編集部が記した、TRANSITモンゴル特集の取材裏話その2。 遊牧民のゲルに寝泊まりしながら移動する旅は、4日目に突入した。壮大なゴビの風景に大感動しながらも、今のところ、スタートしてから1回もシャワーを浴びていない。
Photo &Text:Ono Haruka(TRANSIT)
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旅程|バヤンザグ〜オンギ(約170 km、車で4時間)
今日からは南部のゴビを抜け、中部にある古都ハルホリン(Kharkhorin)を目指す。1日では行けないので、この日は中間地点にあるオンギ川のそばのゲルホテルに宿泊する。ここでもシャワーのお湯は出ないようで、風呂なし生活は4日目が確定した。
ただ、やはりモンゴルでは空気が乾燥しているのでそこまで不快ではない。トイレも同様で、汲み取り式のところも多いが匂いはそこまできつく感じない。この時期には虫も見かけない。それでいて風景は素晴らしく、動物はかわいいやつばかりで、星空の美しさはいうまでもない。モンゴルはアウトドアのいいとこ取りをしたい人にはうってつけの旅先なのではないだろうか。
夕食はオーナーさんの住む母屋のゲルでご馳走になる。2つのゲルが連結した1K+1LDタイプだ。モンゴルのTV番組を観たり、ウランバートルの社会問題について語り合ったりしてから就寝。
砂漠を走り抜き、デリカももう砂まみれ。
オンギ川は、モンゴル中部では貴重な水源となる川。靴下などの小物を洗濯した。
ところどころ現れる小さな街には、たいていこういう無骨な外観のスーパーがある。
スーパーは1日1回、どこかしらに立ち寄れたので、お菓子や飲み物、ティッシュなど消耗品は都度購入できる。スーパーにはロシアや韓国製の食品が多い。
オンギン・ヒード(オンギ修道院/Ongiin Khiid)はかつて1000人の僧が修行する広大なチベット仏教の修道院だったが、19世紀のチベット弾圧で破壊されてしまった。
連結タイプのゲル。入り口側がキッチンやその他水回り、奥側がリビングになっている。
ゲル手前には洗面台や洗濯機、炊事場がある。
モンゴルの恋愛リアリティショーを見ながら夕食。
旅程|オンギ〜ハルホリン(約300 km、車で5.5時間)
オンギを出発し、さらに北上する。岩だらけだった風景が少し変化し、草がまばらに生える草原帯に戻ってきたようだ。舗装道路の割合も多くなってきた。
ハルホリンはカラコルムとも呼ばれ、モンゴル帝国をはじめかつての騎馬民族の国が首都を置いたところで、現在の街の規模は大きくないが、かつての繁栄を支えたであろう豊かなオルホン川がゆったりと流れ、その景観が世界遺産に登録されている。
観光客向けの施設も多く、夕食は街のレストランで。この旅で初めて酒を飲み、アンカの奥さんがとんでもない美女だとかいう話で大いに盛り上がる。コテージのある宿に泊まり、シャワーを浴びることができた。
ゴビにはあまりいなかった馬も、ハルホリンではちょくちょく見かけるように。
古都ハルホリンと、そばを流れるオルホン川。
遊牧中はバイクを使う人が多いが、馬を使う人も少数ながらいる。
モンゴルの代表的なビール、ゴールデン・ゴビはコクがあっておいしい。羊肉のゴリアシ(煮込み料理)にぴったり!
旅程|ハルホリン〜ホスタイ国立公園〜ウランバートル(約380km、車で4時間)
今日はいよいよウランバートルへ戻る。オフロード旅の最終日だ。
ウランバートルの手前で、ホスタイ国立公園(Hustai National Park)に寄ることに。野生の馬「タヒ」が生息しているという。原種に近い馬らしく、写真で見てみると小柄でずんぐりむっくりしていてかわいい。
ホスタイ国立公園のエリアに入ってしばらくしたところで、デリカが止まってしまった。どうやら、サスペンション付近の部品が壊れてしまったらしい。トゥルとアンカはどうしようかと手をこまねいているが、私と写真家の柏田さんは余裕綽々だ。ここがゴビだったらいざ知らず、国立公園だから近くに案内所もあるし、いざとなれば泊まるところもあるらしいのでガイドしてもらう側としては何も心配していない。むしろあれだけの悪路でこれまで壊れなかったことのほうが驚きである。
デリカのことはアンカに任せ、ほかの3人は別の車をチャーターして引き続きタヒを探すことにした。そこで登場したのが、バヤンザグなどで見かけた例のロシアの車だ。
これがすごかった。シートが硬い椅子に厚さ2cm程度しかないクッションがついているというだけのもので、掴まるところもなく、揺れるたびに吹っ飛んで行きそうだった。運転手の5歳くらいの子どもが助手席から訝しげに私を見ている。トゥルはスマホでニュースのようなものを読んでいる。騎馬民族の体幹は尋常ではない。
そして肝心のタヒ。国立公園に棲んでいるとはいえ、野生ではあるのでタヒに会える確証はなかったが、30分ほど探せばたいていは見つかるようで、無事にタヒを撮影。デリカのところへ戻ると、アンカが自力で溶接して修理してしまっていた。実はアンカはふだん鉄道会社で働く技術者で、こういうときのために溶接セットを積んでいるのだという。私は車に詳しくないのでどれだけすごいことかよくわからなかったが、柏田さんは「すごい」「かっこいい」としきりに褒め称えていたので相当すごいことなのだろう。
壊れたデリカに気を揉むトゥル(写真手前)とアンカ(奥)。
代わりに登場した例の車。
夜はウランバートルで宿泊。久しぶりに都会へ戻ってきた。トゥルは久しぶりに帰ったウランバートルの自宅で気絶するように寝たらしい。
この後、ウランバートル周辺を見て回って帰国するのだが、オフロード旅日記はここで終了だ。
期待通りのワイルドな、しかしながら親切なトゥルとアンカ、遊牧民の皆さんのおかげで思いのほか快適な旅ができて大満足だった。途方もない場所まで足をのばし、原始的な風景やそこで生きる人びとに出会ってこそ、モンゴルの何たるかをほんの少しだが知れたような気がする。
私がワイルド旅を希望したからこうなったものの、風呂トイレ完備の宿もきっとたくさんあるはずなので、心配な人は旅行会社やツアーガイドにぜひ気軽に相談してほしい。今回案内してくれたトゥル(@gerutravelmongolia)には、私の要望を細やかに聞いてもらって本当にお世話になった。最後に、モンゴルオフロード旅をサバイブするための必需品を紹介して終わりたい。
トイレットペーパー
モンゴルのオフロードでは人口の建物及びトイレはほとんどなく、つまりトイレットペーパーさえあればどこでもトイレになりうる。現地でも買える。
ウェットティッシュ
蛇口やシャワーの水が出ないことがあり、トイレには手洗い場がないことも多いので1日10枚くらいは使ったような気がする。
現金(MNT、モンゴルトゥグルグ)
スーパーではクレジットカードが使えるところがほとんどだが、宿泊施設や泊めてくれた遊牧民への謝礼は現金で支払う。ちなみに遊牧民のゲルに泊まった場合、高くても1人あたり1泊3,000円程度だった。
保湿アイテム
とにかく乾燥しているので、肌や髪、唇を保湿するためのアイテムはマスト。
日焼け止め&サングラス
標高が1,300mほどのモンゴル高原は、日差しが強い。
軽くて嵩張らない上着
寒暖差が激しく、春夏でも夜は寒い。星を観たり、布団が十分にない場合のために暖かい上着がマスト。
スリッパ
ゲル内ではスリッパが大活躍。
洗い流し不要のボディケア用品
水のいらない歯磨き、ドライシャンプー、メイク落としシート、ボディシート、ドライシャンプー、メイク落としシート。ボディシートは持っていたものの、歯磨きも水のいらないタイプがあるとよかったと思う。
Geru Travel Mongolia
今回のオフロード旅をガイドしてくれたのはGeru Travel Mongoliaのトゥルさん。
gurutravelmongoliaは日本人旅行者向けに、手頃な価格でオーダーメイドのモンゴルの旅のプランを提供してくれる旅行会社です。みなさんもぜひ、Geru Travel Mongoliaと一緒に自分の理想のモンゴル旅を作ってみては。
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