナー・ナーチ像……など。これらは、民主化し独立したあと、ブラチスラバの街が明るくなるように、と当時の市長らが始めたプロジェクトがきっかけなんだとか。人気の像には写真撮影のために列ができていることも。見つけたら、あなたもぜひ一緒に1枚どうぞ。

「チュミル」像

©︎Fred Romero

シェーナー・ナーチ像

©︎Cross Duck

02

その9/スロバキアらしいアートスポットを訪ねる

ブラチスラバには、芸術やカルチャーが好きな方にぴったりなアートスポットも。
お隣チェコと並んで、絵本制作が盛んな国スロバキア。2年に一度開催される「ブラチスラバ世界絵本原画展(ブラチスラバ・イラストレーション・ビエンナーレ、BIB)」は、絵本をはじめとする児童図書原画の世界的な賞で、1967年から始まった歴史あるコンテストなんです。そんなBIBを主催しているのが「子どものための国際美術館」こと、ビビアナ(BIBIANA)。作品の展示からワークショップまであり、大人から子どもまで楽しめる施設になっています。また、ブラチスラバ市内から20kmほどの郊外にあるダヌビアナ現代美術館(Danubiana Meulensteen Art Museum)もおすすめ。ブラチスラバ随一のモダンアートの美術館で、展示はもちろん、モダンな美術館の建物や、彫刻が多数展示された庭園などを見るだけでも楽しいはず!

ビビアナ(BIBIANA)

©︎Nenad Nedomacki

ダヌビアナ現代美術館

Archive Danubiana Meulensteen Art Museum

02

その10/足を延ばしてデヴィーン城に行く

© Emily Allen

時間のある人は、ぜひ少しだけ遠出してみてほしい。ブラチスラバ旧市街から約12km、オーストリアとの国境近くにある廃城のデヴィーン城(Devín Castle)は、1世紀のローマ帝国時代に建てられたという古城跡。フランス軍をはじめ各国との争いのなかで重要な役割を果たし、周辺地域を守っていたといわれています。城内の博物館が公開されているのは4~10月のみですが、市内から片道約30分なので、半日〜1日でさくっと行けるちょうどいい距離感。スロバキアの歴史を見守りつづける孤高の存在を見に、ぜひ足を運んでみて!

派手さはないかもしれないけれど、コンパクトで素朴、いるとなんだかほっとするのがスロバキアの魅力。紡がれる歴史を感じるもよし、ひと息ついてのんびり滞在するもよし。まだまだ情報が少ない国だからこそ、あなただけのお気に入りスポットを見つけてみてくださいね。

Profile

ヴィツィアン邦子

素朴なスロバキアの人々や美しい自然に魅せられ、スロバキア人と結婚。スロバキア在住30年。日本で旅行会社に勤めた経験を活かし、「日本人に合ったサービスの提供」を指針に、2012年にスロバキアの旅行手配会社 Zen Networks, s.r.o. を設立。翌年、スロバキア国家公認ガイド資格を取得し、旅行業に励む。スロバキアの田舎生活の魅力を日本の皆さんに伝えることをライフワークとし、より多くの方にスロバキアを楽しんでいただけるよう活動中。

素朴なスロバキアの人々や美しい自然に魅せられ、スロバキア人と結婚。スロバキア在住30年。日本で旅行会社に勤めた経験を活かし、「日本人に合ったサービスの提供」を指針に、2012年にスロバキアの旅行手配会社 Zen Networks, s.r.o. を設立。翌年、スロバキア国家公認ガイド資格を取得し、旅行業に励む。スロバキアの田舎生活の魅力を日本の皆さんに伝えることをライフワークとし、より多くの方にスロバキアを楽しんでいただけるよう活動中。

TRaNSIT STORE 購入する?

ABOUT
Photo by

Yayoi Arimoto

NEWSLETTERS 編集後記やイベント情報を定期的にお届け!