2024年12月発売のTRANSITは「台湾特集」!
編集部は雑誌制作のために約1カ月の間、台北に拠点を移し、台湾の東西南北を旅します。
TRANSIT.jpでは、編集部メンバーが日替わりで「編集部日誌 in 台湾」をお届けしていきます。
台湾入りしてからというもの、街中の植物の存在に圧倒されている。南国らしい緑が生い茂っていて、なんというかすごくエネルギッシュなのだ。道を歩けば、「仙草」や「草本茶」といった文字が目に飛び込んできて、植物が暮らしにも根付いている様子。薬草や野草が大好きな私は、日本でも日々周囲の達人たちに学びながら、足元に咲く植物に目をこらす修行の身。せっかくだから、編集部お引越し中に台湾の植物の世界をのぞいてみたい!
そして向かった先は、MRT龍山寺駅からほど近い青草巷(青草通り)。薬草を扱う店が細い路地に連なり、フレッシュな草、乾燥させたもの、薬草茶から薬草クリームなど、とにかく薬草にまつわるものがぎっしりと並んでいる。あぁ、立ち込める薬草の匂いが最高だ。
まだ医学が発達していなかったころ、人びとは病気になると龍山寺を訪れて、薬草処方のおみくじなるものをひいたという。そして、それをもとに青草巷で薬草を処方してもらっていたそうな。今ある店もその頃からつづく老舗ばかり。一見どこも同じような店に見えるのだが、実はそれぞれに秘密のレシピがあるのだとか。店の達人たちにあれこれ教えを請いたいのが、なにしろ言語の壁が高すぎる。屋台で買った仙草茶でもどかしさを流し込みながら小休憩。
いやいや諦めたらそこで試合終了。どこかに日本語が通じるところがあるはず!と検索すると、お隣の西門駅に店主が日本語堪能という青草店〈老濟安 Healing Herbar〉を発見。救世主現る!
もともとは青草巷に店を構えていたそうだが、2000年に移転。店の倉庫だった場所をおしゃれに生まれ変わらせたモダンなお茶屋さんだ。昨年一緒に店を営んでいたお父さんが引退されて、今は3代目の王さんが一人で営業している。さまざまなメニューがあったが、今回は症状に合わせた薬草を調合してもらうことにした。まずは簡単な問診票でチェック。次に舌診と簡単な質問に答えて、ブレンドが決まる。結果は、肝臓が疲れているね、とのこと。(飲みすぎか?) そのほか、気になる症状として、目の下のピクピクを伝えると、目の疲労に効くという枸杞(クコ)の実を入れてくれた。
「昔の人は薬草茶を日常的に飲んでいたけれど、今の若い人たちは不調を感じたときにしか飲まないよ。だからその流れを変えたいと思っているんだ」と語る店主の王さん。あれこれ細かい質問にも丁寧に答えてくれて、気づけば滞在は1時間を超えていた。その間もひっきりなしに注文の電話がかかってきていて、症状などを聞きながらメモをしている様子。こんな店が近くにあったらいいのになぁ。来年は薬草の使い方についての書籍を出す予定だという。いつか日本語で薬草講座を開いてください!というあつかましいお願いをしながら、大満足で店をあとにした。
それにしても、奥が深すぎる薬草の世界。種類の豊富さはもちろんのこと、一人ひとりの体質や病気の状態を見極めながら、多角的に診断するなんて気の遠くなるような積み重ねをなくしては不可能だ。目下の目標は、王さんブレンドのお茶を飲みながら、台湾滞在を健康に乗り切ること!ハードルはダダ下がりだが、いたしかたない。達人への道のりは果てしないのだから。
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