台湾×みる編
旅熱をあったためる台湾映画

月刊TRANSIT/もうひとつの台湾特集

台湾×みる編
旅熱をあったためる台湾映画

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2024.12.15

6 min read

動詞別で台湾を読み深める「もうひとつの台湾特集」の「みる編」!

ここでは、台湾旅を計画中の人も台湾帰りの人にも観てほしい、台湾熱をあっためてくれる映画を編集部員が選びました。新作から台湾ニューシネマを代表する巨匠の作品まで、台湾の熱気を届けてくれる名作揃いです。

© 2023 Bole Film Co., Ltd. ASOBI Production Co., Ltd. All Rights Reserved

『本日公休』

本日公休/Day Off
*一部ネタバレを含みます。
 
舞台は、台中にある昔ながらの理髪店。店主のアールイさんは、40年もこの店を切り盛りしている。女手一つで3人の子どもを育てあげ、赤ちゃんの初散髪、思春期真っ只中の高校生、先立ってしまった妻が天国でも気づけるようにと白髪染めを頼んだ男性など、ずっと地域の人びとの人生に寄り添ってきた。ある日、常連だった“先生”が病に倒れたことを知ったアールイさんは、店に「本日公休」の札を掲げ、愛車に乗って遠方の先生の元へと向かうーー。
 
病床に臥した先生に施す散髪シーンは涙なしには見られない。意識のない本人も、見守る家族にとっても、弱った身体を清潔に整えてもらうことがどんなにありがたいことかわかるから。アールイさんにとっても、長年通ってくれた先生へのお別れと感謝の時間だったのだろう。人は誰しも老いていく。健康に仕事をつづけられること、家族や友人がいることのありがたみを忘れてはいけないよ、と言われたようだ。
 
フー・ティエンユー監督の実家で撮影したというこちらの理髪店。レトロでかわいいだけでなく、掃除が行き届いた店内に、仕事への真摯な姿勢と誇りが表れている。アールイさんが田園をかっとばすドライブシーンもまたすばらしい。(編集S)

 
全国順次公開中
監督:フー・ティエンユー/製作:2023年/配給:ザジフィルムズ、オリオフィルムズ

『ひとつの太陽』

陽光普照/A Sun
 
自動車教習所の教官である父、ナイトクラブで美容師として働く母、医大を目指す優秀な長男、素行不良の次男。次男が事件を起こして少年院に入ったことで家族のほころびがじわじわと広がっていく。家族のかたちが変化しながらも、どうにか再生しようともがく人たちの物語。
 
時間としては一瞬の、父と長男、父と次男、それぞれの会話が印象的。親も子も、家族を守るために間違った選択をしてしまうところが切ない。この世で唯一太陽だけが平等、という言葉に長男がどのような思いを抱いていたのかは語られないけれど、影としてしか生きてこられなかった次男が、過去から逃げずに精算しようとするまなざしには希望があった。台北の濃い青空、豪雨、路地、動物園、山。コンビニや自動車洗浄場の人工的な光。その対比、陰影がどれも美しい。(編集S)

 
監督:チョン・モンホン/製作:2019年 *Netflix映画『ひとつの太陽』独占配信中

© 2015 Taiwan Film and Audiovisual Institute. All rights reserved.

『愛情萬歳』

愛情萬歲/Vive L’Amour
 
見知らぬ3人がそれぞれ台北のアパートで過ごす。大都会でつながることの孤独と困難を描いたこの映画は、1980年代の台北の急成長と、そのスピードについていくことの難しさをよく表している。美しく撮影されているが、ツァイ・ミンリャン監督作品のほとんどがそうであるように、セリフが本当に少ないので、アートハウス映画に慣れていない方にはハードルが高いかもしれないけど、ぜひ観てほしい。(編集J)
 
監督:ツァイ・ミンリャン/製作:1994年

© 2015 Taiwan Film and Audiovisual Institute. All rights reserved.

『青春神話』

青少年哪吒/Rebels of the Neon God
 

土砂降りのなかで公衆電話から小銭を盗み取る青年たち、ゴキブリをコンパスの針で突き刺す予備校生、ローラースケートリンクで働く女の子。それぞれに別の日常を送る若者たちが、台北の街角でひととき出合う。部屋が浸水してきたり、男女3人でホテルに入っていったり、不良の青年たちを追って閉店後のゲームセンターに侵入したり……次に何が起こるかわからない、映画の登場人物たちもわかっていないんじゃないかという予測不可能な疾走感がいい。ツァイ・ミンリャン監督のデビュー作。(編集T)
 
監督:ツァイ・ミンリャン/製作:1992年

© 2014 Taiwan Film and Audiovisual Institute. All rights reserved.

『恋恋風塵』

戀戀風塵/Dust in the wind
*一部ネタバレを含みます。
 
主人公は、貧しい鉱山の村で育った幼なじみの少年アワン、少女アフン。それぞれ中学を卒業すると台北へ働きに出て、アワンは印刷工から運送業、アフンは洋裁店でお針子として互いに助け合いながら、言葉にはせずとも将来を意識していた。アワンが徴兵されてからも、アフンはアワンに頻繁に手紙を送っていたのだがーー。
 
広東省で生まれ1歳で台湾に移住し、いくつかの地方都市で育ったホウ・シャオシェン監督。彼の自伝的作品「青春4部作」の最後に位置づけられる本作は、さまざまな緑色のグラデーションがノスタルジックに輝いている。1960年代後半を舞台に、故郷のロケ地となった十份と九份、都会の台北、アワンが兵役で行った金門島など、美しい昔の台湾の姿に魅せられる。兵役によって終わってしまった恋と青春が物悲しい。(編集S)
 
監督:ホウ・シャオシェン/製作:1987年

© 1+2 Seisaku Iinkai

『ヤンヤン夏の想い出』

YIYI/a one & a two…
*一部ネタバレを含みます。
 
台北の中流家庭に焦点を当てたエドワード・ヤン監督の遺作となった作品。結婚式で始まり、葬式で終わるこの映画は、家族の日常を彩るさまざまな出来事を描いている。主人公は人の背中を写真に撮っている小学生の男の子ヤンヤン。ヤンヤンが家族の前で、祖母に向けたお別れの作文を読むラストシーンは、涙をこらえきれない。(編集J)

 
監督:エドワード・ヤン/製作:2000年

『エドワード・ヤンの恋愛時代』

獨立時代/A Confucian Confusion
 

邦題は「恋愛時代」で、原題は「獨立時代」。たしかに恋愛も描かれているけれど(三角関係が多発)、どちらかというと恋愛の甘さより苦さが残るし、キャリアウーマンで自由気ままなモーリーとその会社で働く優秀で健気なチチがとにかくかわいくて、2人の友情の行く先も気になっていく。恋人、友人、仕事……結局何をみんな選ぶのか。
 
最後のほうで、チチとタクシー運転手を前に、登場人物のひとりの作家が独り言をはじめるのだけど、そこで作家がこの世の真理がわかったというようなことを言っていて、その言葉にハッとさせられたはずなのに一瞬で通り過ぎていってしまってなんと言っていたか覚えていない。また観ないと……。でも、その掴みきれない感じも含めてとてもリアル。状況は悲惨だけれど、シニカル&コミカルで、暗くはない会話劇。モダンな台北が映っていて、ウディ・アレンが描くNYみたい!と思って観ていたけど、実際、エドワード・ヤン監督はウディ・アレンが好きなのだそう。(編集T)

 
監督:エドワード・ヤン/製作:1994年

<p>DVD:4,400円(税込)<br />
Blu-ray:5,500円(税込)<br />
発売元:ビターズ・エンド<br />
販売元:ハピネット・メディアマーケティング<br />
© Kailidoscope Picture</p>

4Kレストア版 DVD&Blu-ray発売中

DVD:4,400円(税込)
Blu-ray:5,500円(税込)
発売元:ビターズ・エンド
販売元:ハピネット・メディアマーケティング
© Kailidoscope Picture

『牯嶺街少年殺人事件』

牯嶺街少年殺人事件/A Brighter Summer Day

 
1961年に台北で実際に起きた、14歳の少年がガールフレンドを殺害した事件に着想を得た作品。青春時代ならではのストーリーはもちろん、当時の外省人(第二次世界大戦後に中国大陸から台湾に移住した人びと)の立場など、当時の複雑な社会の様相が、牯嶺街(クーリンチェ)を舞台に描かれています。(編集O)
 

監督:エドワード・ヤン/製作:2017年

<p>Blu-ray:7,480円(税込)<br />
DVD:6,380円(税込)<br />
発売元:ハピネットファントム・スタジオ<br />
販売元:ハピネット・メディアマーケティング<br />
©1991 Kailidoscope</p>

Blu-ray&DVD発売中

Blu-ray:7,480円(税込)
DVD:6,380円(税込)
発売元:ハピネットファントム・スタジオ
販売元:ハピネット・メディアマーケティング
©1991 Kailidoscope

© 3H productions ltd. All Rights Reserved

『台北ストーリー』

青梅竹馬/Taipei Story

 
どんより曇り空の台北の下で、想いが叶わずみんな少しずつ不機嫌で、それが生々しくてもの凄く生きているって感じがする。車が行き交ってなかなか道路を渡れない女。フジカラーのネオンサイン。照明の消えたクラブでライターを灯して踊る若者たち……どのシーンも瞬きできないくらいよくて、ストーリーがなくても台北を生きる人たちの光景だけで成立してしまう。夜の街や明度の低い室内の場面が多くて、映画館で観ていると台北の湿度の高い闇に包まれているようで心地よい。そこに時折差し込む電飾の眩しさが、台北の街に立っているような気分になる。監督はエドワード・ヤン、主演と共同脚本にホウ・シャオシェンという、台湾ニューシネマの豪華キャスト。(編集T)

 
監督:エドワード・ヤン/製作:1985年

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Kei Taniguchi

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