今、どんな記事をつくってる? 週末はどこへ行ってた? 最近気になっていることは? などなど、TRANSIT編集部のオンオフの日々を週単位でお届けします! 今回は、編集部・松本のタイの森へテナガザルに会いにいった話。
Photo & Text:Miu Matsumoto(TRANSIT)
12月発売のスウェーデン特集が、いよいよ校了目前の今週。
「終わったら何したい?」と自分に聞いてみたら、やっぱり「自然のなかを旅したい!」
ということで、少し前に訪れたタイ・メーカンポン村でのテナガザルとの出会いを振り返ります。
タイ北部にあるチェンマイから車で約1時間、山間にある人口500人ほどの小さな村・メーカンポン。
タイの人びとの間では、村を見下ろせる絶景カフェや風情のある街並みが人気な観光地らしく、日本でいうとお寺の参道のようなにぎわいだった。
揚げバナナと、ココナッツのまぶした餅のようなお菓子をいただいたお店。熱々のバナナがとろとろで最高。
今回は森を散策しながらテナガザルに会いにいくツアーに申し込んだ。
ゆっくり過ごしたくて選んだチェンマイだったが、思っていたより賑やかだったので、近くに自然が豊かな場所はないかと調べてたまたま見つけたツアーだった。
ガイドさん(立ち替わりで総勢5名ほど)に対して、参加者がオランダ人カップルと私という、ガイドさん過多の贅沢な状況(そして私がいなければカップルのプライベート旅という若干の邪魔者感を気にしつつ)。
さっそくお目当てのテナガザルに会いに森のなかへ。ガイドさん2名ほどが鳴き声を真似てテナガザルを呼んでいる間、ほかのメンバーで森を散策する。
森に入ると、ガイドの人が次々と視界に入ってきた植物を紹介してくれた。森に生えていたスターフルーツをもぎ取って齧ってみると酸っぱくてみずみずしい。
ほかにも、生でも食べられるという茶葉をその場で摘んで食べさせてくれたり、齧ると辛いという木を小刀で削ってくれたりした。茶葉はとても苦くて、木片は少し噛むだけで舌がヒリヒリする。森が巨大なキッチンのように見えてきておもしろい。
食べる植物だけではなく、手で揉むと泡が出てシャンプーになる葉っぱ、象ですら触るだけでかぶれてしまう葉っぱもあった。
鈴生りのスターフルーツをもぎ取っていただく。
テナガザルの森を管理する方の愛犬。森を自由に先導してくれるその姿から、街で飼われる犬にはない逞しさを感じる。
そうこうしているうちに、オスのテナガザルが1匹、森の奥から木々の間を飛ぶように素早い動きでやってきた。ガイドさんが空中に投げたバナナを2本キャッチすると、さっと高いところへ上がっていく。続いて現れたメスはお腹に赤ちゃんを抱えていて、下までは降りてはこなかったが姿を見せてくれた。
颯爽と行き来する姿はかっこよく、座って体を掻く仕草はちょっと人間っぽくてかわいい。
実はテナガザルたちはもともとこの森で生まれたわけではなく、土地の前オーナーが傷ついた1匹を保護した後、この森に放したのが始まりだそう。そのまま自然と居着き、いつの間にか近隣の森の個体と繁殖して、合計3匹のこの親子たちが暮らしている。今ではこの森を受け継いだオーナーが餌となる果物や野菜の苗を植え、共生できる環境を整えている。動物が自然に暮らせるように、人がそっと手を貸しているのだ。
このツアーの参加費も森を守る支援にも使われているほか、人数や回数を調整して、森や動物の負担にならないように気をつけているという。
上が子どもを抱えるメス、下はオス。
テナガザルと会った後は、近くの滝まで散策したり、カフェでタイティーを飲んだりと盛りだくさん。滝近くの木には布が巻かれているものが多く、それは「この木を切らないで」というサインなのだとか。
タイでは、この木に自分の魂が宿ると感じたときに、布を巻きつける風習がある。もしほかの誰かがその木を切ってしまうと、切った人は布を巻きつけた人の魂に取り憑かれるという言い伝えがあるらしい。
ちょっと怖いけど、「自分の魂が宿る木」という考えを魅力的に感じた。
布が巻かれた木。
タイティーと一緒にいただいた「ロンコン」という果物。ライチのような食感と味で、食べる手が止まらない。
ツアーの最後は村に戻り、遅めのランチにオランダ人カップルとお話ししながら、おいしいタイ料理をシェア。植物に妙に詳しいなと思っていた彼は、オランダで植物屋さんをしているのだとか。多少お邪魔虫だったかもしれないけれど、優しい2人といろいろ話せて参加してよかった。
タイといえば定番のゾウを見ずにテナガザルに会いに行ったけれど、森と人間とのリアルな関係性に触れられた気がする。またどこか別の国の森で暮らす動物たちにも会いに行きたい。
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