青森・弘前編
津軽の文化都市、朝昼晩を散策

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青森・弘前編
津軽の文化都市、朝昼晩を散策



TRAVEL&EAT

2025.09.24

6 min read

白神山地を巡る取材のついでに、1泊2日で青森県弘前市に立ち寄ることになった編集部の津賀。(白神山地の記事はこちら💁‍♀️「 白神巡礼――最奥、森、町、海でめぐる」)

現在は青森市が県庁所在地になっているけれど、弘前は最初に県庁があった街で、弘前城や弘前大学もある青森の文化都市だ。そんな弘前市を駆け足で巡った旅の話をどうぞ。

Photo : Yoma Funabashi

Text:Maki Tsuga(TRANSIT)

弘前の朝

弘前で朝からひと際賑わいを見せている場所があると聞いて向かったのが、〈虹のマート〉。昭和31年からつづく老舗市場には、鮮魚、精肉、野菜、乾物、お惣菜、パン、お菓子、コーヒースタンド、ラーメン店……おいしそうなものが勢揃いしている。朝は料理店のシェフが食材を仕入れに、昼はサラリーマンがランチを食べに、夕方は地元の人が晩ごはんの準備で買い出しにやって来たりと、活気溢れる津軽の台所なのだ。

朝ごはんはここですませようと、市場に足を踏み入れる。
すでに〈まぐろの源ちゃん〉の店先にはお寿司や海鮮丼がびっしりと並んでいる(青森県の魚介といえば、やっぱり下北半島の大間町や深浦町の本マグロ!)。それに弘前のイタリアンレストラン〈オステリア エノテカ ダ・サスィーノ〉の笹森通彰シェフが手がけるラーメン店〈麺屋コルトン〉には朝ラーメンもある。お店の人にひと声かけて、市場内で買ったすじこ巻きを広げてラーメンと一緒に食べる。朝からこんな贅沢が許されるなんて……!

© TRANSIT

通称・虹マには、日本全国、世界各地からおいしい食材が集まるけれど、やっぱり地元青森のものが多い。よくよく見ると、白神山地で採れたキノコや山菜、白神の麓の海で育った魚介類なども並んでいる。山のものも海のものも自然のなかで育っているから、日ごと、週ごとに、ラインナップが目まぐるしく入れ替わっていく。商品を見ているだけで季節を感じられる。虹マではこれだと思ったら迷わず買うべし。

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昼の弘前

弘前の人にとって身近な山といえば、岩木山だ。
標高1,625mを誇る、青森県の最高峰。岩木山一帯には豊かな湧き水があり、山の麓にはリンゴ、サクランボ、トウモロコシ、セリといった畑が広がっている。

とくに岩木山麓の景色の一部にもなっているのがリンゴ畑。9月末はちょうどリンゴの収穫シーズンで、荷台にリンゴ箱をぎっしり積んだ軽トラックをよく見かけた。青森県は日本のリンゴ収穫量の約6割*を占める一大生産地なのだけれど、弘前市はそんな青森県内でもリンゴ出荷量No.1。ちなみにリンゴでおなじみのフジは、弘前市のすぐ北にある藤崎町で誕生した品種でもある。

本当は津軽岩木スカイラインをドライブしたかったけれど、日暮れまで時間がない。視界が開けたところまで来て、車を停めて振り返る。黄金色に輝くススキの野原の向こうに、夕日に照らされた白神山地の山々が見えた。幾重にも折り重なった山は大海の波のようにも見える。

遠くに見える山々は白神山地。

山を下りながら、山麓にある嶽(だけ)温泉郷へ立ち寄る。
ここは300年以上前からつづく温泉郷で、今は5、6軒ほどの温泉宿が並ぶ落ち着いた町だ。昔は町の中央に共同温泉があり、それを囲うように旅館が軒を連ね、湯治客で賑わっていたという。獄温泉にあった〈小島旅館〉の湯に、ひととき浸かる。碧がかった白く滑らかなにごり湯で、肌のあたりが優しい。浴槽は青森ヒバでできていて年季が入っている。

夜の弘前

夜ごはんは、町の人から聞いた〈居酒屋 土紋〉へ。
いつも混んでいると聞いたけれど、入れてよかった。冷蔵庫には弘前の地酒・豊盃(ほうはい)がびっしり。店内の黒板には、津軽ならではの料理が並ぶ。イガメンチは、イカとタマネギなどの野菜を焼いたハンバーグのような料理。たらたまは、干し鱈と生卵を和えたおつまみ。ほかにも、筋子の糠漬け、イカのワタ、トンカツなど、何を頼んでもおいしくて白いごはんがすすむ。

ちなみに地酒・豊盃をつくる三浦酒造の蔵では、岩木山の伏流水を使用しているんだとか。お酒、温泉、農業といった山の恵みがあり、山を中心にして生活・文化・経済圏があるのがみえてくる。名残惜しいけれど、これが弘前の最後の夜。津軽のもっと奥地まで覗きたくなる、そんな文化都市・弘前の1日旅でした!

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Yayoi Arimoto

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