2024年12月発売のTRANSITは「台湾特集」!
編集部は雑誌制作のために約1カ月の間、台北に拠点を移し、台湾の東西南北を旅します。
TRANSIT.jpでは、編集部メンバーが日替わりで「編集部日誌 in 台湾」をお届けしていきます。
日本統治時代から有事が懸念されている現在まで、複雑な歴史をたどってきた台湾。
本誌でも取り上げるテーマだが、制作にあたり監修をお願いしている先生におすすめされた、かつ台北中心地から1時間程度でアクセスできる2つの博物館を訪れた。
一つ目は、〈順天台湾原民博物館〉。
台湾には現在の人口の98%を占める漢族のほか、政府に認定されているだけで16の原住民族*が暮らす。*台湾では「先住民」ではなく「原住民」と呼ばれるのが一般的。
大勢の観光客で賑わう〈国立故宮博物館〉のすぐ近くにあるが、こちらは非常にひっそりしている。
原住民族の概要説明に始まり、民族ごとというよりは工芸、服飾、祭事や首狩りなどの行事といったテーマごとに展示が続く。
とくに3階の、服飾と宝飾のフロアは圧巻。織物、ビーズ刺繍、クロスステッチなど、カラフルで緻密な柄・装飾の布がずらりと並ぶ。男女一組の全身の民族衣装の展示も。
展示されているのは一部の民族ものに偏りがちなものの、技法やモチーフ、色使いに民族ごとの違いが見えて興味深い。
しかしこのような原住民族の多様な文化は、日本統治時代の同化政策により失われていったそう。
続いては台北市に囲むように接する新北市にある〈国家人権博物館〉。
第二次世界大戦が終わり日本からは解放されたものの、中国の統治下となった台湾。人びとが中国国民党政府に反発し発生した二・二八事件以降、政府は反乱した人たちを政治犯として弾圧。これらの一連の弾圧は白色テロと呼ばれている。ここでは、政治犯とされた人びとが収監され、拷問され、裁かれていた建物が公開されている。
気になるのはここが2018年に設立された新しい施設であり、政府が入場無料で運営していること。さらに現在増改築も行われており、その力の入れように緊張感を抱かずにいられない。
この2つを巡って実感するのは、台湾が日本や中国から、いかにたくさんのものを奪われてきたかということ。歴史を知れば知るほど、私は日本人としてどんな態度で台湾の方に接すればいいのか分からなくなる。
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